傷病手当金の概要
休業した時の生活保障
傷病手当金は、被保険者が私傷病により休業を余儀なくされた時の生活保障として、健康保険から給付されるものである。制度の目的は労災保険の休業(補償)給付とほぼ同じだが、休業(補償)給付が労災による傷病を、傷病手当金は私傷病を対象としている点が異なる。
傷病手当金の支給額
傷病手当金は、休業した日ごとに給付される。支給額は支給日の直近12ヶ月間の平均標準報酬月額を30日で日割り換算した額の2/3である。労災保険の休業(補償)給付が平均賃金の6割程度であることを考えると、両制度で概ね同一水準の給付を行うことになっている。
労災保険は労働者を対象としているため、賃金ベースで計算するが、健康保険は被保険者(役員含む)に対する給付なので、報酬額をもとに給付額を算定する。
傷病手当金の給付期間
傷病手当金は、給付開始から通算して1年6ヶ月間給付される。通算して1年6ヶ月間なので、いったん復職して傷病手当金の給付が停止しても、再び休業状態になれば1年6ヶ月のうち残りの期間部分の傷病手当金の給付が再開される(公休日も給付される)。
傷病手当金の給付要件
傷病手当金は、次の3つの要件を満たす場合に給付される。
- 私傷病による療養のために休業すること
- 労務不能な状態であること(一部労務不能も可)
- 連続3日間の待機期間を経過していること
傷病手当金に関連した制度
他の給付金との調整
傷病手当金を受給できる時に、同時に出産手当金や労災保険の休業(補償)給付、あるいは勤務先から休業手当として給与が支給される場合、傷病手当金は他の全てに劣後して給付停止される。ただし傷病手当金の金額の方が大きい場合は、差額が給付される。
退職したらどうなるか?
傷病手当金を受給している被保険者が退職した場合は、原則として給付が打ち切られるが、退職日までに引き続き1年以上、健康保険に加入しており、なおかつすでに傷病手当金が給付されている場合は、退職後も給付期間(1年6ヶ月)の残りの傷病手当金を受給できる。
他の公的医療保険での取り扱い
本記事では健康保険を中心に解説しているが、他の医療保険(国民健康保険、後期高齢者医療制度)の場合、傷病手当金は任意給付となっている。任意給付とは、原則給付なし、例外として保険者(市町村、広域連合)の条例より給付可能いう意味である。
休業(補償)給付との違い
労災保険の休業(補償)給付との相違は上表のとおり。大きな相違点として、傷病手当金は通算して1年6ヶ月間で給付打ち切りとなるが、休業(補償)給付は休業状態が解消しない限り給付継続される。また実務においては待機期間の”連続”3日と”通算”3日の違いに注意。
傷病手当金のまとめ
被扶養者には給付されない
被保険者と被扶養者に対する健康保険の保険給付は原則として同じ内容だが、傷病手当金と出産手当金については、被扶養者は給付対象外となっている。これはそもそも被保険者に扶養されているのだから、休業中の生活保障は不要であるという制度上の考え方による。
おすすめの書籍
本書は従業員からもっとも質問が多く寄せられそうな傷病手当金と高額療養費を重点的にとりあげており、人事部マターというより、店長たる者の社会常識として、ぜひ一読しておきたい。ちなみに筆者は小売業経営が得意だが、こちらの著者は福祉系に強い社労士さん。
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