労働基準法の特徴
労働基準法には強制力と罰則がある
労働基準法は、事業主が労働者を使用する際の禁止事項や守るべきルールを定めたものであり、事業主と使用者に対して義務と責任を負わせるものである。もともと民法から独立分離した特別法だが、民法と違って行政取締法規としての強制力を有している。
したがって労使が合意した労働契約であっても、労働基準法に違反している場合は無効となり、悪質な違反の場合は、事業主(法人・個人事業主)や使用者(経営者や管理職)に対して、厳しい刑罰(懲役刑や罰金刑)が科されることもある。
労働基準法が適用される事業や労働者とは?
労働基準法は、同居の親族のみで経営している個人事業を除き、業種や事業の規模を問わず、労働者を1人でも使用する全ての事業に対して適用される。また日本国内で就労している労働者であれば、雇用身分や年齢、性別、国籍を問わず、労働基準法で保護される。
なお取締役(委任契約)は労働者には該当しないが、執行役員(労働契約)は労働者になる。また店長や売場チーフなどは、会社との関係では労働者だが、部下(一般職やパート・アルバイト)との関係では使用者になるので、不用意な言動に注意すべきである。
労働基準法の概要
7つの基本原則
労働基準法の第1章は、労働基準法の7つの基本原則から始まる。これらは労働基準法に限定されず、あらゆる労働法令の基本ポリシーとなるものである。
- 労働条件は労働者が人間らしく生活できる内容とすること
- 労働条件は労働者と使用者が対等の立場によって決めること
- 国籍、信仰、思想、社会的身分による労働条件の差別を禁ずる
- 性別による給与条件の差別を禁ずる
- 暴行や監禁、脅迫による強制労働を禁ずる
- 労働者の給与をピンハネする行為を禁ずる
- 勤務中の公民権行使の権利を保障すること
第2章以後の条項
第2章から第13章までは次の内容となっている。これらの詳細は、別の記事であらためて詳しく解説してゆきたい。
第2章 労働契約
第3章 賃金
第4章 労働時間・休憩・休日・有給休暇
第5章 安全および衛生
第6章 年少者
第6章の2 妊産婦等
第7章 技能者の育成
第8章 災害補償
第9章 就業規則
第10章 寄宿舎
第11章 監督機関
第12章 雑則
第13章 罰則
労働基準法のまとめ
法律を知らなかった…では許されない
伝統ある老舗企業だろうと、経営者にどれほどの強い想いがあろうと、またどのような職場固有の事情があろうと、人事においては労働基準法が全てのルールに優先して適用される。また日本では法の不知(法律を知らなかった)による違法行為は許されない。
店長や売場チーフには常識の法令
労働基準法には、事業主と使用者が守るべき最低限の原理原則が記載されているだけであり、労働基準法の内容を補完するものとして、男女雇用機会均等法、労働契約法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法などがある。
経営者や店長クラスは当然として、売場チーフなどパート・アルバイトに対して指揮命令権を有する立場にある者は、労働基準法をはじめとする労働関係法令をしっかりと勉強し、特に自分の業種や業態に関係する内容を、きちんと理解しておく義務がある。
おすすめの書籍
令和6年に労働基準法において、労働者を雇い入れる際の労働条件通知書に記載すべき事項をはじめ、多くの小売店の人事管理に直接影響するような改正がいくつかあった。本記事にあるように、法の不知は許されないので、店長クラスであれば実務書で予習しておきたい。
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