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8割の社会人が「学歴はキャリアに影響する」と回答その理由は?(ITmediaビジネスONLiNE/2024.02.16)

日本は学歴偏重社会である

最初に断っておきたいのですが、私は地方の私大卒なので、いわゆる高学歴ではありません。ゆえに私の記事は高学歴ではない者から見た、学歴に対する偏見やひがみが多分に入り混じった、極めて客観性を欠く内容となっていることを最初に断っておきます。

さて、紹介した記事のとおり、日本では高学歴であることが社会人のキャリア形成に大きく影響することは間違いありません。例えば大企業の新卒採用は学歴フィルターがあるとか、相手の学歴で態度を変える輩が多いとか、学歴偏重の事例を上げるときりがありません。

ちなみに人事業界でいうところの高学歴とは、GMARCH(学習院、明治、青山学院、立教、中央、法政)以上の難関大学をいいます。それ以外の大学、例えば私の母校などもそうですが、Bランク以下の大学を出たところでキャリア形成が有利になるケースは少ないと思われます。

高学歴の良い点と悪い点

ヤングケアラーや浪人生などを除き、通常は高校入学から大学受検までの手持ち時間は皆一様です。同じ条件なのに難関大学に受かる人と落ちる人がいるのは、勉強の方法や自己管理の巧拙の差であり、受験で培ったスキルはビジネスにおいても応用可能だろうと推測できます。

一方で、私はこれまで高学歴なのに仕事のできない人をたくさん見てきました。ビジネスは入試と違って正答の無い問いの連続なので、ペーパーテストの解答テクニックよりも、地頭の良さや実行力がモノを言う世界です。ゆえに高学歴=仕事がデキる人とは限りません。

ただし残念なことに日本人は権威に弱いため、実務能力にかかわらず高学歴者を管理職ポストに就けたり、ライターが高学歴というだけで、軽佻浮薄なコタツ記事を有名なメディアが取り上げたりするなど、高学歴が優遇される学歴偏重社会であることは間違いありません。

日本一の高学歴集団がやってきたこと

日本で最も高学歴な職場といえば財務省でしょう。特に中枢部署の主計局は、概ね東京大学法学部卒で占められています。しかしそんな高学歴集団の財務省が、自分達の利権のために国の財政危機を喧伝して増税をゴリ押ししていたことに、多くの国民が気づき始めています。

恣意的に国の借金を誇張したバランスシートを作成し、財政健全化のために消費税増税が必要だと政治家やマスコミを使って国民を煽りつつ、その裏で特定の業界の法人税を減税して便宜を図り、自分達が退官したらその企業に天下って高額な報酬を受け取るというからくりです。

かつて国民にとっての情報源は新聞紙とTVニュースくらいでした。しかし現在はYouTubeやSNSを通じて有識者が続々と財務省の詭弁を暴くようになり、我々もようやく真実を知るところとなったのですが、高学歴な財務官僚が時代の変化に気づかなかったのは皮肉なことです。

なぜ日本では学歴偏重なのか?

仕事を遂行するために必要な理解力、思考力、文章力、計算力などの判定基準として学歴が有効であることは否めません。また工学系や医療技術系など、高校では学ぶことができない高度専門知識を要する仕事であれば、なおさら大卒や大学院卒の学歴が必要です。

しかし日本の企業は未だにメンバーシップ型雇用と新卒一括採用が大多数であり、特に文系では、大学での専攻と求人の職務要件が一致するような採用などほぼ皆無です。つまり偏差値の高い大学を出た順から求職倍率の高い会社に入社できるという仕組みとなっています。

なぜ学歴偏重の前時代的な雇用慣行が残っているのか?というと、官僚組織の維持に都合が良いからではないかと考えています。日本の公務員試験は大学入試の延長線上みたいなものですので、学歴偏差値の序列がそのまま官公庁内のヒエラルキーに反映される傾向があります。

官僚にとっては、民間企業においても学歴ヒエラルキーがあった方が官僚組織を正当化しやすく、また出身大学ごとのインフォーマルな横のつながりを通じ、企業に対して影響力を行使しやすいので、学歴偏重社会は何かと都合が良いのだと思われます。

そもそも高等教育はなんのためにあるのか?

以前の国会で、財務省は有能な人材を幅広く登用するといいながら、実態としては東大法学部からの新卒採用ばかりで、金融や経済の専門家が集結した主要先進国の財務省に比べて、日本の財務省の閉鎖性と後進性はまるで発展途上国のようだ、と野党が批判していました。

硬直的な日本の官僚組織では、複雑化し不確実性の増す現在の社会経済情勢に対応できません。国会でのお役所答弁を見ても明らかなように、形式重視なので本質ベースでの議論が必要なDXとも合いません。さらに彼らは頑なに自分達の過ちを認めず、誰も責任を取りません。

日本では一流大学に進学するにはお金がかかりますし、高校から大学にエスカレーター式に進学するのが一般的となっているため、実質的には学歴も世襲制となっています。こういった前時代的な制度や慣行が人材の偏在を招き、不寛容な社会を生む要因となっているのでしょう。

高等教育は国の発展に必要不可欠ですが、役人天国を助長するための制度であってはなりません。高等教育を必要とする人は誰でも、必要とする時期に、必要とする内容の教育を、経済的負担を気にせずに受けられ、学びを社会に還元できるような制度であるべきなのです。

  • この記事を書いた人

山口光博

コンビニの店長やスーパーの販売課長を経て、31歳の時に管理畑に転職する。以後、20年以上にわたってあらゆる人事マネジメントの実務に携わる。上場準備企業の人事部長として人事制度改革を担当した後に独立、現在に至る。

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