国民年金の支給額はどう改定される?
国民年金の支給額は、法定支給額の780,900円に、物価の上昇と賃金の上昇を踏まえて算定した改定率を乗じて毎年改定されますが、68歳未満と68歳以上とでは改定率が異なります(この部分について日経新聞の記事は間違ってますね…)。
国民年金の老齢基礎年金は65歳から支給されます。65~67歳までの年金受給者を新規裁定者といい、現役時代からまだ時間が経っていないので、物価上昇率と賃金上昇率を加味した年金改定率としています。
一方で68歳以後の人は既裁定者といって、リタイアしてからすでに3年以上を経過しているため、物価上昇率のみを年金改定率に反映するルールです(つまり新規裁定者の方が年金改定率が高くなります)。
マクロ経済スライドの仕組み
ところで日本の年金制度は世代間扶養方式と呼ばれる、現役世代が納めた保険料を、高齢者に支給する年金にそのまま充当する仕組みです。そして現在の日本では、平均余命の伸びと労働力人口の減少により、年金財政が逼迫しています。
そこで将来的な年金財政の均衡を維持するために、年金がプラス改定された場合にマクロ経済スライドを発動し、改定率から調整率(現在は▲0.3%)を減じて財政支出の増加を抑制する仕組みとなっています。
なお年金の増額改定が行われなかった場合は、マクロ経済スライドも発動しませんが、未実施の調整分は翌年度に持ち越しとなり、翌年度にマクロ経済スライドが発動された時に、調整率✕2の減額率(当年分+前年分)となります。
厚生年金の支給額はどう計算するか?
サラリーマンや公務員の場合は、老齢基礎年金(国民年金)にプラスして、老齢厚生年金(厚生年金)も支給されます。老齢厚生年金は年金支給額の改定の方法が、老齢基礎年金とは少し異なります。
老齢厚生年金の支給額は、保険に加入した月数✕加入期間の平均標準報酬額✕給付乗率によって計算され、適用される給付乗率は、平成15年3月以前の加入期間は0.7125%、また平成15年4月以後の加入期間は0.5481%となります。
なぜ平成15年4月を境に給付乗率が異なるのか?というと、平成15年4月から、年金保険料の計算に賞与が含まれるようになった(総報酬制導入)ためです。平成15年3月以前の平均標準報酬額には賞与分が含まれていないため、給付乗率を高めに設定して調整しています。
厚生年金の支給額はどう改定される?
老齢厚生年金の場合は、平均標準報酬額を算定する際に用いる再評価率を、物価や賃金の変動に合わせて改定し、増額改定となった場合に、老齢基礎年金と同じようにマクロ経済スライドを適用することになっています(厚生年金の改定率も68歳前後で異なります)。
再評価率とは、例えば新卒で就職してから定年退職するまでの長い期間において、当然に物価や賃金水準が変動してゆきますので、将来的に年金支給額を計算する時に、就職時の標準報酬額と定年退職時の標準報酬額の金銭的価値の差異を調整するためのものです。
また老齢基礎年金(国民年金)は、あくまでも受給者本人のみを対象として支給されるものですが、老齢厚生年金には、老齢厚生年金の受給者に一定の条件を満たす配偶者や子がいる場合に、加給年金額というものがプラスされます。
この加給年金額についても、物価や賃金水準の変動に応じて、老齢基礎年金の改定率に準じた方法でもって、支給額の改定が行われるようになっています。