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004_給与計算のFAQ

【給与計算】3月からの健康保険料率変更と「子ども・子育て支援金」控除の開始時期

人事相談FAQでは、実際に運営者(RWC合同会社・RWC社労士事務所)が取り扱った人事相談のうち、頻出の事案あるいは重要と思われる事案を厳選し、医療業界に置き換えてご紹介しています。

依頼者からのご相談

首をかしげる医師

当院はスタッフ数12名の歯科クリニックです。給与は「毎月25日締め、翌月5日払い」としており、社会保険料(健康保険・厚生年金保険)については、入社した月の給与からは引かず、翌月の給与から控除を開始する、いわゆる「翌月控除(翌月徴収)」を採用しています。

毎年3月に協会けんぽの健康保険料率が改定されますが、当院のように翌月控除の場合、具体的に何月何日に支払う給与から新しい料率を適用すればよいのでしょうか。「3月分の保険料」という言葉と「3月に支払う給与」が混同してしまい、毎年事務処理の際に不安になります。

また、2026年4月から新たに「子ども・子育て支援金」が上乗せされると聞きました。この新しい費用についても、いつの給与から、どのような名目で控除すべきなのか、実務上の注意点を教えてください。特に、就業規則や賃金規程の改定が必要になるのかについてもアドバイスをお願いします。


ご相談への回答

できるビジネスパースン

歯科クリニックの給与実務において、社会保険料の料率変更や新制度の導入は、正確な計算が求められる重要な局面です。結論から申し上げますと、健康保険料率の改定(3月分)は「4月支給給与」から、「子ども・子育て支援金」の徴収(4月分)は「5月支給給与」から開始するのが正しい実務フローです

社会保険料の徴収サイクルと料率改定の適用

社会保険料は、月末時点の被保険者資格の有無に基づいて月単位で発生します。法律(健康保険法第167条等)では、事業主が給与から控除できるのは「前月分の保険料」と定められており、これが「翌月控除」の原則です。

  • 3月分の保険料(新料率): 3月末日の資格に基づいて発生します。翌月控除のルールに従うと、この3月分(新料率)の保険料を控除するのは、4月に支払われる給与(貴院の場合は4月5日払い)となります。
  • 3月5日払いの給与: 翌月控除の場合、ここで控除しているのは「2月分」の保険料です。2月分は旧料率ですので、この時点ではまだ料率を変更してはいけません。

このように、給与明細に記載される保険料は「1ヶ月前の労働に対する保険料」であることを事務担当者が正しく理解しておく必要があります。

「子ども・子育て支援金」の開始時期

2026年4月分から導入される「子ども・子育て支援金」も、社会保険料と同様の徴収サイクルを辿ります。この支援金は、公的医療保険(健康保険、船員保険、国民健康保険等)の保険料とセットで、事業主が労働者の給与から徴収し、納付する仕組みです。

  • 徴収開始のタイミング: 制度が開始されるのは「2026年4月分」の保険料からです。したがって、翌月控除を採用している貴院では、2026年5月5日に支払われる給与から、この支援金の上乗せ(控除)が始まることになります。
  • 計算の基礎: 一般的な健康保険料と同様に、標準報酬月額および標準賞与額に「子ども・子育て支援金率」を乗じて算出されます。

就業規則(賃金規程)の改定と実務上の対策

「子ども・子育て支援金」の導入に伴い、賃金規程の「賃金控除」に関する条項を見直すことが推奨されます。

  • 規程の表現: 現在の規程が「健康保険料、厚生年金保険料……」と限定して列挙している場合、厳密には「子ども・子育て支援金」が含まれないことになります。法律上、支援金は医療保険料と併せて徴収する「法定福利費」であるため、控除にあたって個別の労使協定の再締結は不要ですが、不要な疑義を避けるために「その他法令で定められた社会保険料」や「法定福利費」といった包括的な表現に改めておくのが賢明です。
  • スタッフへの周知: 4月や5月は手取り額が変動しやすく、スタッフから「なぜ引かれる額が増えたのか」と質問が出ることが予想されます。入職時や料率改定時に「保険料は1ヶ月遅れて給与から引かれる仕組み(翌月控除)であること」や「新制度による法定控除が始まること」を事前に周知しておくことで、クリニックへの不信感を防ぎ、スムーズな移行が可能となります。

本件のポイント

気づきを得た白衣の男性
  • 健康保険料率の改定(3月分)は、翌月控除の場合「4月支給の給与」から適用される
  • 2026年4月開始の「子ども・子育て支援金」は、翌月控除の場合「5月支給の給与」から控除が始まる
  • 社会保険料は「月末時点の資格」で発生するため、給与の締切日や当月・翌月払いの区別にかかわらず、翌月控除が法律上の標準ルールである
  • 賃金規程の控除項目は、「子ども・子育て支援金」を含められるよう「法令で定められた社会保険料等」といった包括的な表現への改定を検討すべきである
  • 改定時期のズレによる計算ミスを防ぐため、給与計算ソフトの料率設定を「何月支給分から反映させるか」を慎重に確認する

正確な給与計算と丁寧な説明は、スタッフが安心して診療に専念できる環境づくりに直結します。新制度への対応を含め、適正な労務管理を継続していきましょう。

本記事の内容は投稿時点の法令にもとづき要点のみを平易な表現で執筆しています。実務においては所轄の官公署にご相談のうえ、貴院の実情に応じて適切にご対応願います。なお弊社でもオンライン人事相談を実施中です。詳しくは弊社ホームページよりご確認ください。


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  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/医療労務コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

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