この記事のポイント
ストレスチェックテストの目的
ストレスチェックテストとは、業務に起因する従業員のストレスの度合いを測定・診断する検査であり、労働安全衛生法により、使用者に対して年1回の実施を義務付けている。ストレスチェックテストを行う主な目的は次の2つである。
- 個々の従業員のメンタル不調の未然防止
- 検査結果の集団分析を通じた職場環境の改善
対象となる事業者と従業員
ストレスチェックテストは、常時50人以上の従業員を使用する事業場に実施義務があり、対象となる従業員は、正社員および週の所定労働時間が正社員の3/4以上の長時間パートタイマーなどである。なお、ストレスチェックテストの受検は各々の従業員の任意となっている。
ストレスチェックテストの内容
厚生労働省が提供しているストレスチェックテスト(職業性ストレス簡易調査票)は、①自分の仕事の状況(心理的負担の原因)、②最近1ヶ月間の状況(心身の自覚症状)、③周囲の人間関係(上司や同僚からの支援)の3つについて、合計で57項目の質問を設けている。
なお、厚生労働省のWebサイトでは、ストレスチェックテスト調査票について、標準版(57項目)および簡易版(23項目)の2パターンを提供している。
ストレスチェックテストの実施の手順
ストレスチェックテストを実施する手順やストレスチェックテスト制度を運用するための社内規定の作成方法などについては、厚生労働省のマニュアルに詳細に解説されているので、ぜひそちらをご参照頂きたい。とりあえず大まかなステップをまとめると次のとおりとなる。
- 衛生委員会を開催してストレスチェックテスト制度の運営や従業員への周知などの方法を決定する
- 検査機関(医療機関や健診機関等)を選定し業務委託契約を締結する
- ストレスチェックテストの実施時期や実施方法などについて従業員に周知する
- 対象となる従業員にストレスチェックテスト用紙を配布し、期日までに回答してもらう
- 回答したストレスチェックテスト用紙は、人事部を経由して、もしくは個々の従業員から検査機関に直接提出してもらう
- 検査機関にて従業員のストレス診断および職場単位の集団分析を行う
- 個々の従業員の診断結果は検査機関から従業員本人へ、また集団分析結果については検査機関から事業主へ送付される
労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル(厚生労働省)
ストレスチェックテスト実施後にすること
高ストレス者と判定された従業員が医師の面接指導を希望した場合は、使用者は遅滞なく面接指導を手配し、使用者は医師からの意見を衛生委員会で報告するとともに、必要であればその従業員の就業場所や業務内容、勤務時間を変更するなどの措置を講じなければならない。
医師の面接指導の診断書(面談後の医師所見を記載したものに限る)は会社にて5年間保管する義務がある。また常時50人以上の従業員を使用する事業場は、毎年のストレスチェックテスト実施報告書を、所轄労働基準監督署に提出する義務がある。
心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書(厚生労働省)
ストレスチェックテスト実施の注意事項
ストレスチェックテストの実施に際して「高ストレス者はメンタルが弱い」などと、人事評価で不利益を被ることがないように、ストレスチェックテストを受検する従業員の上司(管理監督者)に、ストレスチェックテストの回答用紙を閲覧させたりすることは禁じられている。
他にも検査機関は従業員の同意がなければストレスチェックテストの診断結果を使用者に提供できない、また検査機関に代わって人事部や所属長を経由して従業員に診断結果を通知する場合は、検査機関が診断票を封緘した上で引き渡さなければならない、などのルールがある。
使用者は集団分析の結果をもとに、高ストレス者の多い部署について職場環境の改善に努める義務があるが、集団分析の対象部署が10人未満の場合、個人が特定される恐れがあるため、対象部署の全従業員の同意がない限り、検査機関は使用者に情報提供することができない。
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