当サイトはアドセンス広告およびアフィリエイト広告を利用しています。

004_給与計算のFAQ

【定年再雇用】嘱託職員として継続雇用する時の「高年齢雇用継続給付」の計算シミュレーション

人事相談FAQでは、実際に運営者(RWC合同会社・RWC社労士事務所)が取り扱った人事相談のうち、頻出の事案あるいは重要と思われる事案を厳選し、医療業界に置き換えてご紹介しています。

依頼者からのご相談

疑問な白衣の女性

当院には、長年入れ歯や被せ物の製作を一手に引き受けてくれているベテランの歯科技工士がいます。来月、彼が60歳の定年を迎えるため、本人の希望もあり「嘱託職員(有期契約)」として継続雇用することになりました。

再雇用にあたっての賃金設計を検討しているのですが、どうしても現役時代と同じ給与を維持するのは難しく、定年時の60%程度の月給(例:30万円→18万円)で提示しようと考えています。

本人からは「給料が下がる分、雇用保険から給付金が出ると聞いたが、具体的にいくらもらえるのか?」「来年から制度が変わると聞いたが自分は対象か?」と質問を受けています。

  1. 月給が定年時の60%まで低下した場合、「高年齢雇用継続給付」はいくら支給されますか?
  2. 2025年4月からの法改正で支給率が「15%から10%」に引き下げられると聞きました。これは全てのスタッフに適用されるのでしょうか?
  3. 「手取り額」を最大化するために、月給をあえて低めに抑えて、その分を賞与(ボーナス)で補填する賃金設計は有効でしょうか?

熟練の技術を持つ技工士に、納得して長く働いてもらうためのシミュレーションを提示したいと考えています。


ご相談への回答

できるビジネスパースン

定年後再雇用において、多くのスタッフが頼りにするのが雇用保険の「高年齢雇用継続給付」です。しかし、2025年4月から段階的な廃止に向けた大きな法改正が行われます。結論から申し上げますと、法改正後は給付額が減少するため、給付金の算定基礎に含まれない「賞与」を組み合わせた賃金設計が、手取り額を増やすための戦略的な鍵となります

高年齢雇用継続基本給付金の仕組みと計算

この給付金は、60歳以上65歳未満の被保険者で、算定基礎期間が5年以上ある方を対象に、賃金が60歳到達時の75%未満に低下した場合に支給されます。

ご相談のように賃金が定年時の60%まで低下した場合のシミュレーションは以下の通りです。

  • 2025年3月までに60歳に達する方(旧制度:支給率15%)
    • 支給額 = 18万円 × 15% = 27,000円
    • 合計額 = 18万円 + 27,000円 = 207,000円(定年時の約69%)
  • 2025年4月以降に60歳に達する方(新制度:支給率10%)
    • 支給額 = 18万円 × 10% = 18,000円
    • 合計額 = 18万円 + 18,000円 = 198,000円(定年時の約66%)

このように、法改正後は月額で約9,000円の差が生じます。この引き下げは、2025年4月1日以降に新たに60歳に到達する方から適用されます。

「手取り額」を増やすための賞与活用戦略

「月給を抑えて賞与を増やす」という設計は、実務上非常に有効な場合があります。

  • 算定基礎の除外ルール: 高年齢雇用継続給付の算定基礎となる「賃金」には、3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)は含まれません
  • メリット: 月給を給付金が最大(10%または15%)に受け取れるライン(低下率61%〜64%以下)に設定し、年収の不足分を「賞与」で補填することで、給付金の額を減らすことなく、年間の総手取り額を増やすことが可能になります。

ただし、極端に月給を低くしすぎると、将来の老齢厚生年金の額や、傷病手当金の支給額に影響を及ぼすため、バランスの取れた設計が求められます。

「在職老齢年金」との併給調整に注意

65歳未満で働きながら年金(特別支給の老齢厚生年金)を受け取る場合、高年齢雇用継続給付を受給していると、さらに年金が一部支給停止される「併給調整」が行われます。

  • 調整額: 原則として、標準報酬月額の4%相当額(支給率15%の場合)が年金から差し引かれます。
  • 法改正後の変化: 給付金の支給率が10%に引き下げられることに伴い、この年金の支給停止率も4%から段階的に緩和される見込みです。給付金が減る分、年金のカット額が少なくなるため、トータルでの手取り額の減少はある程度緩和される構造になっています。

本件のポイント

気づきを得た白衣の女性
  • 2025年4月1日以降に60歳を迎えるスタッフは、給付金の最大支給率が15%から10%に引き下げられる
  • 給付金は「月給」に対して支給され、「賞与」は算定外であるため、賞与を厚くする賃金設計は手取り額の維持に有効である
  • 給付金を受給すると「在職老齢年金」が追加でカットされるため、年金受給額も含めたトータルシミュレーションが必要である
  • 60歳到達時には「60歳到達時等賃金証明書」をハローワークに提出し、低下率の基準となる賃金額を確定させる手続きを忘れないこと

技工士のような高い専門性を持つスタッフには、こうした複雑な公的給付の仕組みを丁寧に説明し、将来の見通しを共有することが、定年後の高いモチベーション維持とクリニックへの定着に繋がります。

本記事の内容は投稿時点の法令にもとづき要点のみを平易な表現で執筆しています。実務においては所轄の官公署にご相談のうえ、貴院の実情に応じて適切にご対応願います。なお弊社でもオンライン人事相談を実施中です。詳しくは弊社ホームページよりご確認ください。


  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/医療労務コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

-004_給与計算のFAQ