
労使協定の目的と効力
残業は労働基準法で禁止されている!?
厳密にいえば残業は違法行為であり、労働基準法第32条では、法定労働時間を超えて労働者を働かせることを禁止している。にも関わらず多くの職場で残業が行われているのは、労働基準法第36条に、労使協定を締結すれば法令違反に問わないと規定されているからである。
労使協定の免罰効果
労使協定は、労働基準法などの法令で禁止されている事項のうち、法令の但し書きにおいて、労使協定を締結すれば例外を認めると規定されている条項について、事業主を法令違反の罪に問わないという、免罰効果をもたらすものである。
労働協約との違い
労使協定と似たものに労働協約がある。労働協約とは、使用者と労働組合との間で取り交わす、就業規則とは別の特別ルールである。労使協定が全ての労働者に適用されるのに対し、労働協約は組合員のみなので、労働協約によって労使協定の代わりとすることはできない。
労使協定にはどのようなものがあるか?
労使協定は締結するだけではダメ
労使協定は、労働基準法などの例外的取り扱いを認めてもらうために、労使間で協定書を取り交わすものであり、協定を締結すると効力を発揮する。ただし協定によっては、事業所の所轄労働基準監督署への届出が義務付けられているものもある。
労働基準監督署への届出が必要なもの
- 任意の貯蓄金管理
- 事業場外のみなし労働時間制(みなし労働時間が法定労働時間を超える場合)
- 専門業務型裁量労働制
- 1ヶ月単位の変形労働時間制(就業規則に規定する場合は労使協定不要)
- 1年単位の変形労働時間制
- 1週間単位の変形労働時間制
- フレックスタイム制(清算期間が1ヶ月を超える場合のみ)
- 時間外および休日労働(通称36協定)
労働基準監督署への届出が不要なもの
- 賃金全額払の例外
- 休憩時間の一斉付与の例外(小売業は未成年者のみ労使協定が必要)
- 割増賃金に代わる代替休暇
- 年次有給休暇の時間単位付与
- 年次有給休暇の計画的付与
- 年次有給休暇の手当の計算
- 育児介護休業の取得対象外
労使協定の締結方法
労使協定の一般的な流れ
- 協定書を作成する(厚生労働省の所定様式を利用する)
- 過半数労働組合もしくは労働者の過半数代表者と労使協定を締結する
- 所轄の労働基準監督署に労使協定を届出する
- 全従業員に労使協定の全文を周知する
事業主は、労働基準法や労働安全衛生法などの法令の要旨と、就業規則および労使協定の全文を、全ての従業員がいつでも自由に閲覧できる状態にしておく義務がある(違反は罰金刑)。
過半数代表者の選出方法
労使協定は、事業場単位で締結する必要があるので、店舗ごとに労働者の過半数代表者を選出しなければならない。選出にあたっては選挙や互選などの民主的な方法によるものとし、事業主や使用者が人選に介入すると、その労使協定は無効となる。
管理職は過半数代表者になれるか?
管理職は労働基準法の使用者に該当するため、職場の労働者の過半数を代表する者になることはできない。ただし管理職も労働者なので、過半数代表者を選挙によって選出する場合には、投票する権利がある。
労使協定のまとめ
労使協定を知らないと大変なことに…
労働基準法は知っていても、労使協定までは知らないという経営者は多い。しかし労使協定を締結せずに従業員を残業させた場合は、事業主と使用者に対して、懲役刑や罰金刑などの厳しい刑罰が科される。また更新忘れによって書類送検されるケースもあるので要注意である。
おすすめの書籍
労使協定は雇用形態に応じた内容で締結する必要がある。また労使協定によっては、有効期限を定めて定期的に更新しなければならないものもあり、適切に運用しないと法的ペナルティが科されるため、店長クラスであれば、少なくとも実務書で概要を把握しておきたいもの。
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