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99_その他雑記

社労士合格を目指す方へ ③結論=合格したきゃこれを読め!

2024年10月31日

社労士合格を目指す方へ

学習方法

社労士合格に必要な学習情報は、e-govなどから全てタダで入手できる。さらに最近は無料のWeb過去問サイトなども充実しているため、極論ではあるが、気合と根性さえあれば、受験料を除いて、一切お金をかけずに社労士試験に合格できる。

ただし、多くの受験生にとって、原文の法令を読み込んで受験勉強するのは、極めて効率が悪い。たとえば初学者が、労働安全衛生法の次の条文を読んで、何をいわんとしているかを、すぐ理解できるだろうか?

第五条二以上の建設業に属する事業の事業者が、一の場所において行われる当該事業の仕事を共同連帯して請け負つた場合においては、厚生労働省令で定めるところにより、そのうちの一人を代表者として定め、これを都道府県労働局長に届け出なければならない。
(中略)
4第一項に規定する場合においては、当該事業を同項又は第二項の代表者のみの事業と、当該代表者のみを当該事業の事業者と、当該事業の仕事に従事する労働者を当該代表者のみが使用する労働者とそれぞれみなして、この法律を適用する。

労働安全衛生法第5条より

これは複数の元請事業者が共同で建設工事を請け負うジョイントベンチャー(JV)に関する条文である。要するに複数の元請事業者が共同で工事を受注した時は、代表会社を決め、代表会社以外の労働者は、代表会社の労働者とみなして法令を適用するという意味。

このように原文ママの受験勉強は理解するのに効率が悪い。また毎年新しい論点が出題されるため、近年は10年分の過去問を解いて満点を取れる人でも、社労士試験に合格するのは難しいとさえ言われている。ゆえにある程度のお金をかけて、有料の教材に頼るのが賢明だ。

教材選び

主な有料教材には、①資格予備校への通学、②通信教育、③一般の書店で売られている教材を購入して独学する方法の3つがある。学習効果は①>②>③の順に大きく、その代わりコストも同じ順番に高くなる、というのが世間一般の認識だろう。

もちろんなるべくお金をかけずに合格したいのは誰でも同じ。筆者の場合は、1年目は通信教育、2年目は市販の教材を近所の書店で購入して、独学で合格した。あくまでも個人的経験にもとづく感想だが、期限の制約さえ無ければ、社労士合格は市販の教材だけで充分にいける。

ただし市販の教材だけで合格できるとはいえ、社労士試験の場合は、ただ基本テキストと問題集を買っただけでは合格できない。そこで筆者が推奨する教材の組み合わせは次のとおり。実際には、もう少し補完的な教材も必要なのだが、まずは最低限の組み合わせを紹介したい。

・基本テキスト
・過去問題集(10年分)※予想問題が追加されたもの
・横断整理参考書
・模擬試験問題集
・判例・通達問題集
・白書・統計問題集

基本テキストは理解促進に重点をおいたものを選ぶこと。社労士試験は覚えるべき事柄や、科目同士で類似した論点が多いが、丸暗記のテクニックでなんとかなるボリュームではない。むしろ法令の趣旨や制定に至った背景を理解することで、記憶の定着も促進される。

過去問題集は、知識のヌケや認識の誤りをあぶり出すために使うので、逐一正誤をチェックできるように、設問ページと解答ページが隣り合っているものが良い。また解答の解説にプラスして、基本テキストの対応ページが表記されたものであれば、より効率的に学習しやすい。

それ以外の教材選びのポイントについては、以後の各章の中で、詳しく解説してゆく。

学習ステップ

ペーパーテストを得意とする高学歴者は別として、我々凡人は、やみくもに勉強しても学習効率が上がらないどころか、受験勉強が長続きせず、途中で挫折してしまう可能性が高い。そこで学習フェーズを4つに分け、進捗を確認してから次のフェーズに進むようにするとよい。

Phase1 論点の理解

前述のとおり、社労士試験は論点の理解無くして暗記はできない。まず基本テキストを読み、全ての科目の全ての法令や制度について、その目的と、誰が、誰に対し、いつから、いつまで、いくらの給付(徴収)を行うのか、またそれらの法令や制度の原則と例外はどうなのか、基本テキストを見ながらでよいので、簡潔明瞭に説明できるようにポイントをまとめてみる。

なお、この段階では基本テキストにはアンダーラインを引いたり、書き込みをしたりせず、あくまでもサブノートに、整理した論点をメモしておくことを推奨する。その理由は、最初から線引きしたり、書き込みをしたりすると、学習が進んで本当に重要だと思ったキーワードをハイライトしたり、補足情報をメモしようとした時に、すでにテキストは極楽鳥のようなケバケバしい状態で、余白も残っていないといった事態に陥るため。

Phase2 認識の修正と記憶の定着

理解度のチェックと記憶の定着は、過去問答練を通して行う。過去問題集は10年分がマストで、予想問題もプラスされた教材がオススメ。また過去問答練は一気に全問解答して答え合わせするのではなく、一問ずつ正誤を確認し、誤答やまぐれ当たりの場合は、何が間違っているのか、何が理解不足なのか、解答の解説とあわせて基本テキストを見返してチェックする。

実は社労士試験の受験勉強で、最もキツイのがこのフェーズである。最初のうちは×だらけの解答用紙を見て気持ちが萎えるかもしれない。しかし試験に合格する人達は皆、このフェーズできっちりと基礎を作っている。10年分の過去問ともなると、設問数はトータルで4,000問くらいになるが、9割5分の正答率になるまで反復する(初学者なら10回転させる覚悟が必要)。

Phase3 横断整理

ここからは横断整理のフェーズとなる。横断整理とは、異なる科目の類似法令や制度について、それぞれの相違をきちんと認識する作業であり、社労士試験といえば横断整理というくらい、合格には不可欠なフェーズである。参考までに具体例をあげると次のようなイメージ。

労働保険の不服申立て
(科目;労働一般常識)
社会保険の不服申立て
(科目;社保一般常識)
・審査請求棄却とみなす期間
 〜3ヶ月経過後も決定なし
・審査請求棄却とみなす期間
 〜2ヶ月以内に決定なし
・再審査請求する方法
 〜文書のみ(口頭不可
・再審査請求する方法
 〜文書でも口頭でも可

これら以外にも、例えば労災保険制度と健康保険制度の療養給付の内容、同じく労災保険制度と国民年金および厚生年金保険の障害年金・遺族年金の受給権者、また国民年金と厚生年金保険の年金給付における加算対象者など、どれも似通った制度の中に、微妙に異なる部分が多々あり、本試験では、それらの相違を正確に把握しているかどうかを、ネチネチと突いてくる。

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Phase4 模擬試験

一般的に、模擬試験を受ける目的は、①試験会場の雰囲気に慣れておき、本試験でアガらないようにするため、②多くの受験生の中で、自分のレベルがどれくらいなのか把握するため、などと言われている。これらは間違いではないが、社労士試験において、もっと大事なのは、模擬試験の答練を通じて、少しでも奇問珍問対策をしておく、ということではないかと思う。

社労士試験では、あらゆる問題集をこなしてパーフェクトな状態に仕上げても、試験当日に初見の問題を目にして愕然とするケースは珍しくない。受験予備校も、そのあたりは折込済で、過去の出題傾向から、今年の本試験で狙われそうな未出の論点を予想して模擬試験を作成しており、模擬試験問題を購入して自宅で答練するだけでも、本試験対策として効果がある。

直前期の過ごし方

いつから直前期というのか明確な定義はないが、個人的には7月から本試験へ向けて臨戦態勢に入るのがベストではないかと考えている。それ以前の大まかなスケジュールは、遅くとも3月末までには全科目の論点整理を終え、過去問も2回転くらいしておきたい。そして4月〜6月は横断整理で知識を修正しつつ、過去問の正答率を95%まで引き上げてから、直前期を迎えよう。

数字の暗記

社労士試験の選択式では数字の穴埋め問題は定番である。暗記しなければならない数字があまりにも膨大なので、数字を苦手としている受験生が多いが、数字の穴埋め問題は、設問の解釈に悩むようなことは無く、覚えてさえいれば100%得点できるので、直前期になったら数字の暗記トレーニングに注力したい(筆者は数字の詰めが甘くて一発合格を逃してしまった)。

判例・通達学習

労働法令に限らず、世の中のあらゆる事象を予め法令で網羅するのは不可能なので、法令を補うものとして判例や通達がある。そのうち判例とは、労働裁判の判決を、以後の類似裁判における審判の基準とするものだが、労働裁判は毎月のように全国各地で行われており、特に労働基準法と健康保険法に関するものが非常に多い。近年は試験で頻出されるので要対策。

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一般常識&白書統計対策

一般常識はクラスター爆弾のように迎撃が難しい科目である。法令パートは細々した法令のアソートメントだが、1つの法令からガッツリ出題された年もある。また白書・統計を手抜きすると命取りになる。多くの受験生は法令を学習し終える頃には、精根尽き果てているはず。しかしあともう1科目あると思い、歯を食いしばって白書・統計も対策する必要がある。

選択式対策

直前期の最終調整の締めくくりは、基本テキストの読み込みに尽きる。理由は2つあり、ひとつめは忘却してしまった論点のリカバリー、そしてもうひとつは選択式対策である。特に選択式では前述の数字のほかに、目的条文の穴埋めも頻繁に出題されるため、もし自分が試験委員だったら、どのワードを切り抜くだろうか?といった視点で読み込んでゆくとよい。

おわりに

最後は基本に立ち還る

某有名予備校の名物講師が、社労士試験を評して次のような名言を残している。

多数の受験生が正答できそうな問題は確実に得点し、奇問珍問は多数の受験生がマークしそうな解答肢を選んで、少数の勝ち組に入るのが社労士受験の王道である。

O予備校 社労士24 K講師

学習が進むと、つい枝葉末節の些細な論点を深堀りしたくなるが、合格するには、兎にも角にも基本知識をガッチリと抑えておくのが、試験に受かる秘訣なのだ、ということらしい。

社労士試験は運も大事

ここから先はややスピリチュアルな個人的体験談なので、興味の無い方は読み飛ばして結構。さて開業初年度に社労士試験に一発合格する予定だった筆者は、労基法の選択式で、試験終了直前に、正答をわざわざ誤った選択肢に訂正して(それも2問も!)自爆してしまう。

本番1ヶ月前にユーキャンに乗り換えて必死に追い上げるも合格まであと一歩及ばず。心身ともに極限状態…。

ゆえに開業2年目となる令和6年は、全身全霊をかけてリターンマッチに挑み、もし再び僅差で社労士試験に合格できなければ、そもそも人事コンサルティングの仕事に縁が無かったものと諦め、廃業も辞さない覚悟で本試験に臨んだのだった。

筆者の愛用していた腕時計。本試験直前にカレンダーが壊れて4日で止まってしまった。その時は、今年も受験に失敗して「ついに俺も終い(4まい)かぁ〜」などと思ったが…。

試験日の朝、近所の琴似神社へ必勝祈願の参拝をしようと115円(いい御縁)の語呂合わせで用意したお賽銭。製造年別に整列するとそれぞれ4の数字が2つずつ→失敗して終い?

そして試験終了。予想外の苦戦に帰路の足取り重し…。帰宅後に受験予備校の解答速報や試験講評などの動画を片っ端からチェックしたが、令和6年の試験内容は前年よりも難化が顕著で、恐らく択一式の合格基準点は44点〜43点あたりになるだろう、というのが大方の予想。念のために20社近い受験予備校の予想を調べてみると、44点と43点でほぼ拮抗している様子。

一方の筆者は、雇用保険法(択一式)第4問の正誤次第で、択一式の総合点が44点になるか43点になるかといったボーダーラインにいた。雇用保険法第4問は選択肢CとDで模範解答が分かれており、筆者の解答はC。そしてCを正答としているのはユーキャン1社のみで、他社はすべてD。これは厳しいかも…などと思いつつ、10/2の合格発表まで落ち着かない日々を過ごした。

冬の琴似神社
念の為申し添えると筆者は特定の宗教団体に入信している訳ではないし今後も入信する気はない。

本試験も終わり、合格のために筆者ができることといえば祈祷くらい。少しでも合格に近づけるのであれば、なりふり構わずなんでもやってやろうと、相方と2人で札幌市内のあちこちの神社を参拝していた。なんとか雇用保険法第4問が正答して、択一式の総合点と合格基準点が44点になれば、辛うじて合格できるだろうと、一縷の望みをかけて各地の神社を行脚した。

この時、琴似神社では、我々が礼拝すると同時に、本殿内部が輝いてピカピカと点滅したり(6年通って初めて見る光景)、札幌村神社ではどんよりとした曇り空が、参拝中の1〜2分だけ我々を照らすようにパッと光明が差したり、さらに上山鼻神社では、バラバラと境内に響いていたドングリの落下音が、柏手を打った瞬間にピタッと止むなど、不思議な体験をした。

死角ナシの必勝態勢で臨むも昨年より点数ダウン。辛うじて合格できたが、これが社労士試験の難しいところ。

そして合格発表。なんと奇跡の合格。予想では分が悪かった雇用保険法(択一式)の第4問は見事正答。この第4問のC(=4!?)がストッパーとなって、択一式総合は44点で踏みとどまった。さらに合格基準点も昨年より1点下がって44点で着地。ただの偶然かもしれないが、試験直前に何かと視界に飛び込んできた4のオンパレードは今回の結果を暗示していたのかもしれない。

自分が強運の持ち主であることは常々自覚している。しかし今回ばかりは神様達に助けられたというか、社労士資格を神様達から託されたような気持ちになった。今回の一連の出来事で、人事コンサルティングの仕事を自分の天職として再認識するとともに、神様達のご期待を裏切らないよう、真摯に、堅実に、そして謙虚にこの仕事に邁進してゆきたいと誓った次第。

最後に、圧倒的マイノリティにもかかわらず、雇用保険法第4問のC解答を堅持したユーキャンに敬意を表したい。日和見的にC解答をD解答にサラリと変更する受験予備校もあった中で、ユーキャンが一貫してC解答としてくれたことは、筆者にとってどれほど心強かったことか。ユーキャン社労士講座の関係者の皆様にも、この場をお借りして深い感謝と御礼を申し上げたい。

  • この記事を書いた人

山口光博

コンビニやスーパーの販売職を経て三十路を機に人事業界に転身。20年以上にわたり人事部門で勤務先の人事制度改革に携わった後に起業。社会保険労務士試験合格。日商販売士1級、建設業経理士1級、FP技能士2級など多数取得。

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