
住民税の特別徴収とは?実は義務化されている手続きを徹底解説
歯科クリニックの院長先生にとって、日常の診療はもちろん、スタッフマネジメント、経営判断など、やるべき業務は山積みです。
その中でも特に頭を悩ませるのが、煩雑な事務手続きではないでしょうか。
特に、毎月の給与計算は避けて通れない重要な業務です。
給与からは健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、所得税など様々な保険料や税金を天引きしますが、個人住民税(都道府県民税および市区町村民税)もその一つです。
「住民税の特別徴収って何?」「普通徴収との違いがよく分からない」そんな疑問をお持ちの院長先生も多いのではないでしょうか。
実は、個人住民税の特別徴収は法律で義務化されており、適切な対応が求められています。
この記事では、歯科クリニック経営者が知っておくべき住民税の特別徴収について、基礎知識から実務のポイントまで分かりやすく解説します。
住民税の「特別徴収」と「普通徴収」の違い:なぜ特別徴収が義務なのか?
特別徴収と普通徴収
住民税の納付方法には、大きく分けて「特別徴収」と「普通徴収」の2種類があります。
- 特別徴収
事業主が従業員の月々の給与から住民税を天引きし、従業員に代わって市町村に納付する制度です。 - 普通徴収
普通徴収とは、従業員個人が直接市町村に住民税を納付する方法です。
特別徴収は法的義務です
地方税法の規定により、原則として所得税を源泉徴収している事業主は、特別徴収義務者として従業員の個人住民税を特別徴収しなければなりません。
つまり、歯科衛生士や歯科助手、受付スタッフなどの給与から所得税を天引きしている歯科クリニックは、住民税についても特別徴収を行う義務があります。
特別徴収を行うと、事業主には住民税の天引きや納付などの事務負担が生じますが、スタッフにとっては納付1回当たりの負担額が少なく、納付漏れの心配がないというメリットがあります。
特別徴収の年間スケジュールと具体的な事務手続き
住民税の特別徴収は、年間を通して事務手続きが発生します。主な流れを確認しておきましょう。
1月:給与支払報告書の提出
前年中に給与を支払った全てのスタッフについて、給与支払報告書を各市町村に提出します。
- 提出期限:毎年1月31日
- 提出先:各スタッフの1月1日現在の住所地の市町村
この報告書に基づき、市区町村が一人ひとりの住民税額を計算します。
5月:特別徴収税額決定通知書の受領・確認
各市町村から、スタッフごとの年税額と月割額が記載された特別徴収税額決定通知書が届きます。
なお、税額決定通知書は特別徴収義務者用(クリニック用)と納税義務者用(スタッフ用)に分かれています。
納税義務者用は必ずスタッフに交付しましょう。
6月~翌年5月:毎月の住民税徴収・納付
特別徴収税額決定通知書に基づいて、毎月の給与から住民税を天引きし、各市町村に納付します。
- 徴収時期:毎月の給与支給時
- 納付期限:徴収した月の翌月10日まで
随時:スタッフの入退職・休職等の手続き
スタッフの異動(退職・休職、採用・復職など)があった場合は、下記の手続きを行います。
給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書
- 対象:退職・休職などで給与の支払いを受けなくなったスタッフ
- 提出時期:退職・休職等で給与支払いがなくなった月の翌月10日まで
特別徴収への切替依頼(申請/届出)書
- 対象:採用・復職し普通徴収から特別徴収への切り替えを希望するスタッフ
- 提出時期:随時
これらの手続きは、市町村によって届出書の様式や提出時期、手続き方法が異なる場合があります。
詳細は各市町村の担当部署へご確認ください。
実務で押さえるべき3つのポイント
パート・アルバイトや非常勤医師への対応
歯科クリニックでは、パートの歯科衛生士・助手を雇用したり、非常勤の歯科医師に診療を依頼することも多いでしょう。
そのようなスタッフが以下に該当する場合、市区町村によっては普通徴収が認められることがあります。
- 給与の支払いがない月がある
- 給与額が少なく住民税を引ききれない
- 源泉所得税の乙欄適用者である
納期の特例で事務負担を軽減
従業員数が常時10人未満の場合には、納付回数が年12回から年2回となる納期の特例制度を利用できます。
具体的な手続き方法については、各市町村にご確認ください。
退職者の住民税の取扱い
退職者の未徴収分の住民税については、以下の3つから選択します。
- 普通徴収への切替:6月~12月退職者が対象
- 一括徴収:1月~4月退職者は原則必須、6月~12月退職者は本人希望時
- 特別徴収継続:転職先が決まっている場合
いずれの方法を選択するか、退職時にスタッフ本人へ確認しましょう。
複雑な労務管理業務は専門家にお任せください
住民税の特別徴収について解説してきましたが、年間を通じてさまざまな手続きがあり、きめ細かい対応が求められることがお分かりいただけたと思います。
住民税の特別徴収をはじめとする給与計算や社会保険手続きといった労務管理業務は、正確な知識と細やかな対応が求められます。
これらの業務を院長先生ご自身で行うことは、貴重な時間と労力の消費につながります。
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