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001_労働契約のFAQ

【定年再雇用】嘱託歯科スタッフとの再雇用契約。雇用契約書に「定年60歳」の記載は残すべきか?

人事相談FAQでは、実際に運営者(RWC合同会社・RWC社労士事務所)が取り扱った人事相談のうち、頻出の事案あるいは重要と思われる事案を厳選し、医療業界に置き換えてご紹介しています。

依頼者からのご相談

疑問な白衣の女性

当院は、開院から25年が経過した歯科クリニックです。長年、受付や歯科助手を務めてくれたベテランスタッフが、来月いよいよ60歳の定年を迎えます。

本人には、引き続き「嘱託職員(有期契約)」として週3〜4日のペースで勤務してもらうことで合意しており、現在、再雇用用の雇用契約書を準備しています。

ここで事務長より、契約書の作成にあたって質問がありました。

  1. 契約書の「定年」の欄ですが、これまで通り「定年:60歳」という記載を残しておくべきでしょうか? すでに定年を迎えた後の契約なので、記載を省いてもよいのでしょうか。
  2. 定年後の有期契約において、「契約期間の満了とともに契約を終了させる」ためには、どのような条文が必要ですか?
  3. 歯科医師や歯科衛生士などの専門職を60歳以降も雇用する場合、契約期間(上限)の設定に特例などはありますか?

スタッフとの信頼関係を維持しつつ、定年後の働き方に合わせた適切な契約を結びたいと考えています。


ご相談への回答

できるビジネスパースン

歯科クリニックの運営を支えてきた熟練スタッフの定年再雇用は、組織の安定にとって非常に重要です。しかし、定年後の雇用契約書は、正社員(無期雇用)時代とは法的な性質が異なるため、記載内容を整理する必要があります。

「定年60歳」の記載は不要

結論から申し上げますと、すでに定年退職を迎えた労働者との再雇用契約において、雇用契約書に「定年60歳」と明記し続ける必要はありません。

理由は、60歳定年という規定はあくまで「無期雇用契約を終了させるための根拠」であり、既にその年齢に達して有期契約に移行した後のスタッフにとっては、現在の契約を終了させる直接的な理由や法的根拠にはなり得ないからです。逆に「定年:60歳」という記載が残っていると、実態(既に60歳を超えて就労している)と契約書の文言に齟齬が生じることになります。

代わりに記載すべき「退職・契約終了条項」

定年後の嘱託契約は通常「期間の定めのある労働契約(有期労働契約)」となります。契約期間の満了をもって円滑に雇用を終了、あるいは更新の判断を行うためには、以下の記載が不可欠です。

  • 契約期間の特定: 嘱託契約としての開始日と終了日を明記します。
  • 契約更新の有無: 「自動的に更新する」「更新する場合がある」「更新しない」のいずれかを明示します。
  • 更新の判断基準: 更新する場合があるとした場合、勤務成績や健康状態など、何を基準に更新を判断するかを具体的に示します。
  • 退職条項の書き換え: 「定年:なし(再雇用期間の満了により退職)」や「退職に関する事項は当院就業規則(嘱託規定)による」といった表現に改めるのが実務上適切です。

60歳以上の有期契約における期間の特例

労働基準法では、有期労働契約の期間は原則として「3年」が上限とされていますが、契約締結時に「満60歳以上」である労働者については、職種に関わらず契約期間を最長「5年」とすることが認められています。

これにより、歯科医師や歯科衛生士などの高度な専門職に限らず、歯科助手や受付スタッフであっても、60歳以降の再雇用契約では最長5年の長期契約を結ぶことが可能です。

実務上の留意点:社会保険の「同日得喪」

定年退職の翌日に1日の空白もなく再雇用される場合、社会保険(健康保険・厚生年金)については「同日得喪(どうじつとくそう)」の手続きを行うことができます。

通常、給与が大幅に下がった場合は「随時改定(月額変更)」により4ヶ月目から保険料が変更されますが、60歳以上の再雇用者に限り、退職(資格喪失)と再雇用(資格取得)の届出を同時に行うことで、再雇用初月から新しい給与に応じた保険料に即時改定することが可能です。これにより、スタッフの手取り額を早期に適正化できるメリットがあります。


本件のポイント

気づきを得た白衣の女性
  • 定年再雇用後の契約書には「定年60歳」の記載は不要であり、代わりに契約期間満了による終了条項を整備すべきである。
  • 満60歳以上の有期雇用契約は、すべての職種において最長5年の契約期間を設定できる。
  • 高年齢者雇用確保措置により、希望者には原則として65歳までの雇用機会を確保する義務がある。
  • 「同日得喪」の手続きにより、再雇用後の給与低下に合わせて社会保険料を即座に調整し、スタッフの負担を軽減できる。
  • 定年を機に、嘱託職員専用の就業規則(委任規程)を整備し、賃金体系や休日設定を明確にしておくことが、将来のトラブル防止に繋がる。

スタッフが長年培ったノウハウや患者さんとの信頼関係は、歯科医院にとってかけがえのない財産です。法的に適正な契約を結び直すことで、スタッフが安心して「プロの仕事」を継続できる環境を整えましょう。

本記事の内容は投稿時点の法令にもとづき要点のみを平易な表現で執筆しています。実務においては所轄の官公署にご相談のうえ、貴院の実情に応じて適切にご対応願います。なお弊社でもオンライン人事相談を実施中です。詳しくは弊社ホームページよりご確認ください。


  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/医療労務コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

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