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002(制度概要)_労働保険

経営者必見!労働保険(労災保険・雇用保険)制度の全体像

労働保険制度は、働く人々の生活と権利を守るための重要な社会保障制度です。労災保険と雇用保険の2つを総称して「労働保険」と呼び、これらは一般的な社会保険(健康保険・厚生年金保険)とは異なる仕組みで運営されています。本記事ではその概要を解説します。

社会保険の中の労働保険

広義の社会保険と狭義の社会保険

広義の社会保障制度は、社会保険、公的扶助、社会福祉、公衆衛生の4部門で構成されます。このうち社会保険は、疾病、負傷、死亡、老齢、失業などのリスクに対し、保険的な手法で経済的保障を行う制度です。

一方で、労務管理の実務における「狭義の社会保険」は、一般的に「健康保険」と「厚生年金保険」を指し、「労働保険」と明確に区別します。

労働保険は労災と雇用の2本立て

労働保険は、労災保険(労働者災害補償保険)と雇用保険を合わせた総称です。社会保険制度の一環ではありますが、徴収事務を一括して行う「労働保険徴収法」という独自のルールが適用されるため、実務上は狭義の社会保険と分けて扱われます。

労働保険の制度体系

労災保険:被災労働者への経済的補償

  • 目的:業務上の事由(業務災害)、複数事業労働者の業務(副業・兼業時の労災)、又は通勤(通勤災害)による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をすることです。事業主の災害補償責任を政府が代行する性質を持ちます。
  • 適用事業所:原則として、労働者を1人でも使用する事業場が強制適用となります。
  • 対象労働者:労働基準法に規定する労働者であれば、雇用形態(パート・アルバイト等)や国籍を問わず適用されます。
  • 保険給付の種類:療養(補償)等給付、休業(補償)等給付、障害(補償)等年金・一時金、遺族(補償)等年金・一時金などがあります。
  • 保険料の負担:事業主が保険料を全額負担します。

雇用保険:失業時の経済保障と就職促進

  • 目的:労働者の失業時の生活安定、雇用の継続、再就職の促進を目的としています。
  • 適用事業所:労働者を1人でも雇用する事業が強制適用事業となります。
  • 対象労働者:週20時間以上の所定労働時間があり、31日以上の雇用見込みがある労働者が対象です。
  • 保険給付の種類:求職者給付(基本手当等)、就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付(高年齢・介護)、育児休業等給付があります。
  • 保険料の負担:原則として事業主と労働者で負担(折半ではない)しますが、「雇用保険二事業」に係る費用は事業主のみが負担します。

労働保険特有の制度

年度更新(確定申告)

労働保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの「保険年度」を単位として精算されます。原則として毎年6月1日から7月10日までに、前年度の確定保険料を精算すると同時に、当年度の概算保険料を申告・納付する「年度更新」の手続きが必要です。

中小事業主の特別加入(労災のみ)

本来、労災保険は労働者を対象とするものですが、労働者に準じて業務に従事する中小事業主や法人の役員等は、労働保険事務組合に事務処理を委託すること等の要件を満たせば、任意に労災保険へ加入できる「特別加入」の制度があります。

なお、雇用保険にはこのような事業主の加入制度はありません。

社会保険との関係

医療保険における相違

疾病や負傷の原因が「業務上・通勤時」であれば労災保険の対象となり、「業務外(私傷病)」であれば健康保険の対象となります。

ただし、5人未満の小規模な法人役員の業務災害で、一般従業員と同一の業務中に生じた傷病等については健康保険から給付が行われます。なお、国民健康保険は業務上の傷病も対象です。労災保険は全額給付ですが、健康保険も国民健康保険も一部負担金が発生します。

小規模な歯科クリニック等でも、条件を満たせば歯科医師会などの国保組合に加入できる制度がありますが、歯科衛生士や歯科助手など、労働者を使用する場合は労働保険の強制適用対象となる点に注意が必要です。

障害・遺族年金における相違

国民年金や厚生年金保険の障害年金や遺族年金は業務上か業務外かを問いませんが、労災保険は業務災害等に特化しています。

労災保険の年金給付には、社会保険のように一定の年齢(例:子が18歳、あるいは障害のある子が20歳)に達すると受給権が消滅(失権)する仕組みはなく、支給要件を満たす限り保険給付を継続します。

特に社会保険の遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金)においては、受給権者が失権した時点で保険給付が終了しますが、労災保険(遺族補償等年金)の場合、次順位の受給資格者が受給権を得る「転給」という労災保険特有の制度があります。

保険料の算定・納付の相違

狭義の社会保険料(健康・厚生年金)は個人ごとの標準報酬月額に保険料率を乗じて算定し、事業主負担分と被保険者負担分を合算して、翌月末までに日本年金機構に納付します。

一方、労働保険料は年間の賃金総額に保険料率を乗じて事業所単位で算定し、1年度分を一括して都道府県労働局に納付します。また、労災保険と雇用保険二事業分の保険料は全額事業主負担となる点が、労使折半の社会保険とは異なります。

労働保険に付随する制度

労災保険の付帯事業

労災保険は保険本体のほか、被災労働者の社会復帰を促進するための社会復帰促進等事業(労災病院の設置、義肢等補装具の支給、アフターケア等)や、保険給付の上乗せとして支給される特別支給金(休業特別支給金など)の付帯事業があります。

雇用保険二事業

雇用保険二事業は、保険本体に付随した雇用安定事業(失業の予防、雇用機会の増大)と能力開発事業(職業訓練の実施、助成金の支給)の2つで構成されます。これらは労働者の雇用環境の改善に充てられ、財源は事業主が全額負担する保険料で賄われます。

医療機関は多職種が連携する現場であり、職員の針刺し事故や感染症罹患といった労働災害リスクが常に存在します。そのため、適正な労働保険の適用と管理は、経営上のコンプライアンスだけでなく、職員が安心して働ける環境を整える上で欠かせない要素となります。

本記事の内容は投稿時点の法令にもとづき要点のみを平易な表現で執筆しています。実務においては所轄の官公署にご相談のうえ、貴院の実情に応じて適切にご対応願います。なお弊社でもオンライン人事相談を実施中です。詳しくは弊社ホームページよりご確認ください。


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  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/医療労務コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

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