公的健康診断にはどのようなものがあるか?
事業主に実施義務のある健康診断
労働安全衛生法により、事業主に実施を義務付けているものは次の3つである。法定なので、健診費用は事業主負担となる。また一般健康診断は1年以上雇用予定の者、特殊健康診断と歯科医師による健康診断は、危険有害業務に従事する全ての労働者が対象となる。
- 一般健康診断
- 特殊健康診断
- 歯科医師による健康診断
事業主に実施義務のない健康診断
事業主に実施する義務はないが、労働者の健康増進のため、生活習慣病や長時間労働による脳疾患や心疾患などの予防を目的として、健診費用を公費で助成している健康診断がある。これらについて受診するかどうかは、それぞれの労働者の任意とされている。
- 生活習慣病予防健診
- 特定健康診査
- 二次健康診断
事業主に実施義務のある健康診断の概要
一般健康診断
一般健康診断は次の5種類である。一般健康診断の目的は、労働者の健康状態を把握することだが、法定健診ゆえに、受診費用は事業主負担となる。受診時間の賃金を有給とするか無給とするかは事業主の任意だが、厚生労働省の指針では「有給が望ましい」としている。
- 労働者を雇入した時
- 定期健康診断
- 労働者が特定業務に従事者の健康診断
- 海外派遣労働者の健康診断
- 給食従事者の検便
特殊健康診断
特殊健康診断は、労働安全法令に定める危険有害業務に労働者を従事させる場合に、事業者に実施義務がある。事業を行うために必要な健診なので、受診費用の事業主負担はもとより、受診時間は勤務時間扱いとなる(法定時間外や休日の受診は割増賃金も発生する)。
- 高圧室内作業および潜水業務従事者の健康診断
- 放射線業務従事者の健康診断
- 特定化学物質業務従事者の健康診断
- 石綿業務従事者の健康診断
- 鉛業務従事者の健康診断
- 有機溶剤業務従事者の健康診断
- 四アルキル鉛業務従事者の健康診断
歯科医師による健康診断
歯科医師による健康診断とは、塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、フッ化水素、黄燐等のガスや粉塵にさらされる場所の作業従事者の健康診断であり、受診費用や受診中の時間の賃金について、特殊健康診断に準じた取り扱いとなる。
派遣労働者の場合、一般健康診断は派遣元に、特殊健康診断は派遣先にそれぞれ実施および費用負担の義務がある。
事業主に実施義務のない健康診断の概要
生活習慣病予防健診
生活習慣病予防健診は、がんの早期発見を目的として、一般健康診断の項目に胃部レントゲンなどの検査を追加した健康診断である。対象は、全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入している事業所に勤める、35歳以上の被保険者である。
生活習慣病予防健診は、法令により事業主に義務付けているものではないため、実施は事業主の任意であり、費用負担の義務もないが、費用の一部を協会けんぽが負担してくれることから、福利厚生の一環として、定期健康診断とセットで実施するケースが多い。
特定健康診査
特定健康診査は、通称「メタボ健診」として知られており、40歳〜74歳の健康保険(協会けんぽ、組合健保)の被保険者と被扶養者、国民健康保険の被保険者を対象に、メタボリックシンドロームの予防と改善のために行われる。
特定健康診査は、希望者が、勤務先を通さずに、自分が加入している健康保険に対して直接申し込みを行い、自宅に送付された受診券と健康保険証を持参して、健康診断を実施している医療機関にゆけば受診でき、健康保険から受診費用の一部が補助される。
二次健康診断
二次健康診断は、過労死の原因となる脳疾患や心疾患の発症を予防することを目的とした健康診断であり、労働安全衛生法の定期健康診断において、①血圧、②LDLコレステロール、③血糖値、④BMI測定値の全てに異常があった場合に、受診することができる。
二次健康診断の受診は労働者の任意だが、費用は労災保険が全額負担してくれる。なお二次健康診断については、どこの医療機関でも受診できるわけでなく、労災指定病院などに限られており、受診できるのは年1回までとなっている。
公的健康診断の種類のまとめ
法定健診実施後の措置
事業主は、法定健診を実施後に、医療機関から健診結果通知書が送られてきたら、すみやかに1通を労働者に渡し、もう1通を5年間保管しなければならない。また特殊健康診断と歯科医師の健康診断の結果を、所轄の労働基準監督署に報告する義務もある。
従業員50人以上の事業場は、一般健康診断の結果も、所轄の労働基準監督署に報告する義務がある。
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労働者の高齢化によって、企業における健康診断の重要性が増している。健診業務のをアウトソーシングしている企業であっても、異常所見者に対する措置は企業の義務なので、本書を通じてより深い知識を得ておく必要がある。
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