01_雇用管理

就業規則

就業規則は職場のルールブック

就業規則

就業規則の目的

就業規則とは、労働者の権利と義務を明文化した職場のルールブックです。就業規則は、労働基準法で作成が義務付けられており、労働条件と職務規律を明確にして、円滑な労使関係を構築するための、経営マネジメントに不可欠なツールでもあります。

労働者が安心して働ける職場風土の醸成は、業種や事業規模を問わず、すべての企業にとって重要な課題です。就業規則を整備することは、適正な勤怠管理、公平な人事評価、効果的な人材育成などを実現し、無用な労使トラブルを防止して、有能な人材の定着を促進します。

就業規則の法的効果

法令に則って作成された就業規則は、労働基準法に準ずる法的な効力をもちます。ゆえに従業員の賞罰を行ったり、労使紛争に対応する際には、労働基準法や就業規則、労働契約に照らし合わせて、労使それぞれの言い分の是非を判断することになります。

労働基準法によって就業規則の作成が義務付けられているのは、一定規模の事業所に限られていますが、前述の理由から、就業規則の作成義務のない事業所においても、就業規則を整備し、社内で共有することで、公平感や納得感のある人事制度を確立できるでしょう。

就業規則を作成しなければならない事業所

スーパーマーケット

就業規則を作成しなければならない事業所

労働基準法では、就業規則は常時10人以上の労働者を使用する事業所に、作成を義務付けています。常時10人以上とは、正社員に限らずパートやアルバイトも含めて10人以上という意味です。また事業所とは本社、店舗、配送センターなど就業場所ごとの単位をいいます。

スーパーマーケットやコンビニエンスストアをチェーン展開している企業では、店舗によって従業員数がまちまちですが、店舗オペレーションを標準化していることが多いため、店舗ごとのスタッフ数に関係なく、全社統一的な就業規則を整備することが一般的です。

就業規則が適用される労働者

適法に制定された就業規則は、自社の全ての従業員に適用されます。いったん就業規則が施行されると、使用者と労働者に就業規則を遵守する義務が生じます。上司が部下に対して行ういわゆる業務命令は、就業規則の服務規律が根拠となっています。

なお正社員とパートタイマーなど、仕事の内容や勤務時間が異なる場合は、それぞれに適用される就業規則を、別々に作成することは差し支えありません。ただし作業内容が同じなのに、雇用身分を理由とした不合理な差別は禁止されていますので注意しましょう。

ココがポイント

職責の重さや業務の難易度に応じた待遇格差は問題ありませんが、単にパートだという理由で通勤手当を支給しないというのは不合理な待遇差別になります。

就業規則の記載事項

勤怠管理システムのイラスト

法定必要記載事項と任意的記載事項

就業規則には、労働基準法で記載することが義務付けられている法定必要記載事項と、記載の有無を事業主の任意とする任意的記載事項があります。前者には絶対に明記すべき絶対的必要記載事項と、ルールがあれば明記しなければならない相対的必要記載事項があります。

絶対的必要記載事項

  • 労働時間関係〜始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
  • 賃金関係〜賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
  • 退職関係〜退職に関する事項(解雇の事由を含みます。)

相対的必要記載事項

  • 退職手当関係〜適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
  • 臨時の賃金・最低賃金額関係〜臨時の賃金等(退職手当を除きます。)及び最低賃金額に関する事項
  • 費用負担関係〜労働者に食費、作業用品その他の負担をさせることに関する事項
  • 安全衛生関係〜安全及び衛生に関する事項
  • 職業訓練関係〜職業訓練に関する事項
  • 災害補償・業務外の傷病扶助関係〜災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
  • 表彰・制裁関係〜表彰及び制裁の種類及び程度に関する事項
  • その他〜事業場の労働者すべてに適用されるルールに関する事項

任意的記載事項

任意的記載事項に何を明記するかについて、特段のルールは存在しないため、ここでは一例をあげておきます。

  • 昇進昇格の基準と決定方法
  • 人事評価の基準と実施方法
  • 福利厚生の種類と利用方法

企業の盛衰は就業規則しだい

右肩上がりのイラスト

経営の4大リソースとは、ヒト、モノ、カネ、情報をいいますが、ヒトのマネジメントが稚拙だと、残りのモノ、カネ、情報という資源を効果的に運用できませんので、企業経営において就業規則を整備する意義は極めて大きいといえます。

また労働基準法は労働者の権利を保護するものですが、就業規則については問題社員から自社を防衛するためにも役立ちます。問題社員の無法な振る舞いによって、有能な人材や得意先、地域社会などが不利益を被ってしまったら本末転倒です。

そこで最後に「なぜ就業規則を変えると会社は儲かるのか?ヒト・モノ・カネを最大に活かす6つのヒント(下田直人著/大和出版)」という書籍に、自社に発展をもたらす就業規則作成のポイントが書かれていましたので、その一部をご紹介して本記事を終わります。

<儲けを生み出す就業規則の6大条件>

  1. 自社における従業員の働き方、休みの取り方、賃金のもらい方、辞め方などのルールが明確になっていること
  2. 就業ルールに関する問い合わせに対して、上司や人事部、経営者が時間を取られることが無いものであること
  3. ルールが不明瞭であるために、社員の間に不安が広がり、優秀な従業員が離職してしまわないものであること
  4. 問題従業員が入社してしまった場合には、速やかに会社から去ってもらうことができるようなものであること
  5. 従業員として取るべき行動、取ってはいけない行動が明確で、自社のブランド化に貢献できるものであること
  6. どう働けば、どう報いられるのかを明確にし、会社と従業員が目指すゴールを合致させられるものであること

就業規則の具体的な作成方法は関連記事でご紹介していますので、ぜひそちらもあわせてご確認ください。

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就業規則の作成方法

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  • この記事を書いた人

山口光博

コンビニの店長やスーパーの販売課長を経て、31歳の時に管理畑に転職する。以後、20年以上にわたってあらゆる人事マネジメントの実務に携わる。上場準備企業の人事部長として人事制度改革を担当した後に独立、現在に至る。

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