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003_休日休暇のFAQ

【有休と公休】週休2日の職場で月〜金まで有休消化。土日の公休に代休出勤を命じることの是非

人事相談FAQでは、実際に運営者(RWC合同会社・RWC社労士事務所)が取り扱った人事相談のうち、頻出の事案あるいは重要と思われる事案を厳選し、医療業界に置き換えてご紹介しています。

依頼者からのご相談

首をかしげる医師

当院は完全週休2日制(日曜日と水曜日が休み)の歯科クリニックです。来週、ある歯科衛生士から「月・火・木・金・土の5日間、溜まっている有給休暇をすべて消化したい」との申し出がありました。

その週は実質的に一度も出勤しないことになりますが、急なキャンセル待ちの患者様が増えたため、院長としては本来の公休日である「水曜日」に、せめて数時間だけでも出勤してほしいと考えています。

事務長からは「5日間も有休で休むのだから、公休日のどこかで1日くらい働いてもらっても、週の労働時間としては問題ないのではないか」と言われました。

  1. 月〜金(または月〜土)まで有休を消化したスタッフに対し、本来の公休日に出勤を命じることは法的に可能でしょうか?
  2. 有休を5日取った週の公休日に出勤させた場合、その賃金は「休日出勤」として割増(1.25倍や1.35倍)が必要になりますか?
  3. 「有休で休んだ分、公休に出勤して相殺する」という運用は認められますか?

ご相談への回答

できるビジネスパースン

歯科クリニックの診療体制を維持するための苦肉の策かもしれませんが、結論から申し上げますと、年次有給休暇は「労働日の労働義務を免除する制度」であり、有休取得を理由に公休日の休みを奪うような出勤要請は、制度の趣旨に反するため原則として避けるべきです

有休と公休の決定的な違い

まず、言葉の定義を整理する必要があります。

  • 公休日(休日): 労働契約上、最初から「労働義務がない日」です。
  • 有給休暇: 本来は「労働義務がある日」について、その義務を免除してもらう権利です。

したがって、有休を5日間取得したからといって、もともと労働義務のない公休日に「労働義務が発生する」わけではありません。特段の事情(あらかじめ就業規則で定めた振替休日の手続きなど)がない限り、有休取得を理由に公休出勤を強制することはできません。

有休消化週の「割増賃金」計算の落とし穴

もしスタッフが合意の上で公休日に出勤した場合、その日の賃金計算には注意が必要です。

  • 法定休日(日曜日など)に出勤した場合: 週1回の法定休日に労働させた場合は、その日の実労働時間に対して35%以上の割増賃金(1.35倍)を支払う義務があります。
  • 法定外休日(水曜日や土曜日など)に出勤した場合: ここが間違いやすいポイントですが、割増(1.25倍)が必要かどうかは「実労働時間の合計」で判断します。 有給休暇として休んだ時間は、実際に働いた時間(実労働時間)には含まれません。例えば、月〜金まで有休(38時間45分相当)を取り、土曜日の公休に8時間出勤した場合、その週の「実労働時間」は8時間だけです。法定労働時間の「週40時間」を超えていないため、土曜日の勤務に対しては割増なしの通常の賃金(1.0倍)の支払いで法的には問題ありません。

「有休と公休の相殺」は本末転倒

事務長様が仰る「有休で休んだ分、公休に出てもらって労働時間を調整する」という考え方は、労働者の疲労回復と心身のリフレッシュを目的とする年次有給休暇制度の趣旨からすると本末転倒です。

無理に出勤を命じることは、歯科衛生士などの専門職にとって「有休を使うと結局別の日に働かされる」という不信感に繋がり、定着率の低下(離職リスク)を招く恐れがあります。


本件のポイント

気づきを得た白衣の男性
  • 有給休暇は「労働日」の義務を免除するものであり、公休日(休日)にはそもそも請求する余地がない
  • 有休を5日取ったからといって、公休日に出勤させる法的な強制力はない。有休と公休は切り離して考えるべきである
  • 有休取得週の公休出勤については、週の実労働時間が40時間を超えない範囲であれば、割増賃金の支払いは不要(1.0倍)である
  • ただし、その日が「法定休日(日曜日等)」である場合は、実労働時間に関わらず35%増の割増賃金が必要となる
  • スタッフの心身の健康とワーク・ライフ・バランスを守ることが、結果として質の高い歯科診療と安定したクリニック経営に繋がる

有給休暇を気持ちよく取得してもらいつつ、どうしても出勤が必要な場合は、事前に「振替休日」の手続きをとるなど、客観的なルールに基づいた誠実な運用を心がけましょう。

本記事の内容は投稿時点の法令にもとづき要点のみを平易な表現で執筆しています。実務においては所轄の官公署にご相談のうえ、貴院の実情に応じて適切にご対応願います。なお弊社でもオンライン人事相談を実施中です。詳しくは弊社ホームページよりご確認ください。


  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/医療労務コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

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