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101(事務手続)_労働基準

衛生管理者・産業医の選任報告手続き【歯科クリニック向け解説】

焦って書類を書く白衣の男性のイラスト

はじめに

歯科クリニックは、数人から十数人のスタッフで運営されているケースが多く、衛生管理者や産業医の選任が必要となることは、それほど多くありません。

しかし、クリニックのスタッフ数が増加すれば、その時点で選任の義務が生じます。

また、事業の規模に関わらず、すべての事業主には「安全配慮義務」が課されており、スタッフが安全かつ健康に働ける環境を整える責任があります。

この記事では、衛生管理者や産業医を選任・変更した時に行う「総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告」の手続きについて、歯科クリニックの実態に即してわかりやすく解説します。

将来的な規模拡大への備えや、日頃のスタッフの労働安全管理の参考としてお役立てください。

衛生管理者・産業医の選任の届出が必要になるケース

労働安全衛生法が定める安全衛生管理体制と選任報告

労働安全衛生法では、事業場の業種と労働者数に応じて、以下の通り安全衛生管理体制に関する責任者や担当者を選任するよう義務付けています。

  • 総括安全衛生管理者
  • 安全管理者
  • 衛生管理者
  • 産業医
  • 安全衛生推進者
  • 衛生推進者

このうち、「総括安全衛生管理者」「安全管理者」「衛生管理者」「産業医」の4つについては、選任または変更した際に、所轄の労働基準監督署へ報告するよう定められています。

2026年8月より、産業医については解任時の報告も義務付けられます。

歯科クリニックにおける安全衛生管理体制

歯科クリニックにおいて選任が義務付けられている安全衛生に関する責任者・担当者は、常時使用する労働者数によって以下のように異なります。

常時使用する労働者数選任が必要な担当者届出義務
50人以上衛生管理者・産業医あり
10人以上49人以下衛生推進者なし
10人未満選任義務なしなし

歯科クリニックにおける選任義務のまとめと安全配慮義務

多くの歯科クリニックはスタッフ数が50人未満であるため、産業医や衛生管理者の選任および届出義務が生じるケースは多くありません。

しかし、スタッフに対する安全配慮義務はすべての事業主に課されています。
選任義務がないからといって、スタッフの健康・安全管理について何もしなくてよいわけではありません。

スタッフが安心して働ける職場環境づくりは、クリニックの規模を問わず、すべての経営者に求められる重要な取り組みです。

労働安全管理体制の概要はこちら

総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告の手続き

提出期限

総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医を選任すべき事由が発生した日から、14日以内に提出します。

提出先

クリニックの所在地を管轄する労働基準監督署へ提出します。

なお、2025年から電子申請による届出が義務化されています。

届出様式

所定の「総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告」を使用します。

電子申請を行う場合は、以下のいずれかの方法で作成・提出します。

  • e-Gov電子申請を利用して届出する方法
  • 厚生労働省の「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」を利用して作成・届出する方法

いずれも電子署名や電子証明書の添付は不要ですが、届出には「e-Govアカウント」「GビズID」「Microsoftアカウント」のいずれかが必要です。

なお、電子申請が困難な場合は、当面の間、書面による報告も認められています。

様式は厚生労働省ホームページからダウンロードできるほか、上記の入力支援サービスを通じてオンライン上で作成・印刷することも可能です。

添付書類

選任した者が各資格要件を満たしていることを証明するため、以下の書類の写しを添付する必要があります。

総括安全衛生管理者添付書類なし
安全管理者所定の研修を修了したこと、または、安全管理者としての経験年数が2年以上であることを証明する書面(写し)
衛生管理者衛生管理者免許証の写し、または、資格を証明する書面(写し)
産業医医師免許証の写し、および、産業医に該当することを証明する書面(写し)

よくある質問

パートやアルバイトのスタッフも「常時使用する労働者数」に含まれますか?

はい、含まれます。パート・アルバイトだけでなく派遣スタッフなどの雇用形態にかかわらず、常態として使用しているすべての労働者が対象となります。

複数のクリニックを運営している場合、労働者数はクリニック単位で数えるのですか?それとも全クリニックの合計で判断しますか?

クリニック単位で計算します。 衛生管理者や産業医の選任義務は、法人単位ではなく「事業場(各クリニック)単位」で判定されるためです。
例えば、ある医療法人がスタッフ30人のAクリニックと25人のBクリニックを運営している場合、法人全体の合計は55人となりますが、それぞれの事業場は50人未満であるため、選任義務は生じません。

衛生管理者には第1種と第2種があると聞きましたが、歯科クリニックの場合はどちらの資格が必要ですか?

歯科クリニックは医療業に該当するため、「第1種衛生管理者免許」を持つ者を選任する必要があります。なお、歯科医師は資格要件を満たしているため、試験を受けなくても衛生管理者に選任することが可能です。

スタッフが50人未満でも、産業医を選任するメリットはありますか?

産業医の選任は義務ではありませんが、労働安全衛生法では50人未満の事業場に対しても、一定の知識を有する医師や保健師による健康管理を努力義務として定めています。専門家と連携できる体制を整えることで、スタッフのメンタルヘルスケアや健康診断後のフォローアップがより適切に行えるようになります。結果として、スタッフの安心感につながり、離職率の低下や定着率の向上といった経営上の大きなメリットも期待できます。

まとめ:歯科クリニックの労働安全衛生への取り組みのために

本記事では、歯科クリニックにおける衛生管理者・産業医の選任報告手続きについて解説しました。最後に要点を整理します。

  • 常時使用するスタッフ数が10人以上49人以下の場合は衛生推進者50人以上の場合は衛生管理者・産業医を選任する義務があります。10人未満の場合、選任義務はありません。
  • 衛生管理者・産業医を選任した場合は、事由発生から14日以内に所轄の労働基準監督署へ届け出る必要があります(衛生推進者は届出不要)。
  • 労働安全衛生法上の選任義務の有無にかかわらず、安全配慮義務はすべての事業主に課されています。選任義務がないことを、スタッフの健康・安全管理を怠る理由にはできない点に注意が必要です。
  • 将来的にスタッフ数が増加する見込みがある場合は、法制度を事前に把握しておくことがリスク管理の第一歩となります。

衛生管理者や産業医の選任義務の有無にかかわらず、スタッフが安心して長く働ける環境を整えることは、クリニックの採用力強化や離職防止にも直結します。

労務管理や労働安全対策についてご不安な点があれば、当事務所までお気軽にご相談ください。


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  • この記事を書いた人

福島智美/社会保険労務士(未登録)

慢性期病院やリハビリ病院で労務管理を担当。転職先で山口の部下となった縁で以後の行動を共にする。文学博士前期課程修了。親族に医療従事者多数。

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