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リモートワークは生産性を損なうのか?(Gigazine/2023.10.03)

2024年1月23日

出社か?在宅か?という議論は、職場の生産性向上という意味においては、まったくナンセンスだと思います。

また「リモートワークは生産性が下がる」という主張の多くは、「職場で同じ空気を共有することに意義がある!」などといった、合理的根拠を欠く体育会系的なノリの域を出ないものがほとんどではないかとも感じています。

さて、リモートワークでチーム活動の生産性を高めるためには、社内の職務分掌と各チームの担当業務、そして個々の業務の流れと分担を明確に設定し、Google WorkspaceやTeamsなどのプラットフォームによって可視化してメンバー同士で共有する必要があります。

そして、これらを構築するプロセスにおいて、従来の仕事のやり方では見えづらかった仕事のムリ・ムダ・ムラをあぶりだし、解消することができるので、リモートワークに移行すると結果的に生産性が上がるのだ、と考えています。

ゆえにこれは出社勤務においても全く同じことが言えます。

リモートワークを導入する時と同様のステップで業務プロセスを改善することで、出社勤務であっても生産性の高い協働を実現することが可能です。

ですから出社か?在宅か?ということが生産性の論点ではなく、個々の業務をクリティカルパス(合理的に最適化された仕事の手順)に落とし込めるか否か、が肝となります。

ただし、職務分掌が属人的になりがちなメンバーシップ型雇用では、長年慣れた仕事のやり方を変えられたくない古参を中心に炎上することもしばしばあり、クリティカルパスに移行する前の整理整頓には困難を伴うことが一般的です。

このような日本特有の非合理的な人事制度が根強く残っている職場では、経営者が腹をくくって組織改革を断行しない限り、生産性を向上させることは至難の業でしょう。

私は前職でコロナ緊急事態宣言によって部内のあらゆる業務をTeamsとM365に一元化してフルリモート体制に移行しましたが、出社勤務に戻ってからも同じ業務管理を継続したことで、高い生産性を維持できました(ただし生え抜きの古参達からは相当に嫌われましたが)。

最終的にはオフィスをフリーアドレスにし、日々の就業場所を各メンバーの判断に委ねたところ、狭い事務所スペースを、労務、採用、教育の担当者達が、それぞれの繁閑に応じて互いに融通しあってくれたので、レバレッジを効かせたチーム運営ができたのは思わぬ収穫でした。

一部にはまだ「出社こそ王道!」といった考えの方もいらっしゃいますが、リモートワークには固定費の削減、育児介護と仕事の両立、地方の有能な人材の登用、逆に地方において都会の高度専門人材を活用できるなど、DX時代にふさわしい経営上のメリットがたくさんあります。

  • この記事を書いた人

山口光博

コンビニの店長やスーパーの販売課長を経て、31歳の時に管理畑に転職する。以後、20年以上にわたってあらゆる人事マネジメントの実務に携わる。上場準備企業の人事部長として人事制度改革を担当した後に独立、現在に至る。

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