
この記事では、病気やケガで仕事を休み、給与が支払われない場合に健康保険から支給される「傷病手当金」について解説します。
本記事は全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入している被保険者向けの内容となっています。
他の健康保険制度に加入している場合は、各保険者に手続きの詳細をお問い合わせください。
傷病手当金の支給手続きが必要なとき
健康保険の被保険者である従業員が、病気やケガにより仕事を休む場合、以下の条件を満たせば「健康保険傷病手当金支給申請書」を提出して、傷病手当金を申請することができます。
- 私傷病による療養のために休業すること
- 労務不能な状態であること
- 連続3日間の待機期間を経過していること
- 給与の支払いがないこと
傷病手当金支給申請書の提出期限
労務不能であった日の翌日から2年間のうちに申請します。
上記の期限を過ぎると、時効により給付を受ける権利が消滅するので注意しましょう。
傷病手当金支給申請書の提出先
加入している協会けんぽの都道府県支部に提出します。
傷病手当金支給申請書の様式と作成
傷病手当金支給申請書の様式
傷病手当金支給申請書の様式は、協会けんぽのホームページでダウンロードできます。
様式を印刷して手書きで記入するか、ダウンロードしたPDFに直接入力して印刷することも可能です。
協会けんぽ以外の医療保険制度に加入している場合、様式や添付書類については、それぞれの保険者に確認してください。
傷病手当金支給申請書の作成
傷病手当金支給申請書は4ページあり、それぞれ次のように記入・作成します。
- 1・2ページ:被保険者(従業員本人)が記入
- 被保険者の情報
- 振込先指定口座
- 申請期間や発病・負傷日、傷病の原因など
- その他の確認事項
- 3ページ:事業主(会社)が記入
- 被保険者の勤務状況
- 賃金の支払状況
- 4ページ:療養担当者(医師など)が記入
- 労務不能であることの証明
記入に不安がある場合は、協会けんぽのホームページに掲載されている記入例を参照しましょう。
作成のポイント①:誰が提出する?
傷病手当金支給申請書は原則として被保険者(本人)が作成し提出しますが、事業主の証明が必要なこともありますので、実務的には会社が中心となって手続きを進めるとよいでしょう。
手続きフローの一例
- 会社が社員に申請書の作成を依頼する。
- 社員が申請書の被保険者記入欄(1・2ページ)に記入し、医師(病院)に証明欄(4ページ)の記入を依頼する。
- 社員が全ての記入が完了した申請書を会社に返送する。
- 会社が事業主記入欄(3ページ)を作成し、協会けんぽに申請書を提出する。
作成のポイント②:申請期間は?
傷病手当金は、原則として給与の締め日ごとに1か月単位で申請することをおすすめします。
こうすることで、事業主の賃金支払状況の証明がスムーズに行えます。
なお、1回の申請で請求できる期間は3か月が上限です。
作成のポイント③:退職後の申請は?
従業員が傷病手当金を受給中に退職した場合でも、一定の条件を満たせば、その後も継続して受給することが可能です。
その際は、本人が申請書を作成し、協会けんぽに提出する必要があります。
この場合、申請書の3ページ目の事業主証明欄は空欄で手続きすることになります。
添付書類
添付書類は原則不要ですが、下記に該当する場合は所定の書類を添付する必要があります。
- 支給開始前の12か月間に、転職や定年再雇用で被保険者番号が変更になったり、任意継続被保険者の期間がある場合
- 以前の事業所の名称、所在地及び事業所に使用されていた期間がわかる書類(協会けんぽの指定様式あり、記入例)
- 障害厚生年金・傷害手当金、老齢退職年金の給付を受けており、かつ、マイナンバーによる情報照会を希望しない場合
- 年金給付額等がわかる書類
- 労災保険の休業補償給付を受けている場合
- 休業補償給付支給決定通知書のコピー
- 第三者の行為による傷病の場合(交通事故やけんか等)
- 第三者行為による傷病届
(第三者行為による傷病届の様式と記入例(協会けんぽ))
- 第三者行為による傷病届
- 記号・番号が不明のため交付申請書にマイナンバーを記入した場合
- 本人確認書類
(本人確認書類貼付台紙(協会けんぽ))
- 本人確認書類
具体的な書類の名称や、上記以外のケースの添付書類については、協会けんぽのホームページをご確認ください。
健康保険組合では、賃金台帳や出勤簿の提出を求められる場合もあります(協会けんぽは提出不要)。
傷病手当金支給申請書を提出したあと
傷病手当金の支払いが決定すると、支給額や振込日が記載された「傷病手当金支給決定通知書」が届きます。
なお、申請書の記入内容や添付書類に不備がある場合、協会けんぽから申請書の修正や添付書類の追加提出を求められることがあります
傷病手当金の手続きをスムーズに進めるために
傷病手当金は病気やケガで働けない社員にとって、なくてはならない制度です。
しかし、その手続きは慣れない従業員にとっては大変で煩雑です。
従業員が安心して療養に専念し、早期に職場復帰できるように、会社が手続きをサポートすることが望ましいでしょう。
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