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01_雇用管理

労働基準法の概要

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労働基準法の特徴

労働基準法は、戦前の強制労働の反省から、日本国憲法の基本的人権の理念を踏まえつつ、民法の雇用契約に関する条項を拡充させて昭和22年に施行された。現在は労働安全衛生法、労働契約法、最低賃金法、労働者災害補償保険法などと相互補完的に運用されている。

労働基準法の特徴は、行政取締法規として強制力をもっていること。民法は「私的自治(個人の契約に国家は関与しない)」と「契約自由(契約内容は当事者の任意による)」を原則としているが、労働基準法に抵触する労働契約は、当事者同士が合意していても無効となる。

そして労働基準法のもうひとつの特徴は、事業主や使用者に対して、労働者を使用する際の義務と責任を課した法令であること。これら義務と責任は、本法たる労働基準法にて原理原則を、附則たる労働基準法施行規則において実務上の具体的な決まり事を明示している。

労働基準法の適用対象

労働基準法の適用事業場

労働基準法は、事業の種類や人員の規模に関係なく、労働者を1人でも使用する全ての事業場に対して適用される。例外は同居の親族のみで経営している個人商店などだが、親族以外の労働者(例えば短期の学生アルバイト)などを雇えば、労働基準法の適用事業場となる。

労働基準法の対象となる労働者

労働基準法に規定する労働者は、日本国内の事業場で就労する全ての労働者である。学生アルバイトや派遣労働者、定年再雇用の嘱託社員、さらに不法就労の外国人までも、労働基準法で保護される。労働契約書の有無は関係なく、使用されている実態があれば労働者となる。

なお中間管理職は事業主との関係では労働者になるが、部下との関係では使用者にもなる。また役員のうち取締役(委任契約)は、原則として労働者に該当しないが、執行役員(労働契約)については労働者に該当する。

労働基準法の内容

第1章 労働基準法の7原則

第1章には、労働基準法のポリシーとなる7つの原則が明記されている。この7原則は労働基準法に限定されず、あらゆる労働法令の基本原則となる考え方である。

  1. 労働条件は労働者が人間らしく生活できる内容とすること
  2. 労働条件は労働者と使用者が対等の立場によって決めること
  3. 国籍、信仰、思想、社会的身分による労働条件の差別を禁ずる
  4. 性別による給与条件の差別を禁ずる
  5. 暴行や監禁、脅迫による強制労働を禁ずる
  6. 労働者の給与をピンハネする行為を禁ずる
  7. 勤務中の公民権行使の権利を保障すること

第2章 労働契約

第2章 労働契約は、有期労働契約の上限、契約内容の禁止事項、労働条件の明示義務について定めている。なお労働契約を締結する際の基本的なルールは労働契約法に、明示すべき具体的な労働条件は労働基準法施行規則に、それぞれ記載されている。

第3章 賃金

第3章 賃金は、賃金支払5原則、平均賃金の計算方法、最低賃金の支払義務を明記している。平均賃金は①年次有給休暇、②休業手当、③労災による休業補償、④減給制裁、⑤解雇予告手当の算定に用いる。なお最低賃金の額は、最低賃金法の定めによる。

第4章 労働時間、休憩、休日、有給休暇

第4章は、法定労働時間、法定休日、休憩、時間外労働、休日労働、深夜労働、年次有給休暇、裁量労働時間制、変形労働時間制などについて規定しており、勤怠管理に関するルールが集約されている。労働基準法の中でも特に使用者が把握しておくべき重要な章である。

第5章 安全及び衛生

第5章 安全及び衛生に関する条項は、現在は労働安全衛生法に移行している。労働安全衛生法は、労働基準法の第5章をより充実、強化させて、昭和47年に分離独立した法令であり、労働者の定義など、基本的な考え方は労働基準法とほぼ同一となっている。

第6章 年少者

年少者とは満18歳未満の未成年者をいう。かつては満18歳未満を年少者、満20歳未満を未成年者といったが、民法改正によって成人年齢が引き下げられたため、現在は年少者=未成年者である。第6章では年少者を使用する際の遵守事項や禁止事項が定められている。

第6章の2 妊産婦等

妊産婦とは妊娠中の女性および産後1年を経過しない女性をいい、一般的な女性に比べて特別の母性保護措置が必要であることから、この章では妊産婦の就業を禁止する業務や就業時間を制限すべき期間、さらに育児時間や生理休暇などについて規定している。

第7章 技能者の育成

修行や見習いと称して、使用者が労働者を劣悪な条件で酷使したり、労働契約とは何ら関係のない私用を押し付けたりするような、前時代的な徒弟制度を禁止している。近代法治国家においては、弟子や見習いも労働者であり、労働基準法によって保護されるべきものである。

第8章 災害補償

第8章では、労災事故により療養を要したり、休業を余儀なくされている労働者に対し、事業主が経済的補償を行う義務を定めている。なお制度上は、全ての事業主を労災保険制度に強制加入させた上で、まず労災保険が事業主の災害補償義務を代行することになっている。

第9章 就業規則

第9章は就業規則に定める内容と届出の手続きについて規定している。常時10人以上の労働者を使用する事業場には就業規則の作成義務があるが、10人未満の事業場であっても、使用者が労働者に業務命令権を行使したり、懲戒処分を行ったりするには、就業規則が必要である。

第10章 寄宿舎

寄宿舎とは社員寮のことであり、第10章では寄宿舎の管理や運営に関するルールを定めている。この章の趣旨は、事業主や使用者が、寮生活の規律維持や親睦等の名目で、入寮者の私生活に不当に介入したり、干渉したりすることを禁止するものである。

第11章 監督機関

第11章 監督機関は、労働法令を所管する官公署(厚生労働大臣、厚生省労働基準局長、都道府県労働基準局長、労働基準監督署長等)の役割や権限などについて規定している。ちなみに労働基準監督官は、司法警察として労働法令違反に対する捜査権と逮捕権を有している。

第12章 雑則

第12章 雑則は、労働法令および就業規則を全ての労働者に周知する義務、労働者名簿と賃金台帳を作成して一定期間保存する義務、未払賃金や退職金などの請求権の時効などを定めている(なお労働関係書類の法定保存期間は原則5年、当面3年となっている)。

第13章 罰則

労働基準法は行政取締法規なので、違反者に対して懲役刑や罰金刑などの厳しい罰則(例;強制労働違反=10年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金)が科される。また労働法令は両罰規定といって、違反した使用者のみならず事業主も同時に処罰されるのが特徴である。

労働基準法のまとめ

歴史や伝統のある老舗企業だろうと、また経営者にどれほど特別な想い入れがあろうとも、あるいは職場固有の特殊な事情があろうとも、人事マネジメントにおいては、労働基準法などの労働法令が全てに優先されることを、使用者はよく理解しておくべきである。

また成熟した法治国家では法の不知は救済されない(=法律を知らなかったという言い訳は通用しない)。ゆえに使用者の立場にある者(経営者や管理職は当然として、パートやアルバイトを監督する一般職も含む)が、労働基準法を熟知しておくことはもはや常識である。

 

  • この記事を書いた人

山口光博

コンビニの店長やスーパーの販売課長を経て、31歳の時に管理畑に転職する。以後、20年以上にわたってあらゆる人事マネジメントの実務に携わる。上場準備企業の人事部長として人事制度改革を担当した後に独立、現在に至る。

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