日経新聞の記事によると、DX推進度が全国でほぼ最下位の北海道にあって、人口2万人弱の当別町が、生成AIを活用して劇的な業務効率化に成功したそうだ。具体的にどんな業務にどうAIを活用したのかについて詳しくは触れられていなかったが、ブログやSNSの運営を効率化すべくGeminiやChat GPTを相手に悪戦苦闘している(要するに上手に使いこなせていない)筆者にとって、大いに興味があるテーマだ。
筆者が生成AIを上手に使いこなせていないのは、プロンプトの構文スキルが未熟なだけかもしれない。しかし、生成AIは日進月歩で進化しているので、いずれ生成AIの方から筆者に歩み寄ってくれて、人力による校正の煩わしさが解消されるのではと密かに期待している。生成AI以外では、Google Workspaceなどのビジネス・コミュニケーションツールやデータポータルをはじめとするBIは、数年前とは比べ物にならないくらいに使い勝手が良くなった。
一方でユーザーたる人間の側はあまり進化していないように感じる。それは手作業をITツールに置き換えることをDXだと勘違いしている人が多いからだ。DXにおけるITやICTは事務効率化のひとつの手段に過ぎない。むしろDXを推進して労働生産性を向上したいなら、まず日本の多くの職場にはびこっている玉虫色の社内ルール、属人的な職務分掌、非効率なコミュニケーション、不透明な意思決定プロセス、無意味な儀式や慣習などを徹底的に排除する必要がある。
旧来の仕事の常識を破壊した上で、改めて合理的な業務フローを敷設し、適所適材にもとづいた人員配置を行い、新しい秩序にそぐわない価値観は逐次矯正してゆくことがDXの肝なのだが、こういうことを言うと「そもそも会社は理不尽で不合理なものだ。」などと諭してくるオッサンが出現する。しかし理不尽さや不合理さくらいDXと相性が悪いものはない。AIは是々非々で淡々とジョブを処理してゆくだけで、もしAIが清濁併せ呑むようになればかえって怖い。
ところでお役所といえば「ネ申エクセル」である。念押しすると「神」ではなく「ネ申」。これは表計算ソフトのセルを方眼紙状にしてセル結合を多用したお役所独特の表計算ソフトの使用法を揶揄したものだが、データベースの機能をわざわざ封殺した極めてガラパゴス的なフォーマットである。なぜこんな摩訶不思議な使い方をするのか?というと、お役所の資料は紙に印刷したり、手書きで付記したり、人力でチェックすることを前提としているからである。
「ネ申エクセル」はいまやお役所の不合理さと非効率さを象徴する代名詞だが、総務省統計局のE-Statなどは未だに「セル結合」と「再掲」のオンパレードで、統計データをBIに読み込んで情報として活用するには、データクレンジングに膨大な労力を費やす。しかし役人はプライドが高く、美しい資料を作ることが仕事の目的と化している人もいるため、この状況は暫く続くだろう(役人の天下りという身勝手な慣習も不合理さではネ申エクセルといい勝負だ)。
それにしても不合理で保守的なお役所において、この職員の方は生成AIをどのように導入して職場の作業効率化を図ったのだろうか?筆者としては生成AIの活用法よりも、職場の意識を変革していったプロセスの方がより気になる。恐らく自分達の慣れ親しんだ仕事のやり方に拘泥する、視野狭窄気味の古参職員などから執拗な抵抗もあったのではないかと勝手に推察するが、これらを解消し克服していったコツなど、もし機会があれば後学のために是非伺いたい。