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業務に没頭できれば開発者の生産性は50%も向上 ― GitHubのDevEx調査(ASCII.jp×TECH/2024.01.25)

フロー状態とは?

フロー状態は米国クレアモント大学の故チクセントミハイ教授が提唱したことで知られています。チクセントミハイ教授はフロー状態を時間の経過を忘れるくらいに物事に没頭している状態であり、仕事や運動、芸術、勉強などあらゆるシーンで起こりうると述べています。

私にも経験がありますが、フロー状態に突入すると雑念がスッと無くなり、まるで頭の中のCPU(廉価版ですが…)にターボブーストがかかったかのように集中力と想像力が高まります。時にはずっとスタックしていた案件があっさりと解決したということもありました。

なおチクセントミハイ教授は、フロー状態になるためにはいくつかの条件があって、主なものとして、①自分の能力に見合った課題に取り組んでいること、②目標が明確であること、③集中力を妨げる要因が少ない環境にいること、などが挙げられるとしています。

フロー状態を妨げる無意味な電話

フロー状態を獲得することで、集中力や創造力が増して生産性が向上するため、仕事に対して幸福感や充実感を得ることができますが、現実には多くの職場においてフロー状態を妨げる要因があちこちに存在しており、その最たるものが電話ではないかと思っています。

特に上司や同僚からの「ちょっといい?」といった緊急性の無いどうでもいい電話や、こちらから頼んでもいないのに「お忙しいところ申し訳ありません、お時間よろしいですか?」などと一方的にかかってくる営業電話くらい迷惑なものはありません。

前者は相手の貴重な時間を奪っているという自覚がなく、チームで仕事をする意味を理解していません。極秘案件の個別相談ならまだしも、電話を受けた担当者が、改めてチームメンバーに電話の内容を共有するために余計な手間が生じているということがわかっていないのです。

また後者はマーケティングとセリングの区別のつかない前時代的な営業マンです。仮に運良くその場の勢いで成約にこぎつけたとしても、後日になってから相手は騙されたと感じるはずです。そしてその体験はSNSで世間に拡散され、かえって自社のイメージを悪くします。

テキストベースのコミュニケーションのメリット

前職では部下達の生産性を上げるために、部外に対して原則としてメールやチャットで連絡してもらい、緊急時以外には電話してこないように要請していました。古参の社員達からは相当に顰蹙を買いましたが、当時の社内では私の部署が最も生産的だったと自負しています。

電話からメールやチャットなどのテキストベースのコミュニケーションに移行すると、主に次のようなメリットがあります。

  • 時間〜電話では双方が互いに電話できる状況にないとコミュニケーションできませんが、メールであれば送り手と受け手がそれぞれ都合のよい時にアクションすれば済むのでタスクが停滞しません。
  • 記録~電話では会話の内容をメモし、メモした内容を備忘のために改めてパソコンに入力するといったムダな手間が生じますが、メールやチャットであれば、そのまま保存しておくことで備忘録となります。
  • 共有~電話でのやりとりをチームメンバーに共有するために、メモを作成して部内で回覧したり、申し送りといった作業が必要となりますが、メールならCCに入れておいたり転送するだけでスピーディに情報共有できます。
  • 検索~電話では「いつ言った?」「私は聞いてない」というように情報の送り手と受け手の間にしばしば齟齬が生じることがあります。メールやチャットのやりとりなら履歴を検索すれば簡単に確認できます。

今どきはテキストコミュニケーション

電話はすでに前時代的なコミュニケーションツールであり、ビジネスが複雑化し、多様化し、なおかつ実行のスピードが求められる今の時代において、電話でのコミュニケーションに固執する姿勢は、会社にとって背任行為にすら等しい…と思われても仕方ありません。

今どきは部外者とはメールで連絡を取り合い、チーム内では案件ごとにスプレッドシートやドキュメント上で簡潔明瞭なチャットを介して協働し、複雑な事項やセンシティブな内容があれば、その都度Webミーティングでテキストの内容不足を補うのがスタンダードです。

特にGoogleはメールやチャットから即時にMeetに移行でき、Meetの打ち合わせ内容を自動的にテキストに起こしてメンバーと共有できます。さらにGoogleWorkspaceの場合には、ドキュメントをそのままワークフローにして社内の決裁を得ることも可能となっています。

今回のまとめ

残念ながらここまで説明しても日本の多くの職場には根強い電話肯定派が存在します。

彼らの言い分は「電話でなければ微妙なニュアンスが伝わらない」といったものですが、グローバル時代においては日本特有の「空気を読む」といった受け手に期待するコミュニケーションは逆にミスリードを招き、仕事の生産性を下げてしまうことは知っておくべきでしょう。

また「創発は雑談から生まれる」などと言う人もいますが、日常的なタスクすらテキパキと捌けないような人が創発云々など噴飯ものです。生産性の低い人達が雑談したところで、しょせんは何の付加価値も生まないただの雑談に過ぎない…というのが私の考えです。

むしろテキストコミュニケーションに切り替えて、フロー状態を作りやすい職場環境を確立する方が、よほど創発が生まれやすいのではないかと思います。さぁテキストコミュニケーションでDXしましょう!

  • この記事を書いた人

山口光博

コンビニの店長やスーパーの販売課長を経て、31歳の時に管理畑に転職する。以後、20年以上にわたってあらゆる人事マネジメントの実務に携わる。上場準備企業の人事部長として人事制度改革を担当した後に独立、現在に至る。

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