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004_給与計算のFAQ

【随時改定】出勤日数に応じた「実費交通費」から「定期代」へ変更した際に月変は必要か?

人事相談FAQでは、実際に運営者(RWC合同会社・RWC社労士事務所)が取り扱った人事相談のうち、頻出の事案あるいは重要と思われる事案を厳選し、医療業界に置き換えてご紹介しています。

依頼者からのご相談

首をかしげる医師

当院ではこれまで、非常勤の歯科衛生士やパートの助手に対して、出勤日数に応じた「実費」の交通費を支給してきました。しかし、来月から特定のスタッフの勤務日数が増えることになり、本人から「毎回実費で精算するのは面倒なので、1ヶ月の定期代で一括支給してほしい」と要望がありました。

事務長からは、「交通費の支払い方法を変えるだけで基本給は変わらないのだから、社会保険の手続き(月額変更届)は不要ではないか?」と言われています。

  1. 「実費精算」から「定期代支給」へ変更することは、社会保険上の「固定的賃金の変動」に該当しますか?
  2. 随時改定(月変)が必要になる具体的な条件を教えてください
  3. 1ヶ月だけ試験的に定期代で支払い、翌月にまた実費に戻すような場合でも、手続きを検討する必要がありますか?

ご相談への回答

できるビジネスパースン

歯科クリニックの運営において、スタッフの通勤手段や支給方法の変更は頻繁に起こりますが、これは社会保険料の額を左右する重要な「固定的賃金の変動」にあたります。結論から申し上げますと、支給方法や単価の変更によって、総報酬が2等級以上変わる場合は、変更から4ヶ月目に「随時改定(月変)」の届出が必要になります

固定的賃金の変動とは?

社会保険(健康保険・厚生年金)における「固定的賃金」とは、基本給や役職手当のように、支給額や支給率があらかじめ決まっているものを指します。

  • 通勤手当の扱い: 毎月定額で支給される通勤手当(定期代)は、典型的な固定的賃金です。
  • 実費精算からの変更: 出勤日数に応じて変わる「実費」は変動給の性質を持ちますが、支給ルールを「1ヶ月の定期代相当額を定額で支給する」という固定的なルールに改正した場合、それは固定的賃金の変動に該当します。単価(運賃)の変更や、自転車通勤から公共交通機関への手段変更も同様です。

随時改定(月変)が必要となる3要件

固定的賃金に変動があったからといって、すぐに届出が必要なわけではありません。以下の3つの条件をすべて満たした場合にのみ、4ヶ月目から標準報酬月額が改定されます。

  1. 固定的賃金に変動があったこと: 今回のように、支給ルールの変更や単価の変更がある場合です。
  2. 継続した3ヵ月間の支払基礎日数が17日以上(短時間労働者は11日以上)あること: 変動があった月から3ヵ月間、しっかりと出勤している必要があります。
  3. 2等級以上の差が生じること: 変動月からの3ヵ月間に受けた報酬(基本給、残業代、新しい通勤手当等すべてを含む)の平均額が、現在の標準報酬月額と比較して2等級以上の差が生じている場合です。

実務上の落とし穴:残業代との合算

注意が必要なのは、「通勤手当の変更額」だけで2等級の差を見るのではないという点です。

例えば、定期代に変更したことで交通費自体は数百円しか増えなくても、その3ヵ月間にたまたま「残業代(非固定的賃金)」が多かった場合、それらを合算した平均額で2等級以上の差がつくと、随時改定の対象となります。逆に、固定的賃金が上がっても、残業代が大幅に減って平均額が変わらなければ、改定は行われません。

試験的な変更や1ヶ月限りの対応

ご相談の「1ヶ月だけ定期代で支払う」というケースですが、単発の精算方法の変更であれば、一時的なものとして「固定的賃金の変動」には含めないのが一般的です。ただし、賃金規程等のルール自体を変更し、それが継続的な支給を前提としているのであれば、たとえ結果的に1ヶ月で元に戻したとしても、変動月を起点とした判定が必要になる場合があります。


本件のポイント

気づきを得た白衣の男性
  • 通勤手当の支給方法変更や運賃改定は、「固定的賃金の変動」として月変判定のスタートラインになる
  • 変動月から3ヵ月間の総報酬(残業代含む)の平均が、現在の等級と2等級以上の差があれば届出が必要である
  • 「実費交通費(変動給)」から「定期代(固定給)」への切り替えは、単価の増減にかかわらず「ルールの変更」として扱う
  • 在宅勤務が増えて「定期代」を廃止し「実費」にした場合も、同様に固定的賃金の変動として判定を行う

交通費は「実費だから保険料には関係ない」と誤解されがちですが、社会保険上は立派な報酬の一部です。給与計算ソフトの設定変更とあわせて、等級への影響を必ずチェックするようにしましょう。

本記事の内容は投稿時点の法令にもとづき要点のみを平易な表現で執筆しています。実務においては所轄の官公署にご相談のうえ、貴院の実情に応じて適切にご対応願います。なお弊社でもオンライン人事相談を実施中です。詳しくは弊社ホームページよりご確認ください。


  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/医療労務コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

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