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人事が知らない「適所適材」「適材適所」の決定的差(東洋経済ONLINE/2024.01.15)

適所適材・適材適所は人事マンの常識

いえいえ、人事マンなら適所適材と適材適所の違いくらい知っていて当然でしょう。適所適材と適材適所の解説は記事本文に譲るとして、具体例であげるなら、前者はジョブ型雇用で後者はメンバーシップ型雇用です。

前者は職務要件が明確なので、採用のミスマッチが起きづらく、公正な人事評価と実践的な人材教育を行いやすいですが、後者はどうしても不透明な派閥人事の温床となりやすく、大転職時代には時代錯誤な制度です。

例えば流通小売業では部署や担当ごとの職務が細分化され、それに見合った実務能力や勤務形態の人材を充当する適所適材人事が一般的です。ただし経営力を問われる事業部長からは、適材適所人事となってゆきます。

適材適所人事を行う場合の注意点

記事本文中にあるように、個々の社員の才能を活かしたり、希望を叶えるために、適所適材人事と併行して、適材適所人事を行ってゆく…というのは理想的ではありますが、それには一定の社内ルールも必要です。

人事のDXによって、従来に比べると多様で柔軟なタレントマネジメントが可能になったとはいえ、多くの民間企業においてヒト・モノ・カネといった経営リソースは有限ですから、これらの資源の配分には優先順位が伴います。

そもそも経営理念(自社の存在意義)と行動規範(経営理念を実現するために社員に求められる価値観や行動)を明確に定義し、ジョブ型雇用を行っている企業では、入社後のミスマッチは起きづらいはずです。

ですから中長期的な人事評価や人材教育のプロセスを通じて本人のキャリア形成の意向を反映したり、本人の気づいていない可能性を発掘(人材開発)するために、適材適所人事をあてはめるのが正しい運用ではないでしょうか。

適材適所による属人化の弊害

なお適材適所は属人的であるがゆえに、それを既得権のように勘違いして仕事を選り好みする古参が出てきますが、企業経営の目的はあくまでも利潤の追求であり、獲得した利潤を従業員を含めたステークホルダーに還元することです。

適所適材・適材適所の意味を取り違え、適用する場面を誤ると、有能な人材の離脱を招いて生産性が低下するのみならず、本来の経営目的を達成することすらできなくなってしまいますので、注意が必要です。

  • この記事を書いた人

山口光博

コンビニの店長やスーパーの販売課長を経て、31歳の時に管理畑に転職する。以後、20年以上にわたってあらゆる人事マネジメントの実務に携わる。上場準備企業の人事部長として人事制度改革を担当した後に独立、現在に至る。

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