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01 人事のしごと

【歯科クリニック向け】退職後の公的医療保険はどうすればいい?健康保険「任意継続」の制度と手続きを社労士が解説

焦って書類を書く白衣の男性のイラスト

はじめに

歯科クリニックを経営される院長先生にとって、スタッフの退職に伴う事務手続きは、避けては通れない業務の一つです。

特に、退職時に頻繁に相談されるのが「健康保険はどうすればいいですか?」という質問ではないでしょうか。

退職後に加入する健康保険にはいくつかの選択肢がありますが、その中の一つが、「任意継続被保険者制度」です。

院長先生ご自身やが制度や手続きの流れを把握しておくことは、円滑な退職手続きだけでなく、クリニックの労務管理に対する信頼性を高めるためにも非常に重要です。

本記事では、健康保険の任意継続制度について、その概要から具体的な手続き方法まで詳しく解説します。

退職後の健康保険:3つの選択肢を確認する

任意継続の制度説明に入る前に、退職後の公的医療保険にはどのような選択肢があるのかを整理しましょう。

再就職先が決まっていない場合、スタッフは主に以下の3つから選択することになります。

  • 国民健康保険に加入する
    • スタッフの住所地の市区町村の国民健康保険に加入します。
    • 保険料は前年の所得や世帯人数に基づいて計算されます。
  • 家族の扶養に入る
    • 配偶者や親など、家族が加入している健康保険・国民健康保険組合の被扶養者となる方法です。
    • 保険料の負担はありませんが、各保険の定める被扶養者要件を満たす必要があります。
  • 健康保険の任意継続被保険者となる
    • 在職中に加入していた健康保険に、退職後も個人として継続して加入する方法です。

歯科クリニック特有の注意点

任意継続は健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)のみの制度であるという点に注意が必要です。

もし、貴院が歯科医師国民健康保険組合(歯科医師国保組合)に加入している場合、退職するスタッフは任意継続被保険者にはなれません

この場合、退職後の選択肢は「①国民健康保険」か「②家族の扶養」の2つに限られます。

誤って案内をしないよう、まずは自院の加入保険を確認しましょう。

健康保険の任意継続被保険者の制度の概要

任意継続制度とは?

任意継続被保険者制度とは、退職などで健康保険の被保険者資格を喪失した後も、一定の条件を満たせば引き続き元の健康保険に加入できる制度です。

加入できる期間は、最長で2年間となっています。

任意継続被保険者になるための2つの要件

任意継続被保険者となるためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。

  • 被保険者期間
    • 資格喪失日の前日(退職日)まで継続して2か月以上の被保険者期間があること
  • 申請期限
    • 資格喪失日(退職日の翌日)から20日以内に申出書を提出すること

任意継続の保険料

在職中は事業主と被保険者が折半して負担する健康保険料ですが、任意継続の保険料は全額自己負担となります(保険料には上限額の設定あり)。

それでも、前年の所得によって保険料が決められる国民健康保険よりも、任意継続のほうが保険料が安くなる場合があります。

退職するスタッフにとっては、保険料の負担を比較検討できる点がメリットとなるでしょう。

任意継続の被扶養者

被扶養者の要件を満たしていれば、任意継続後も引き続き家族を被扶養者とすることができます

被扶養者となるための要件は、在職中と同様です。

また、任意継続後も被扶養者分の健康保険料はかかりません。

任意継続被保険者資格取得申出書の手続き

提出期限

前述のとおり、資格喪失日(退職日の翌日)から20日以内に申出書を提出します(提出期限が土日祝日の場合は翌営業日)。

この期限を1日でも過ぎると、任意継続被保険者になることができなくなるので、注意が必要です。

提出先

退職するスタッフの住所地を管轄する協会けんぽ支部に提出します。

なお、健康保険組合に加入していた場合は、その組合へ提出します。

申請書の様式

所定の「健康保険任意継続被保険者資格取得申出書」を使用します。

なお、事業主(クリニック)側で「健康保険 資格喪失証明欄」に記入を行うと、任意継続の資格取得手続きがスムーズに進みます。

添付書類

必要に応じて、以下の書類を添付します。

  • 被扶養者の認定要件を確認できる書類(不要なケースもあり)
  • 退職(資格喪失)の事実が確認できる書類(任意。事業主による「健康保険 資格喪失証明欄」の記入がない場合)
  • 健康保険資格確認書交付申請書(任意。マイナ保険証を利用しておらず、資格確認書の速やかな発行を希望する場合)

健康保険組合では、協会けんぽと申請書の様式や添付書類が異なる場合があります。必ず組合に手続きの詳細を確認してください。

よくある質問

歯科医師国民健康保険組合に加入していますが、退職後に任意継続被保険者となれますか?

残念ながらできません。
前述の通り、任意継続は健康保険(協会けんぽ・健保組合)にのみ設けられている制度です。
歯科医師国保組合をはじめとする国民健康保険組合や自治体が運営する国民健康保険には、任意継続の制度はありません。

退職するスタッフから任意継続被保険者になりたいと相談をうけました。どのように対応すればよいですか?

まず、クリニックが加入している健康保険の種類を確認してください。協会けんぽや健康保険組合であれば任意継続が可能です。
その上で、20日以内の申請期限があることを伝え、早めの手続きを促してください。
必要に応じて、「健康保険資格喪失証明欄」を記入した申出書を渡したり、提出先の案内を行うなど、手続きがスムーズに進むよう支援するとよいでしょう。

申出書の記入や提出は事業主が行うのですか?

原則として、申出書(「健康保険資格喪失証明欄」を除く)の記入や提出は、退職するスタッフ本人が行います。

煩雑な事務手続きは専門家へ!歯科クリニック運営をサポートします

健康保険の任意継続は、退職するスタッフの生活を守る大切な制度です。

しかし、利用できるのは健康保険にの被保険者に限られ、歯科医師国保組合では利用できない点など、制度が複雑な部分も多々あります。

また、20日以内に行うという厳格な申請期限があるため、退職が決まったスタッフには正確かつ迅速に情報提供することが大切です。

歯科クリニックの運営においては、こうした社会保険手続きに加え、労働保険の年度更新や就業規則の作成など、人事労務の専門知識を要する業務が山積しています。

院長先生が診療に専念し、クリニックの成長を目指すためにも、煩雑な事務手続きを歯科業界に精通した社労士へ任せることを、ぜひご検討ください。

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  • この記事を書いた人

福島智美

文学研究者(文学修士)から人事業界に転身。慢性期病院で給与計算や社会保険事務を担当後、リハビリ病院開設を経験。転職して山口の部下になった縁で共に起業。社会保険労務士試験合格。親族に歯科医師や薬剤師など多数。

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