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パワハラはどこに相談すればいい?|外部の相談窓口や相談後の流れを解説【シン・会社のマナー】(サライ/2023.12.21)

2024年1月16日

行政機関はアテにならない

当サイトなりのハラスメント対処法ですが、労働基準監督は勤務時間や賃金などの労働基準法違反に対して取り締まりを行うため、ハラスメント問題では動けません。

法テラスも、基本的に企業側の顧問弁護士の輪番制となっているケースが多く、「転職の支障となるので事を荒立てない方があなたのためですよ。」などと、お茶を濁されるのがオチでしょう(金銭的に余裕があるなら労働弁護士に直接依頼するのが確実です)。

まともな人事部であれば社内規定にしたがって動いてくれると思いますが、ハラスメントの加害者が、オーナー企業の経営者やその一族の場合は、保身のためにだんまりを決め込んでしまう可能性が高いです。

ハラスメントに対抗するにはまず証拠集めから

ではハラスメントの被害者はどうすれば良いのか?というと、まずは徹底的にハラスメントの客観的な証拠を収集しましょう。

客観的な証拠の収集とは、どんなハラスメント行為が、いつ、どこで、どのような状況において行われたのか?そしてその時に同席していたのは誰だったか?ということを具体的に記録することです。

またハラスメントが実際に行われている場面を録画したり録音したりするのも有効です。

当事者同士のやりとりですので、こっそり録画や録音していたとしても、盗撮や盗聴などにはなりません(ご自身が不在の場での他者のやりとりを録画したり録音するのは犯罪ですのでご注意ください)。

それと被害者が単独でハラスメントと戦おうとすると、精神的に参ってしまいますので、お住まいのエリアの地域合同労組(地域ユニオン)に相談してみましょう。

きっと労組のメンバーが被害者に寄り添って親身に話を聞いてくれますし、たいていは労働弁護士が顧問となっているので、悪質なハラスメントの場合は勤務先に対して団体交渉を申し入れてくれるかもしれません。

最善の解決法はさっさと転職すること

なお、経営者がハラスメントの加害者の場合は、その経営者が雇われ役員でない限り、円満な解決はほぼ期待できないといわざるを得ません。

よって転職するしかありませんが、転職活動が長期におよぶと経済的に困窮する恐れがあるので、いざという時のために、日頃から自分に味方してくれそうな、信頼できる職場の同僚を、複数名確保しておきましょう。

証人が2名いれば、失業保険の特定受給資格者に認定され、失業手当(基本手当)の給付制限期間なし、給付期間も年齢により最大360日間といった救済措置を利用できますので、安心して転職活動に専念できます。

恐らく離職票の作成にあたって、会社側はあくまでも自己都合による退職を強弁してくると思いますが、そもそも離職事由は、所轄の公共職業安定所長が認定するものですので、客観的証拠さえ揃えておけば取り合う必要はありません。

会社を辞めさせてもらえない場合は?

「会社が認めるまで退職させない」などと、退職手続きそのものを行ってくれない職場であれば、「ハラスメントを受け、上司に職場環境の改善を要請しましたが、対応してもらえなかったので、◯◯年◯月◯日をもって退職します」という内容の退職届を提出しましょう。

民法では、労働者については退職日の14日前までに、使用者に退職することを通知すれば、自由に退職できると定めています(ただし後日の紛争蒸し返し防止のために、業務引継書の作成や会社からの貸与物の返却などはきちんと行う必要があります)。

注意すべきは「退職願い」ではなく「退職届」とすること、また退職理由を「一身上の都合」としないこと、退職届は郵便局に行き、配達記録付きの内容証明郵便でもって、会社の代表者宛に送ることです。

あとは退職日になれば、退職成立です。ムダに高いお金を払って、退職代行業者などに依頼する必要はありません。

ブラック企業など忘れてリカバリーに注力しましょう

退職日から1年以内に教育訓練給付金制度の利用を開始することができるなら、訓練期間中は受講料や通所費用の支給に加えて、最大で2年間、基本手当の支給が延長されます。

こういった公的制度を上手に活用し、むしろ「神様がキャリアブレイクをくれたのだ・・・」と前向きに気持ちを切り替え、專門性の高い資格などを取得して自身の価値を高め、捲土重来を期して欲しいですね。

最後に一点注意ですが、腹いせに、SNS等でハラスメントを拡散するのはやめましょう。仮にハラスメント行為が事実であったとしても、名誉毀損罪で、ハラスメントの加害者側から、逆に訴えられる可能性があります。

昔から「転ばぬ先の杖」と申しますように、リスクに対してどのような対処法があるか知っておくことで、気持ちに余裕をもって今後の身の振り方を考えることができます。

企業側はハラスメント防止対策を!

ここでは詳述しませんが、企業には様々な労働関係法令によって、職場におけるハラスメント防止措置を講ずることが義務付けられています。

特に昨今は、女性活躍推進や次世代育成支援などの労働関係施策にとどまらず、人的資本経営やSRIファンドなど、ファイナンスの面においても人事マネジメントの質が問われる時代になっていますので、事業者にとってハラスメント対策は喫緊の課題であるといえます。

ハラスメントがまん延する職場に共通する特徴は、就労のルールや仕組みが整備されておらず、人材教育も不十分なため、組織人としてのリテラシーが低い人が多いことです。ゆえにハラスメント対策には、まず良質な人事マネジメントシステムの構築が不可欠です。

  • この記事を書いた人

山口光博

コンビニの店長やスーパーの販売課長を経て、31歳の時に管理畑に転職する。以後、20年以上にわたってあらゆる人事マネジメントの実務に携わる。上場準備企業の人事部長として人事制度改革を担当した後に独立、現在に至る。

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