
スタッフ異動時に見落としがちな雇用保険手続き:複数クリニック経営の落とし穴
診療やクリニックの運営管理など多くの業務を抱える複数の歯科クリニックを経営されている理事長や院長先生にとって、事務作業の負担は想像以上に大きいものです。
特にスタッフの配置転換や異動にかかる労務管理の手続きは、複雑で見落としがちになります。
ところで、スタッフが本院から分院へ、あるいは分院間で異動する際、雇用保険の手続きを正しく行っているでしょうか。
実は、同一法人内での異動であっても「雇用保険被保険者転勤届」という手続きが必要なケースがあります。
この手続きを怠ると、スタッフの雇用保険記録が正確に管理されず、将来的に失業給付などの手続きでトラブルに発展する可能性があります。
本記事では、歯科クリニック経営者が押さえておくべき転勤届の手続きについて、わかりやすく解説します。
雇用保険の「転勤届」が必要になるのはどのようなとき?
転勤届の提出が必要となるケース
雇用保険における「転勤」とは、被保険者の勤務する場所が同一の事業主(法人)の一つの事業所から他の事業所へ変更されることを指します。
従って、以下のような場合には転勤届の提出が必要となります。
- 同一法人のAクリニックからBクリニックへ、スタッフを異動させる場合
- 本院から新しく開設した分院へ、スタッフを配置転換する場合
なお、転勤前後のクリニックが個別に雇用保険の適用事業となっていれば、双方のクリニックが同じハローワークの管轄内であっても転勤届の提出が必要になりますので、注意が必要です。
雇用保険被保険者転勤届の提出が不要なケース
一方で、以下のような場合は転勤届の対象にはなりません。
- 一時的なヘルプや応援の場合
おおむね2~3か月以内の短期的な駐在や出張は、転勤とは認められません。
例えば、分院のスタッフが産休に入るため、本院から1か月だけ応援に行くといったケースでは、転勤届の手続きは不要です。 - 雇用保険事業所非該当承認を受けている場合
複数のクリニックを展開している医療法人などで、「雇用保険事業所非該当承認申請書」を提出し、各クリニックの雇用保険関係の事務を本院や本部などで一括して行っている場合があります。
この承認を受けたクリニックの間でスタッフが異動した場合は、転勤届の提出は不要です。
転勤届の手続きの概要:期限、提出先、必要書類をチェック
雇用保険被保険者転勤届は、転勤後の事業所(異動先のクリニック)が提出します。
その概要は以下の通りです。
提出期限
転勤届は、転勤の事実があった日の翌日から起算して10日以内に提出しなければなりません。
異動が決まったら早めに準備を始めましょう。
提出先
転勤後の事業所(異動先のクリニック)の所在地を管轄するハローワークへ、郵送もしくは窓口持参で提出します。
誤って転勤前のクリニックを管轄するハローワークへ提出しないよう、注意しましょう。
なお、転勤届は電子申請による提出も可能です。
届出様式
届出に使用する様式は「雇用保険被保険者転勤届」になります。
この様式はハローワークの窓口で入手できるほか、ハローワークインターネットサービスでダウンロードできます。
添付書類
転勤届を提出する際には、以下の書類を添付します。
- 雇用保険被保険者資格喪失届(転勤前の事業所に交付されているもの)
また、上記に加えて以下の書類の提出を求められることがあります。
- 転勤の事実や転勤日を証明する書類(労働者名簿、出勤簿、辞令など)
- 個人番号登録・変更届(転勤したスタッフの個人番号をハローワークに届け出ていない場合)
管轄のハローワークや事業所の状況により、提示を求められる書類が多少異なる場合があります。
提出後の対応(交付される文書など)
転勤届が受理されると、ハローワークから公文書が交付されます。
公文書のうち以下の2点は、転勤したスタッフ本人に渡しましょう。
- 雇用保険被保険者証
- 転勤届受理通知書(被保険者通知用)
また、以下の文書は、スタッフの雇用期間中および離職から少なくとも4年間は、事業主(クリニック)が保存しなければなりません。
- 転勤届受理通知書(事業主通知用)
- 雇用保険被保険者資格喪失届/氏名変更届
なお、「雇用保険被保険者資格喪失届/氏名変更届」は、当該スタッフの資格喪失時等に届出書として使用するものです(資格喪失等の手続きを電子申請で行うため不要な場合は、破棄しても差し支えありません)。
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