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003_休日休暇のFAQ

【早期復職】ならし保育期間中の育児休業。保育園入所日と復職日のズレをどう処理すべきか?

人事相談FAQでは、実際に運営者(RWC合同会社・RWC社労士事務所)が取り扱った人事相談のうち、頻出の事案あるいは重要と思われる事案を厳選し、医療業界に置き換えてご紹介しています。

依頼者からのご相談

疑問な白衣の女性

当院に勤務する歯科衛生士が、お子さんの認可保育所への4月入所が決まったため、育児休業を切り上げて復職することになりました。

彼女は「4月1日に入所しますが、最初の2週間ほどは『ならし保育』があるため、4月20日から復職したい」と希望しています。しかし、院長である私としては、人手不足もあり、4月1日の入所日に合わせて復職してもらいたいと考えています。

事務長から「就業規則に『保育所への入所が決定した場合は、その日をもって育児休業を終了し復職するものとする』という規定を設ければ、4月1日からの復職を強制できるのではないか」と提案を受けました。

以下の点について教えてください。

  1. 「保育所への入所日 = 育児休業の終了日(復職日)」と一律に規定し、強制的に復職させることは法的に可能でしょうか?
  2. 「ならし保育」の期間中に育児休業を継続させることに、何か法的な問題はありますか?
  3. 自治体のルールによっては「入所月の末日までに復職すること」が条件となっている場合があると聞きましたが、どのように対応すべきでしょうか。

ご相談への回答

できるビジネスパースン

保育所の入所タイミングに合わせた復職は、歯科クリニックの診療体制を整える上で重要な課題です。結論から申し上げますと、保育所への入所は法律上の育児休業終了事由には該当しないため、入所日をもって強制的に復職させるような規定は、育児・介護休業法違反とされるリスクがあります

「保育所入所 = 育休終了」ではない

混同されやすいのですが、児童福祉法(保育所のルール)と育児・介護休業法(労働者の権利)では、定義が異なります。

  • 児童福祉法: 保護者が就労等の理由で「乳幼児を保育できない状態」にあることを入所の条件としています。そのため、保育所に入所できたということは、論理的には「就労している(あるいは復職する)」ことが前提となります。
  • 育児・介護休業法: 育児休業が終了する日は、法律で「子が1歳に達した日(延長時は1歳6ヶ月または2歳)」や「新たな育児休業の開始」などに限定されており、「保育所に入所したこと」は終了事由に含まれていません。

したがって、本人が法律上の権利として「子が1歳になるまで休みたい」と主張している場合、会社側が「保育園が決まったのだから4月1日に出てきなさい」と強制することは、育児休業を取得する権利の不当な制限とみなされる恐れがあります。

「ならし保育」期間中の弾力的な運用

多くの自治体では、子供が新しい環境に慣れるための「ならし保育」期間を考慮し、「入所した月の末日までに復職すること」を入所の条件としています。

厚生労働省からも自治体に対し、「ならし保育期間中は通常の就労が困難なケースが多いため、育児休業終了前であっても保育所に入所させる等の弾力的な取り扱いを行うこと」という通知が出されています。

実務上、多くの企業では「保育所入所月内での復職」を条件に、ならし保育期間中の休業継続を認めています。この期間を無理に出勤させるよりも、スムーズな職場復帰のための「準備期間」と捉えるのが合理的です。

就業規則と実務対応のポイント

事務長様が提案された「入所日 = 復職日」という規定は、前述の通り法的なリスクが高いため、避けるべきです。代わりに以下のような柔軟な対応を推奨します。

  • 合意による復職日の設定: 育児休業の切り上げ(早期復職)は、あくまで「労使の合意」によって行われるものです。本人の家庭状況(ならし保育のスケジュール)を確認した上で、双方納得できる日を復職日として設定します。
  • 有給休暇の活用: もし就業規則上、保育所入所日をもって復職させたいのであれば、ならし保育で早退や欠勤が必要な時間は、本人の希望により年次有給休暇を充ててもらうという方法もあります。ただし、これも強制はできません。
  • 自治体ルールの確認: クリニックが所在する自治体の「入所に関するしおり」等を確認し、復職期限(月末までで良いのか等)を把握した上で、スタッフと話し合うことが重要です。

本件のポイント

気づきを得た白衣の女性
  • 保育所の入所日は法的な「育児休業終了事由」ではないため、入所日に合わせた強制復職は権利侵害となるリスクがある
  • 「ならし保育」期間中は、自治体も育休継続と入所の併用を認める「弾力的運用」を推奨している
  • 復職日の前倒しは、あくまでも「労使の合意」に基づいて決定すべき事項である
  • 就業規則には「保育所の入所が決まった場合は、速やかに会社に届け出、復職日について協議するものとする」といった、柔軟な運用を前提とした表現に留めるのが安全である

歯科衛生士のような専門職に長く活躍してもらうためには、復職時の家庭環境に配慮した「持続可能な働き方」を共に模索する姿勢が、組織のガバナンスとES(従業員満足度)の両立に繋がります。

本記事の内容は投稿時点の法令にもとづき要点のみを平易な表現で執筆しています。実務においては所轄の官公署にご相談のうえ、貴院の実情に応じて適切にご対応願います。なお弊社でもオンライン人事相談を実施中です。詳しくは弊社ホームページよりご確認ください。

  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/医療労務コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

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