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03_賃金計算

給与計算の会計仕訳

2024年12月14日

給与計算の会計仕訳アイキャッチ

給与計算の会計仕訳の流れ

主な解説ポイント

通常は、人事部が給与計算を行い、経理部が給与振込と会計仕訳を行うのが理想である。その理由は、各業務を担当部門が専門に取り扱うことで組織効率を高められるからだが、分業体制を敷いて相互にチェックし合うことで、内部不正を防止するためでもある。

しかし、中小企業ではマンパワー不足から、管理部が人事も経理も一手に担っているケースは珍しくない。そこで本記事では、経理の領域に一歩踏み込み、日商簿記3級レベルを想定して、給与計算から年末調整までの一連の基礎的な会計仕訳のやり方を解説する。

解説にあたっての与件

読者の理解を容易にするために、可能な限りシンプルな事例で会計仕訳のやり方を解説したい。そこで次の与件をもとに、会計仕訳の基本パターンを例示する。

・マイカー通勤手当を計上する際は、課税区分ごとに別々に仕訳する。
・給与費は補助科目で固定給と変動給に分けることが一般的である。
・役員は事前確定届出給与のみ費用計上可能(賞与費に利益処分は含めない)。
・介護保険料は解説を割愛する(健康保険料と一緒にしても構わない)。

給与計算の会計仕訳パターン

給与費の計上と給与の支給

仕訳例の給与はX年2月度分で、一般的な月給制の月末〆切・同月25日支給である。社会保険料のうち、被用者負担分は翌月の給与から控除するルールとなっている。今回は省略したが、固定給は当月支給、変動給は翌月支給となる点にも注意が必要である。

本記事では、スペースの都合上、会計仕訳の補助科目名について、右の略称で表記させていただいた。若干見づらいと思われるが、ご容赦願いたい。

<補助科目名の略称>
・健保料(健康保険料)
・厚保料(厚生年金保険料)
・子拠金(子供子育拠出金)
・雇保料(雇用保険料)
・所得税(源泉所得税)
・住民税(個人住民税)

法定福利費の計上

期間損益の原則により、法定福利費は当月に計上する。ただし納付は翌月末なので、未払費用としておく。

社会保険料の納付

納付する社会保険料は、X年1月度給与のものである点に注目。法定福利費(事業主負担分)はX年1月25日に計上済だが、預り金(被用者負担分)は2月25日の給与で控除する。

諸税の納付

源泉所得税と個人住民税は、当月の給与から控除し、翌月の10日までに納付する。

賞与を支給する場合

賞与を支給する場合は、社会保険料と源泉所得税の計算方法が、通常の月例給与の場合と異なるだけで、会計仕訳のパターンは給与と同一である。社会保険料と源泉所得税の納付にかかる仕訳も同じなので、解説を割愛する。

年末調整の処理

年末調整の与件

年末調整の仕組みは、別の記事で紹介しているので、そちらをご参照願いたい。

さて、参照記事を読んで頂いたという前提で、徴収済税額と年調年税額および還付金を左図のとおり設定した。

本記事では、この還付金をどう仕訳するかについて解説する。

還付金の支払方法

還付金は、多く控除しすぎた源泉所得税を返還するものなので、預り金を逆仕訳する。電卓で、X年12月の所得税と相殺してから計上しても良さそうだが、正確な還付額を会計帳簿に残すために、あえて両立てで記帳する。

還付金と源泉税の相殺

還付金と源泉税のそれぞれの預り金の相殺は、納税時に行う。一度に相殺しきれなかった場合は、翌月の納税時に繰り越して行う。源泉所得税の納付書にも、相殺額を記載する欄がきちんと設けられている。

給与計算の会計仕訳のまとめ

雇用保険は別記事で紹介

雑駁ではあったが、給与計算から年末調整までの一連の基礎的な会計仕訳について解説した。なお雇用保険については、労働保険の年度更新や延納などの複雑な処理が発生するため、別の記事で詳しく解説する。

おすすめの書籍

小規模事業では、管理部門の責任者が、給与計算と会計仕訳を一緒に行うケースは珍しくない。最近はfreeeやマネーフォワードなど、簿記の知識がなくても手軽に会計記帳できるアプリもあるが、適切な損益コントロールには最低でも簿記3級程度の基礎知識を養っておきたい。


  • この記事を書いた人

山口光博

RWC合同会社/社労士事務所代表。社会保険労務士、日商販売士1級、建設業経理士1級ほか。コンビニ店長やスーパーの販売課長を経て、三十路で人事畑に転身。事業再生法人や上場準備企業で人事制度の再建に携わった後に起業。

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