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パワハラと戦う方法

2024年1月16日

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労働施策総合推進法は事業主にパワハラ防止措置を義務付けているが、同法にはパワハラ防止措置義務違反に対する罰則が設けられていないため、パワハラ行為者がオーナー経営者やその一族(経営幹部)の場合は、バワハラを抑止する実効性に乏しいのが実情だ。

同法には、個別労働関係紛争解決促進法(労使間の揉め事に対して都道府県労働局長が解決の助言などを行うことを定めた法律)とは別に、紛争調停委員会による労使間の調停制度が設けられている。とはいえパワハラ行為者が経営者の場合は、話し合いでの円満解決は難しい。

通常なら労働基準監督署に相談しようとするだろう。しかし、労働基準監督官は違法残業や賃金未払などの労働基準法違反を取り締まるのが仕事なので、パワハラ行為の相談があったからといって、職場を臨検したり事業主に是正勧告を行ったりすることはほぼありえないだろう。

では誰に助けを求めたらよいのか?というと、裁判沙汰まで想定すると弁護士しかいない。ただし無料相談の法テラスの場合は担当弁護士次第である。なぜなら法テラスの輪番制弁護士の中には企業の顧問弁護士もおり、経営者のパワハラ事案にはあまり関与したがらないからだ。

そうなると自ら弁護士を探すことになるが、たとえば地域合同労組(地域ユニオン)に相談してみるとよい。たいていは顧問として労働弁護士がバックについており、地域合同労組も経営者に対して職場環境改善の団体交渉を申し入れてくれるかもしれない。

恐らく労働弁護士と地域合同労組が動けば一時的にパワハラは止むだろう。ただしハラスメントの行為者には、性癖に衝き動かされてハラスメントに及ぶようなタイプもおり、この場合は反省することも改心することもない。したがってほとぼりが冷めると同じ行為を繰り返す。

パワハラ行為者が従業員なら組織から排除することもできるが、経営者ともなるとそうはゆかない。もし被害者が多数いるなら労組を結成して集団で対抗する方法もアリだろう。しかし被害者が孤立し、周囲が見て見ぬふりをするような職場なら、さっさと脱出した方が賢明だ。

ちなみにハラスメント被害に遭ったことにより離職を余儀なくされた場合は、雇用保険法の特定受給資格者に該当するため、最寄りのハロワで失業手続きをすると7日間の待機期間の後にすぐ失業給付が開始される。また給付日数も自己都合退職より長く設定されている。

注意すべきは離職票の作成にあたり、会社側が離職事由を自己都合とする可能性があることだ。このような場合に備え、事前に2名以上の同僚にハラスメント被害の証人をお願いしたり、ハラスメント行為を録画・録音しておき、ハロワに証拠を提出して異議申し立てすればいい。

もし会社側が「会社都合離職」をチラつかせてハラスメント行為の口封じをしようとしても取り合ってはいけない。それは離職事由を決定するのは経営者ではなく、公共職業安定所長なので、安易に応じると不正受給の共謀者とみなされ、受給した額の3倍を返還する羽目になる。

被害に遭った労働者を退職させないというケースもある。やりたい放題パワハラした挙げ句、証拠や痕跡を隠滅するために被害者を退職に追い込むつもりが、行政や労組が動いて旗色が悪くなった途端に、被害者の無断欠勤を偽装してから懲戒処分しようというやり口である。

しかし民法では、労働者については14日前までに労働契約の解除を申し入れることで、自由に退職できると定めている。申し入れは口頭でも足りるが、言った、いや聞いていない、などといったトラブルになるため、配達記録付きの内容証明郵便でもって行うのがセオリーである。

なおこの場合、①宛名は直属の上司ではなく代表者とすること、②「退職願」ではなく「退職届」とし、③退職理由は「一身上の都合」などと遠慮せずに、「◯◯さんからパワハラを受けていたが、上司や会社が何も対応してくれなかったため」とストレートに明記することである。

この方法であれば退職代行業者に手続きを依頼して高いお金を払う必要も無い。ただし腹いせにSNSでハラスメント行為者や職場の悪口を拡散するのだけはやめた方がいい。もしそれが事実であったとしても、パワハラ行為者から名誉毀損で訴えられてしまうリスクが大きい。

できれば行政機関などを交え、話し合いで解決するのがベストだが、現実問題として、相手がクセのある経営者だとそんな教科書的な展開などは期待できそうもないので、最終的にはどのような手段があるのか知っておくだけでも、気持ちに余裕をもって行動できるだろう。

「パワハラは禁止してもなくならない。パワハラは言葉遣いに注意してもなくならない。なぜならパワハラはコミュニケーションやマネジメント、仕事の量と質、組織の運営方針や職場の慣習などが複合して起こるから」という本書は、パワハラ問題の核心を鋭く突いた秀逸な一冊。パワハラ対策に必要なのは研修ではなく、人事制度と組織風土の改革なのである。


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  • この記事を書いた人

山口光博

RWC合同会社/社労士事務所代表。社会保険労務士、日商販売士1級、建設業経理士1級ほか。コンビニ店長やスーパーの販売課長を経て、三十路で人事畑に転身。事業再生法人や上場準備企業で人事制度の再建に携わった後に起業。

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