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02_労働安全衛生

ストレスチェックテスト

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ストレスチェックテストの概要

ストレスチェックテストの目的

ストレスチェックテストは仕事や職場に関する精神的ストレス度を測る検査であり、①心理的負担の原因(自分の仕事の状況)、②心身の自覚症状(最近1ヶ月間の状況)、③上司や同僚からの支援(周囲の人間関係の状況)の3分野について、合計57項目の質問から構成されている。

そしてストレスチェックテストは労働者のメンタル不調の予防、ストレスチェックテストの診断結果により作成された集団分析データを活用した職場環境の改善、また高ストレス判定を受けた労働者に対する健康保持のための措置を講じることを目的としている。

ストレスチェックテストの対象

労働安全衛生法は常時50人以上の労働者を使用する事業場に対し、年1回以上のストレスチェックテストの実施を義務付けている。事業場とは店舗などの場所単位での営業拠点をいい、労働者が50人未満の事業場についてはストレスチェックテストの実施は努力義務となっている。

ストレスチェックテストの被験者となる労働者は、正社員および週の所定労働時間が正社員の3/4以上の短時間労働者である。ただしストレスチェックテストを受験するかどうかはあくまでも労働者の任意であり、使用者が受験を強要することはできない。

従業員50人未満の店舗であっても、他の系列店でストレスチェックテストを実施する場合には、小型店舗も含めて全店一律に実施するのが一般的である。

ストレスチェックテストの実施

通常は検査機関に委託する

通常は社外のストレスチェックテストの実施機関(検査機関)に委託するケースが多い。検査機関によって、ストレスチェックテストを紙媒体と郵送で行う場合もあれば、スマホアプリを利用して診断結果の通知まで全てペーパーレスで完結させてしまうサービスもある。

なお次項で解説するように、使用者はストレスチェックテストの内容を知ることができない。よってコンプライアンス違反や労使トラブルのリスクを考えると、できるだけ検査にかかる事務を社外の検査機関に丸ごと委託してしまうのが賢明ではないかと思われる。

実施方法の例

実施の大まかな流れとしては、自社のニーズに合った検査機関を選定し、業務委託契約を締結した上で、ストレスチェックテストの実施計画を策定する。そして対象となる従業員に日程や受験方法を案内し、期限内に受験してもらうというのが一般的だろう。

<ストレスチェックテストの実施方法(例)>
①検査機関をいくつかピックアップし、サービスの内容や費用を確認する
②衛生委員会において自社に適した検査機関を選定し業務委託契約を締結する
③検査機関を交えて自社におけるストレスチェックテストの実施計画を策定する
④ストレスチェックテストを実施する日程および実施方法について従業員に案内する
⑤対象となる従業員にストレスチェックテスト用紙を配布する
⑥受験を希望する従業員は、実施期間内にストレスチェックテストを回答し、所定の方法で回答用紙を提出する
⑦検査機関にて個々の従業員のストレス診断および職場単位での集団分析を行う
⑧個人別の診断結果は検査機関から被験者本人に直接通知され、集団分析の結果は事業主宛に送付される

実施に際しての注意事項

使用者は回答内容や診断結果を閲覧できない

ストレスチェックテストの被験者が、ストレスチェックテストの結果によって人事評価や人事異動において不利益を被る恐れがあるため、労働安全衛生法では、使用者が個々の労働者のストレスチェックテストの回答内容や診断結果を閲覧することを禁止している。

例えば紙媒体のストレスチェックテスト・サービスを利用する際は、回答用紙を被験者から検査機関に直接提出してもらうか、店舗ごとに検査機関に提出するのであれば、被験者自ら回答用紙を封緘した上で、総務担当者が取りまとめて検査機関に発送することになる。

高ストレス者に対する措置

ストレスチェックテストの結果、高ストレスと判定された労働者が希望した場合は、使用者は遅滞なく医師の面接指導を受けさせる義務がある。また検査機関の医師や保健師は、高ストレスと判定された労働者に対し、面接指導を受診するよう勧奨できる。

使用者は面接指導の結果について医師から意見を聴取し、その内容について衛生委員会で報告を行い、医師の意見を勘案しつつ、必要に応じてその労働者の就業場所や作業内容を変更したり、労働時間を短縮するなど、健康保持のための措置を講じる義務がある。

所轄労働基準監督署への報告

ストレスチェックテストの実施義務のある事業場は、ストレスチェックテストの実施結果を所轄の労働基準監督署に報告しなければならない。また高ストレスの労働者が医師の面接指導を受けた場合は、事業主はその面接指導の記録を5年間保存する義務もある。

費用負担と受験時間等の取り扱い

ストレスチェックテストは、労働安全衛生法によって事業主に実施が義務付けられているので、実施にかかる費用は全て事業主が負担しなければならない。ただしストレスチェックを受験している時間や医師の面接指導を受診している時間は、勤務時間外として差し支えない。

精神疾患と労災認定の状況

厚生労働省の「令和5年度 過労死等の労災補償状況」の別添資料2「精神障害に関する事案の労災補償状況」によると、令和元年から令和5年にかけて、精神障害にもとづく労災認定請求件数が1.5倍に増加している。

厚生労働省 令和5年の過労死等の労災補償状況 別添資料2より転載

この状況を受けて、令和5年9月に労働者災害補償保険法の精神疾患による労災認定基準が改正されたが、従来のパワハラやセクハラに加えて、新たにカスハラ(カスタマーハラスメント)による労災認定基準が追加されたので、小売業者であれば内容を一読しておきたい。

なお精神疾患による労災の認定は、従来よりハラスメントの程度によって「強・中・弱」の3段階によって判定されることになっているが、中程度のハラスメントであっても、使用者が黙認していたり、放置していた場合には「強」として判定される点に留意すべきである。

ストレスチェックテストのまとめ

昨今の日本は株価だけが回復したものの、家計消費支出や平均賃金などは依然として低水準にとどまっており、多くの労働者にとって好況感とは程遠い状況となっている。こういった閉塞感が多くの職場のハラスメントやメンタル不調となって顕在化しているという意見もある。

事業主や使用者は、ストレスチェックテストを通して個々の労働者のメンタルヘルスのケアに努めるだけでなく、集団分析結果などを踏まえて報酬制度や人事評価制度、社員教育プログラムの見直しなど、人事制度からのアプローチも検討してみてはいかがだろうか。

 

  • この記事を書いた人

山口光博

コンビニやスーパーの販売職を経て三十路を機に人事業界に転身。20年以上にわたり人事部門で勤務先の人事制度改革に携わった後に起業。社会保険労務士試験合格。日商販売士1級、建設業経理士1級、FP技能士2級など多数取得。

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