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学歴はキャリアに影響するか?

2024年3月13日

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結論からいえば学歴はキャリアに影響する。ちょっと古いデータで恐縮だが、2018年のHR総研の調査によると、就活時に企業の学歴フィルターを感じたことがある学生は、文系で57%、理系で51%いたとのこと。企業側でも新卒採用のターゲットを偏差値の高い大学に絞っている企業はおよそ4割あり、従業員1,000人超の企業になると6割弱もの企業が、選考前の段階で学歴によるスクリーニングを実施していることもわかった。

20年にわたって複数の企業の人事部門で働いてきた筆者の経験を思い起こすと、いくつかの職場において、高学歴者が採用や給与、昇進などの面で優遇されていたのは事実である。それも有能な人材がたまたま高学歴だった…ということではなく、実績より学歴ありきで高待遇は既定路線だった。ただしグラフ化ブロガーで知られる不破雷蔵さんの記事によると、日本における高卒と大卒の賃金格差は、おおむねOECD諸国の平均値といったところ。

筆者は高学歴者ではないが、学歴がキャリアに影響するのはある程度仕方のないことだと考えている。なぜなら科学や医療などの分野で働くために必要とされる高度な専門知識やスキルは、職場のOJTで習得できるものではないし、組織のリーダーなど他者になんらかの影響力を行使する職業であれば、社会的なステイタスと一定レベルの教養が必要とされるからだ。また受験勉強の要領の良さは、そのまま仕事の進め方に活かされる可能性が高いと推察される。

だからといって日本の学歴偏重社会が良いとは思わない。理系や技術系であればともかく、文系大学出身者の場合は、大学の専攻と現在の仕事に関連がないケースが多い。そもそもなぜ若い時に受験したペーパーテストの成績によって、以後のキャリアが決まってしまうのだろうか?本来、高等専門教育は、必要とする人が、必要とする時に気軽に受けられるべきで、学歴とは超えられない身分や階級ではなく、TOEICスコアのように流動的なものであるはずだ。

穿った見方かもしれないが、今の日本の硬直化した学歴偏重社会は、官僚システムを正当化し、権威付けするための方便ではないかと思っている。公務員試験は地方公務員2種から国家公務員総合職まで、概ね最終学歴に対応する学歴ヒエラルキーとなっており、ピラミッドの頂点に君臨するのが官僚である。彼らとしては現行の秩序を維持したいので、多種多様な人達が任意のタイミングで自在に学歴を更新できるようになると、何かと具合が悪いのではないか。

権威に弱く、長いものには巻かれろ精神が染み付いてしまっている多くの日本人は、高学歴者は優秀で高潔な人材といった、ステレオタイプな観念に凝り固まっている。しかし、筆者はこれまでに仕事のできない高学歴者を嫌というほど見てきた。そして高学歴人材の代表格であるはずの財務官僚や農水官僚のやっていることは、国民生活の安定よりも身内への利益誘導である。国交省OBが関係業界に天下りポストを強要していた件など、まるで反社勢力のようだ。

ともあれ学歴の無い人は、資格を取得するなり、技能系専門学校へ進学するなりして、専門性を身につけるべきだ。門外漢が一朝一夕では真似できない高度で専門的な知識やスキルを身につけることで、不毛な学歴マウントを回避することができる。実際のところ高学歴ではなくても、特定の専門分野において、高学歴者よりもはるかに高い収入を得ている人達もたくさんいる。元々日本人は手先が器用なので、ホワイトカラーだけがキャリアではないはずだ。

今後、事業のライフサイクルが短命化し、企業にとって正社員を長期的に抱え込むメリットが小さくなると、正規・非正規といった雇用身分制が崩壊するかもしれない。組織をフラット化し、事業のフェーズごとにスペシャリストを短期的に調達して業務を回そうとする企業も増えるだろう。多くの人は学歴よりも専門性が必要とされるので、従来のタテ方向のキャリアから、特技を活かしてヨコ方向にキャリアを拡張してゆく働き方も検討すべき時期にきている。

札幌市中央区にある伊夜日子神社は学業成就のご利益があるパワースポットとしても知られる。
  • この記事を書いた人

山口光博

コンビニやスーパーの販売職を経て三十路を機に人事業界に転身。20年以上にわたり人事部門で勤務先の人事制度改革に携わった後に起業。社会保険労務士試験合格。日商販売士1級、建設業経理士1級、FP技能士2級など多数取得。

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