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005_労働安全のFAQ

【安全衛生体制】50人未満の歯科クリニック。産業医なしでも必要な「健康相談」と「意見聴取」

人事相談FAQでは、実際に運営者(RWC合同会社・RWC社労士事務所)が取り扱った人事相談のうち、頻出の事案あるいは重要と思われる事案を厳選し、医療業界に置き換えてご紹介しています。

依頼者からのご相談

首をかしげる医師

当院は、院長である私と、スタッフ合わせて12名が勤務する小規模な歯科クリニックです。

これまで、スタッフの健康診断は毎年欠かさず実施してきましたが、結果を本人に渡して「異常があったら病院に行ってね」と伝えるだけで済ませていました。事務長から「スタッフが50人未満のクリニックでも、健診結果について医師から意見を聴く義務がある。また、最近残業が増えている衛生士さんへの健康相談も無視できない」と指摘されました。

しかし、当院には産業医がいません。院長として以下の点について教えてください。

  1. 産業医がいない50人未満のクリニックでも、健診で異常があったスタッフについて医師から意見を聴かなければならないのでしょうか?
  2. 長時間労働が続いているスタッフへの「健康相談(面接指導)」は、小規模なクリニックでも法的に義務付けられているのですか?
  3. 産業医がいない場合、誰に意見を聴いたり、相談に乗ってもらったりすればよいのでしょうか?

正確な法的義務と、実務上の対応方法を確認したいと考えています。


ご相談への回答

できるビジネスパースン

歯科クリニックの多くはスタッフ数50人未満の小規模事業場に該当しますが、産業医の選任義務がないからといって、スタッフの健康管理に関するすべての義務が免除されるわけではありません。結論から申し上げますと、健康診断後の「医師の意見聴取」は法定義務であり、長時間労働者等への「健康相談」も重要な努力義務となっています。

健診異常所見者への「医師の意見聴取」は法定義務

労働安全衛生法(安衛法)に基づき、事業者は健康診断の結果、異常の所見があると診断されたスタッフについて、医師又は歯科医師の意見を聴かなければならないと定められています。

  • 対象: 常時使用する全スタッフ(歯科医師、衛生士、助手、受付など)。
  • 期限: 健康診断が行われた日から3ヶ月以内に行う必要があります。
  • 目的: 医師の意見を勘案し、必要に応じて「就業場所の変更」「作業の転換」「労働時間の短縮」などの措置を講ずるためです。
  • 義務の範囲: これはスタッフ数にかかわらず、1人でも雇用していれば生じる義務です。

長時間労働者等への「面接指導(健康相談)」

脳・心臓疾患やメンタルヘルス不調を未然に防止するための「面接指導」については、事業場の規模によって義務の強さが異なります。

  • 50人未満の事業場: 当分の間、ストレスチェックの実施や、それに基づく面接指導(健康相談)は「努力義務」とされています。
  • 実施が望ましいケース: 月の時間外・休日労働が80時間を超え、疲労の蓄積が認められるスタッフから申出があった場合などは、小規模クリニックであっても健康確保の観点から実施が強く推奨されます。

産業医がいない場合の「相談先」と実務

産業医を選任していないクリニックでは、以下の方法で医師の意見を聴取するのが実務上のスタンダードです。

  • 地域産業保健センター(地産保)の活用: 労働者数50人未満の事業場を対象に、医師の意見聴取や健康相談を無料で提供する公的サービスがあります。
  • 健診委託先の医師: 健康診断を委託している医療機関の医師に、有所見者への意見聴取(判定)を併せて依頼することも可能です。
  • 近隣の産業医認定医: 地域医師会などを通じて、スポットで面談や意見聴取に応じてくれる産業医認定医を探す方法もあります。

小規模クリニックでも必要な「衛生推進者」の選任

スタッフが10人以上50人未満のクリニックでは、産業医の代わりに「衛生推進者」を選任する義務があります。

  • 役割: 総括安全衛生管理者が行うべき業務(健康診断の実施、健康保持増進の措置など)のうち、衛生に関する事項を担当します。
  • 選任・周知: 選任した際は、その氏名を作業場の見やすい場所に掲示する等の方法で、スタッフに周知しなければなりません(労基署への報告は不要です)。

本件のポイント

気づきを得た白衣の男性
  • 健診で異常所見があったスタッフに対し、3ヶ月以内に医師から就業上の意見を聴くことは、50人未満のクリニックでも「法定義務」である。
  • 長時間労働者等への面接指導(健康相談)は50人未満では「努力義務」だが、安全配慮義務の観点から実施が推奨される。
  • スタッフ10人以上50人未満のクリニックは「衛生推進者」を選任し、氏名を掲示しなければならない。
  • 小規模事業場でも「健康情報取扱規程」を策定し、スタッフの健康情報を適切に管理するルールを設ける必要がある。
  • 産業医がいない場合は、地域産業保健センター等の外部リソースを積極的に活用すべきである。

スタッフの健康を守ることは、診療の質を維持し、法的リスク(安全配慮義務違反)を回避するために不可欠です。まずは「健診後の医師への意見聴取」を実務に組み込むことから始めましょう。

本記事の内容は投稿時点の法令にもとづき要点のみを平易な表現で執筆しています。実務においては所轄の官公署にご相談のうえ、貴院の実情に応じて適切にご対応願います。なお弊社でもオンライン人事相談を実施中です。詳しくは弊社ホームページよりご確認ください。


  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/医療労務コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

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