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004_給与計算のFAQ

【社会保険料】「翌月控除」と「当月控除」の違いとは?入社月や退職時の徴収ルールを徹底解説

人事相談FAQでは、実際に運営者(RWC合同会社・RWC社労士事務所)が取り扱った人事相談のうち、頻出の事案あるいは重要と思われる事案を厳選し、医療業界に置き換えてご紹介しています。

依頼者からのご相談

疑問な白衣の女性

当院はスタッフ数15名の歯科クリニックで、給与は「当月20日締め、当月末日払い」としています。

最近、新しく入職した事務スタッフから社会保険料の徴収時期について質問を受けました。当院では慣例として、入社した月の給与からは社会保険料を引かず、翌月の給与から控除を開始しています。いわゆる「翌月控除」です。

しかし、事務スタッフが以前勤めていたクリニックでは、入社した月の給与からその月の保険料を引く「当月控除」だったらしく、「当院のやり方は間違っているのではないか」「3月の料率変更や月末退職時の計算でミスが起きそうで不安だ」と言われてしまいました。

特に以下の3点について、法的な根拠と実務的な処理方法を整理したいと考えています。

  1. 社会保険料の「翌月控除」と「当月控除」にはどのような違いがあり、どちらが正解なのでしょうか。
  2. 3月に健康保険料率が改定される際、当院のような翌月控除の場合、いつの給与から新しい料率を適用すべきですか。
  3. 月末(3月31日)で退職するスタッフがいる場合、最後の給与で「2ヶ月分」徴収しなければならない理由と、その際の経理上の仕訳方法を教えてください。

給与明細と実際の納付額が1ヶ月ずれることに違和感を持つスタッフも多いため、専門的な視点から解説をお願いします。


ご相談への回答

できるビジネスパースン

歯科クリニックの給与実務において、社会保険料の徴収タイミングは非常に間違いやすいポイントです。結論から申し上げますと、健康保険法および厚生年金保険法では「翌月控除」が原則的なルールとして定められています

「翌月控除」が法律上のスタンダード

社会保険料は、被保険者資格を取得した日の属する月から、資格を喪失した日の属する月の前月まで、月単位で発生します。

事業主が被保険者の負担すべき保険料を給与から控除できるのは、法律(健保法第167条、厚年法第84条)によって「前月分の保険料」と定められています。これを一般的に「翌月控除」と呼びます。 したがって、入社した月の給与(初任給)からは保険料を控除せず、その翌月の給与から控除を開始するのが正しい実務です。

「当月控除」を採用している事業所も見受けられますが、これは退職月に2ヶ月分の社会保険料を控除(後述)するのを失念する事業所が続出したために例外的に認められた方法であり、法律が本来予定している発生と控除のサイクルとは異なります。

料率変更時の適用タイミング

健康保険料率は例年3月分から改定されます。当院のような「翌月控除」の場合、「3月分の保険料」を控除する「4月支払の給与」から新しい料率を適用するのが正解です。

「3月に支払う給与なのだから、3月からの新料率を適用すべきでは?」と混同しがちですが、翌月控除における3月支給給与の中身は「2月分の保険料」です。2月分は旧料率ですので、3月給与までは旧料率、4月給与から新料率と覚えておきましょう。

月末退職時の「2ヶ月分徴収」と仕訳

月末日に退職する場合、資格喪失日はその翌日である「翌月1日」となります。 社会保険料は「喪失月の前月」まで徴収するため、3月31日退職(4月1日喪失)であれば、3月分までの保険料が発生します

翌月控除のルールでは、3月分の保険料は本来4月の給与から引くべきものですが、月末退職者は4月の給与支払いがありません。そのため、例外的に「前月分(2月分)」と「当月分(3月分)」の2ヶ月分を、最後の給与(3月末支払)からまとめて控除することが認められています。

この流れを、経理上の発生主義に基づいた仕訳例で整理します。

  • (借)給与費 XXX /(貸)現預金 XXX (給与の手取額)
  • (借)法定福利費 XXX /(貸)未払費用 XXX (3月分の会社負担分を費用計上)
  • (借)現預金 XXX /(貸)職員預り金 XXX (2月分3月分の本人負担分を預かる)
  • (借)未払費用 XXX /(貸)現預金 XXX (会社負担分を納付)
  • (借)職員預り金 XXX /(貸)現預金 XXX (預かっていた2ヶ月分の本人負担分を納付)

このように、仕訳で見ると「いつの分の費用(負債)を、いつ清算しているのか」が明確になります。


本件のポイント

気づきを得た白衣の女性
  • 社会保険料は「翌月控除」が法的な原則である。入社月の給与からは引かず、翌月から開始する。
  • 料率改定(3月分)の影響が給与明細に現れるのは、翌月控除であれば4月支給分からである。
  • 月末退職(翌月1日喪失)の場合は、退職月までの保険料が発生するため、最後の給与で2ヶ月分をまとめて徴収する実務が必要となる。
  • 同月得喪(入社した月に退職)の場合は、その月1ヶ月分の保険料が発生し、健康保険料については還付されないため注意が必要である。
  • 経理処理においては、発生主義(費用計上)と現金主義(給与控除)のズレを「未払費用」と「職員預り金」で適切に管理することが重要である。

スタッフへの説明に際しては、「保険料は1ヶ月遅れて給与から引かれる仕組みになっている」ことを入職時に丁寧に伝えることで、退職時のトラブルや料率変更時の不信感を防ぐことができます。

本記事の内容は投稿時点の法令にもとづき要点のみを平易な表現で執筆しています。実務においては所轄の官公署にご相談のうえ、貴院の実情に応じて適切にご対応願います。なお弊社でもオンライン人事相談を実施中です。詳しくは弊社ホームページよりご確認ください。


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  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/医療労務コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

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