
はじめに
歯科クリニックを経営されている院長先生は、日々の診療、スタッフのマネジメント、さらには経営全体と、休む暇もなく多忙な日々をお過ごしかと思います。
「もっと診療に集中したいのに、事務作業に追われてしまう…」
そう感じられている院長先生も多いのではないでしょうか。
そんな日々の中でも、年に数回発生するのが賞与の支給です。
スタッフの皆さんのモチベーション向上や定着率アップのためにも大切な賞与ですが、実は賞与を支給したら「賞与支払届」という事務手続きが必要になることをご存知でしょうか。
年に数回のことですが、実は将来の年金額にも関わる大切な手続きで、うっかり忘れてしまうと後々面倒なことになりかねません。
今回は、この「健康保険/厚生年金保険 被保険者賞与支払届」について、歯科クリニックの実情に合わせて分かりやすく解説します。
賞与を支払ったら、なぜ届出が必要なのか?
簡単に言うと、「賞与支払届」とは社会保険料(健康保険料1・厚生年金保険料)を正しく計算・徴収するために、年金事務所に賞与額を報告する手続きです。
もしこの届出を怠った場合、以下のようなリスクが生じる可能性があります
- 年金事務所の調査対象となるリスク
- 適切な社会保険料を納付できず、後から追徴や延滞金が発生する恐れ
- スタッフの将来の年金額計算に影響が出る可能性(賞与支給に連動する年金額が正しく計算されず、不利益につながる恐れ)
このように、賞与支払届はクリニックにとってもスタッフにとっても、重要な手続きといえます。
- 全国もしくは都道府県の歯科医師国民健康保険組合に加入の場合、賞与に対しては国民健康保険料はかからないケースもあります。 ↩︎
賞与支払届の提出方法と手続きの流れ
提出期限
賞与を支払った日から5日以内に提出する必要があります。
提出先
クリニックの所在地を管轄する日本年金機構事務センターもしくは年金事務所へ、郵送もしくは窓口持参で提出します。
健康保険組合(東京都歯科医師健康保険組合など)に加入している場合は、年金事務所に加え、ご加入の健康保険組合にも賞与支払届を提出する必要があります。
また、電子申請による提出も可能です。
必要な書類
基本的に「健康保険/厚生年金保険 被保険者賞与支払届」のみで、特別な添付書類は不要です。
協会けんぽ・健康保険組合(東京都歯科医師健康保険組合など)に加入しており、かつ、年の途中で採用したスタッフの年間賞与額が573万円を超える場合は、「健康保険標準賞与額累計申出書」の添付が必要です。
年間の標準賞与額の累計額が573万円を超えたとき(日本年金機構)
届出書の様式と作成方法
届出書の様式は、賞与支払月の前月までに、日本年金機構からクリニック宛に送付されます。
また、日本年金機構のホームページからダウンロードすることも可能です。
記入すべき主な項目
- 事業所整理記号・事業所番号
- 賞与支払年月日
- 賞与を支払ったスタッフの被保険者整理番号・氏名・生年月日
- 賞与支払額(税金や社会保険料を控除する前の総支給額)
- 標準賞与額(賞与支払額の合計から1,000円未満を切り捨てた金額)
歯科クリニックが知っておくべき賞与支払届の注意点
賞与の対象となる報酬の範囲
「賞与」とは、労働の対価として年3回以下の頻度で支給するもので、名称は問いません。
賞与に該当するものの例
- 夏季・冬季賞与
- 決算賞与
- 年末一時金
- 業績手当(支給回数が年3回以下の場合)
賞与に該当しないものの例
- 結婚祝い金、弔慰金(労働の対価ではないため)
- 年4回以上支給される手当
よくある質問と回答
賞与を年4回以上支給した場合の取り扱いは?
年4回以上支給される賞与は、社会保険制度上は「賞与」ではなく「報酬」として扱われ、月割りして標準報酬月額の算定に含めます。
パート・アルバイトや非常勤のスタッフにも賞与を支払った場合は?
社会保険に加入していない場合は、賞与支払届の提出は不要です。ただし、労働時間等の条件を満たして社会保険に加入しているパート・アルバイトや非常勤のスタッフであれば提出対象となります。
産前産後休業・育児休業中のスタッフに賞与を支払った場合は?
休業中であっても、社会保険の被保険者である限り、賞与支払届の提出は必要です。産前産後休業・育児休業等による保険料免除を受けている場合も同様です。
安心の事務代行で、診療に集中しませんか?
賞与支払届は年に数回の手続きとはいえ、提出期限が短く、記入項目も多岐にわたります。
また、法改正により手続き方法が変更されることもあり、常に最新の情報をキャッチアップしておく必要があります。
「患者さんの治療に集中したいのに、事務手続きに追われてしまう」
「法改正の情報収集まで手が回らない」
「うっかり提出を忘れてしまわないか心配」
このような悩みをお持ちの院長先生には、ぜひ社会保険労務士への業務委託をご検討いただければと思います。
まずは、お気軽にご相談ください。
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