概算労働保険料の納付
この表は、概算労働保険料と、延納時の各期の納付額を計算したものである。この表の事例をもとに、労働保険の年度更新と、概算労働保険料および延納額の計算方法を解説してゆく。
労働保険の年度更新
労働保険料の会計仕訳を苦手とする担当者は少なくない。原因は労働保険特有の保険料計算と納付方法にある。労働保険はいったん当期(4月〜翌3月)分の概算額を納付しておき、1年後に確定額と相殺するという、他の社会保険料とは大きく異なる方法を採っている。
賃金総額の計算方法
概算労働保険料は、当年度の賃金総額の見込み額に雇用保険料率と労災保険料率を乗じて計算する。ただし当年度の賃金総額の見込額が、前年度の賃金総額の2倍超もしくは1/2未満の場合は、前年度の賃金総額を用いて概算労働保険料を計算するルールとなっている。
労働保険料の延納
概算労働保険料は、3回に分けて分納できる。労働保険徴収法では、これを延納と呼ぶが、各回の納期は上表のとおりである。また3分割により生じた端数は、第1回目の納付額で調整する。なお確定保険料については、延納は認められないので注意すること。
確定労働保険料の計算
これは別記事「給与計算の会計仕訳」の事例を踏襲して、確定労働保険料の元となる支払賃金および法定福利費の内訳を示したものである。また下記は同記事内の「給与費の計上と給与の支給」の会計仕訳である。
法定福利費の計上
前期の賃金総額を580万円、当期の賃金総額を600万円として、労働保険料の会計仕訳を解説する。過去の記事では雇用保険料の被用者負担分の計上方法にしか触れなかったが、労働保険料も社会保険料同様に、給与や賞与を支給する都度、法定福利費を計上する。
仮払金との相殺
預り金で計上した雇用保険料の被用者負担分と、未払費用で計上した法定福利費を、概算保険料と相殺する。概算保険料は延納ごとに仮払金で処理しておくが、相殺する時は、預り金と未払費用の合計額を仮払金とする(仮払金がマイナス残高になることもある。
本来は、預り金・未払費用と仮払金を毎月相殺し、仮払金と相殺しきれなかった残額を、預り金と未払費用のまま残しておくが、預り金と未払費用の按分など、計算が煩雑になるため、金額が僅少であれば、仮払金の残高がマイナスのまま、次回延納まで放置しても構わない。
労働保険料の確定申告
この表は、当年度の確定保険料の額を計算したものと、確定申告時の概算保険料と確定保険料の相殺を表したものである。前項の賃金表の仮払金残高(マイナス残高)と本表の追納額に注目して、解説を読み進めると理解しやすい。
概算保険料との差額清算
労働保険は毎年6月に確定申告を行う。確定申告では、概算保険料と確定保険料の差額を清算するが、概算保険料が不足していた場合は、都道府県労働局の歳入徴収官から送付された納付書により追納する。逆に多く納付していた場合は、資金前渡官吏に還付請求できる。
一時勘定の残高をクリアする
給与支給表の仮払金残高と確定した保険料の追納額は一致するので、仮払金残高(マイナス残高)と追納額(現金預金)を相殺仕訳すれば、預り金と未払費用および仮払金の残高はゼロになる。変則的な処理だが、マイナス残高が少額で、単年度内でクリアになるなら問題ない。
労働保険料の会計仕訳のまとめ
論点ごとに丁寧に処理する
もし労働保険料の元帳残高がカオスになっているのなら、複数年度を一緒くたにして処理してしまっているのが要因である。正確な会計記帳のポイントは、補助科目もしくは摘要欄に、何年度分の保険料なのか、預り金や未払費用および仮払金にも明記して仕訳することである。
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