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採用面接の極意

2024年1月22日

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採用面接は定量的に評価しづらいので「面接室に入った瞬間に落とすヤツがわかる」とか「採用してはいけない人材のたったひとつの特徴」などといった話がまことしやかに流布されているが、はっきりいってこんなものはすべてくだらない都市伝説に過ぎない。

参考までにこれまで1,000人以上の採用面接を担当してきた筆者の流儀をご紹介すると、採用面接のポイントは2つある。ひとつはコンプライアンスに反するような選考をしないこと、ふたつめは自社に悪影響を及ぼす人材を水際で食い止め、社内に侵入させないことである。

前者は、男女雇用機会均等法、高年齢雇用安定法、障害者雇用促進法、そして厚生労働省の採用選考ガイドラインなどに抵触しないように注意することである。これらは応募者の能力や適性に見合った公正かつ公平な採用選考を行うことを採用者に義務付けたものである。

難しいのは後者である。応募者の誰が不適切な人材なのか、客観的に判断するのは困難である。だからといって安易にトラブルメーカーを採用してしまうと、職場の秩序を破壊するのみならず、大切な顧客を失ったり、有能な人材の離職を招いたりして会社に損害をもたらす。

そこで筆者は採用面接に望む前に、履歴書と職務経歴書、さらに同業の仲間や取引先などのネットワークから収集した情報を通じて、可能な限り応募者のプロファイリングを行い、志望動機、実際の実務スキル、人格やマインドなどについて自分なりの仮説を立てていた。

そして採用面接の場で、応募者へのインタビューを通じて自分の立てた仮説をひとつひとつ検証してゆくのである。もちろんイエス・ノーで答えられるような質問ではなく、応募者に具体的なストーリーを語らせるべくゴリゴリのオープン・クエスチョンに徹した質問にする。

この方法だと応募書類の内容が本物なら、本人の口から生々しいエピソードをたくさん聞かせてもらえる。もしプロフィールがうわべだけの内容なら、返答に具体性がないし、ウソ偽りがあれば5W2Hで質問をしつこく深堀りしてゆくうちに、いずれ化けの皮が剥がれてくる。

ただし面接は長丁場となる。筆者が面接官だった時は、にこやかな笑みを絶やさずに、応募者1人あたり90分〜2時間の面接を行うことはザラだったが、そもそも人材を雇用して定年まで抱えてゆくということは、会社にとってコストもリスクも極めて大きいことである。

そう考えると2時間程度の面接など大した問題ではない。むしろ良い人材を欲しがるクセに、事前のプロファイリングはしない、質問は面接の場での思いつき、さらに面接時間は1人30分くらいで済ませたい、などとのたまう面接官の方こそ、虫が良すぎるというものだ。

もっともこれほど丁寧な採用面接であっても、100%の精度で良い人材だけを選別することは現実的に不可能である。そこで万一ハズレ人材を掴んでしまった時の対策も採用部署の責任者と人事部との間で協議しておくべきだろう(機会があれば別の記事で詳しく紹介したい)。

ともあれDQN人材は能力よりも価値観に問題があることが多く、こればかりは教育訓練では矯正できない。辞めさせるにしてもリスクを伴い、放置すれば組織が内部崩壊するかもしれない。ゆえに可能な限り合理的な手法を駆使して水際で侵入を食い止める必要があるのだ。

<追記>

好人物だが求める要件(経験やスキル)にイマイチ満たないといった人材は、むしろ積極的に採用して自前で完成品に仕上げるといった発想が人材難の時代には必要である。また1〜2ヶ月という長期的な選考期間を設け、採用側と求職側のマッチングを互いに確かめつつ成約(内定)に至るのが、最近主流となっているダイレクトソーシングである。

札幌市北区にある新琴似屯田兵中隊本部。開拓生活のあまりの過酷さに逃亡する屯田兵も多かったとか。
  • この記事を書いた人

山口光博

コンビニやスーパーの販売職を経て三十路を機に人事業界に転身。20年以上にわたり人事部門で勤務先の人事制度改革に携わった後に起業。社会保険労務士試験合格。日商販売士1級、建設業経理士1級、FP技能士2級など多数取得。

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