年末調整とは?
年末に所得税を確定する
月々の給与から控除されている源泉所得税は概算額である。年末調整とは、源泉所得税の確定額を計算し、概算額との差額を清算(調整)する作業をいう。年末調整の詳細は国税庁のHPに記載されているが、本記事はポイントのみ簡潔に解説する。
課税の基本ルール
税金は、収入から経費を差し引いて残った儲けに対して、課税するのが基本ルールである。これは法人税も所得税も同じ考え方であり、サラリーマンの源泉所得税の計算においても、給与総支給額から経費見合いの額を控除できる。
年末調整の手順
年末調整の事前準備
✅️年末調整対象者の確認
年末調整の対象者は、主に次の条件を満たす者である。
- 12/31時点で在籍が見込まれる者
- 給与総支給額が2,000万円以下〜103万円超の者
- 扶養控除申告書を提出している者
✅️控除申告書の配布と回収
国税庁HPから次の申告書を印刷して、11月中旬頃に年末調整の対象となる従業員に配布する。必要事項の記入および所定の証憑を貼付してもらった上で、遅くとも12月初旬に回収し、12月の給与計算作業に入る前に、回収した申告書の不備をチェックする。
- 扶養控除等(異動)申告書
- 基礎控除申告書、配偶者控除等(兼定額減税)申告書及び所得金額調整控除申告書
- 保険料控除申告書
- 住宅借入金特別控除申告書
年末調整①(課税所得の計算)
✅️総支給額の確定
12月度の給与計算を行い、年間の給与と賞与の総支給額を確定する。年末調整は、総支給額から、経費見合いの額を順次控除してゆき、残額に税率を乗じて年税額を確定し、これまで給与から控除した概算額と相殺する流れとなる。
✅️給与所得控除
給与所得控除とは、サラリーマンの経費見合いの額であり、「給与所得控除後の金額の算出表」に、総支給額ごとの給与所得控除の額が決められている。厳密には「総支給額から”給与所得控除”を控除する…」という表現が正しい。
令和6年分年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表
✅️各種控除
総支給額から”給与所得控除”を控除した後に、これまで控除した社会保険料を差し引き、各従業員から回収した各種控除申告書にもとづき控除を行い、課税給与所得金額を算出する。
年末調整②(所得税額の計算)
✅️所得税額の計算
前述の課税給与所得金額を「算出所得税額の速算表」にあてはめて、所定の税率を乗じ、さらに税率ごとに決められた控除額を差し引いて、所得税額を算出する。
✅️定額減税他
所得税額から、定額減税(年調減税)分と住宅借入金控除の額を差し引き、年調所得税額を算出する。
✅️復興税の課税と年税額の確定
年調所得税額に復興特別所得税分として、102.1%を乗じ、年調年税額を確定する。この年調年税額こそ、当年度に本来納付すべき源泉所得税の額である。
年末調整③(概算額との相殺)
✅️12月の給与計算において、これまでに控除した源泉所得税の概算額と、確定した年調年税額を相殺する。確定額より概算額が大きければ還付を、また少なければ追納処理を行う。
法定調書の作成と提出
✅️年末調整が終わったら、翌年の1月末までに、税務署に給与所得の源泉徴収票(一定の所得を超える者のみ)、市町村役場には給与支払報告書を提出する。
年末調整のまとめ
3つの大まかな流れを理解する
国税庁の「年末調整のしかた」の内容は、詳細かつボリュームがあるため、年末調整の全体像を把握するのに一苦労だが、店長クラスであれば、①課税所得を計算し→②所得税額を計算し→③概算額と確定額を相殺する、という3つの流れを押さえておけば問題ない。
令和6年分 年末調整のしかた / 令和6年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引(国税庁)
おすすめの書籍
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