
スタッフが病気やケガで休職…給与補償はどうする?
歯科クリニックで働くスタッフが病気やケガで長期間仕事を休まざるを得なくなったとき、院長先生が直面するのが「休業中の給与補償」という課題です。
「休んでいる間も給与を支払うべきか」「スタッフの生活は大丈夫だろうか」と心配される方も多いのではないでしょうか。
こうした不安を軽減する制度が「傷病手当金」です。
これは業務外の病気やケガで休業した際の生活を支える手当金ですが、加入している公的医療保険によって給付の有無や手続きが大きく異なります。
本記事では、公的医療保険別に傷病手当金の制度と申請手続きについて解説します。
傷病手当金とは?健康保険と国民健康保険組合で異なる制度
傷病手当金とは、公的医療保険の被保険者が業務外の病気やケガで療養する際、一定の給付が受けられる制度です。
公的医療保険別:傷病手当金の制度の有無
傷病手当金は、加入する公的医療保険によって制度の有無が異なります。
- 健康保険(協会けんぽ・各健康保険組合)
- 一定の要件を満たせば支給されます。
- 歯科医師国民健康保険組合(歯科医師国保組合)
- 組合によって制度の有無が異なります。支給される際も、組合ごとに支給要件や支給額が異なります
- 市町村の国民健康保険
- 原則として傷病手当金の支給はありません。
支給要件と支給額(健康保険)
支給要件
健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)では、以下の4つの条件をすべて満たしたときに傷病手当金が支給されます 。
- 療養中であること:業務外の病気やケガで療養していること(自宅療養も含む)
- 労務不能であること:今まで行っていた仕事に就けない状態であること
- 待期期間の完了:連続して3日間休んだ後、4日目以降であること(最初の連続した3日間は支給されない)
- 給与の支払いがないこと:休んだ期間について給与の支給がないこと
支給額
1日あたり、「支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×3分の2」が支給されます(給与(総支給額)のおおよそ3分の2相当)。
支給期間
支給を開始した日から通算して1年6ヵ月を上限として支給されます。
支給要件と支給額(歯科医師国保組合)
歯科医師国保組合(以下、国保組合)の傷病手当金は任意給付のため、手当金の有無やその給付内容は各組合ごとに異なります。
詳細は加入している国保組合の定めを確認する必要がありますが、ここでは一般的な傾向を解説します。
支給要件
健康保険と比較し、下記のような違いがみられます。
- 入院していること:「入院」を支給要件とする国保組合がほとんどです(健康保険は自宅療養日も支給される)。
- 待期期間の違い:国保組合によりますが、0日~5日程度が多くなっています(健康保険は3日間)。
- 給与との関係:給与の支給があっても傷病手当金が支給されることが多いです。
また、組合員種別(歯科医師・従業員)により給付の有無が分かれたり、資格取得後に一定期間が経過していないと受給できない国保組合もあります。
支給額
入院一日につき定額が支給されるケースが一般的です。
給付日額は組合により異なりますが、概ね1,000円~10,000円ほどで、組合員種別により支給額が異なることも多くあります。
支給期間
多くの組合で、支給日数に上限が定められています。
支給日数は20日~180日の範囲が多く、中には「同一年度内で90日」など年間・年度ごとに区切りが設けられている場合もあります。
傷病手当金の手続き
健康保険の手続き
提出期限
労務不能であった日ごとに、その翌日から2年以内に提出します。
給与の支払状況の証明が必要となる都合上、実務的には給与締切日ごとに月単位で申請を行うのが一般的です。
提出先
クリニック所在地を管轄する協会けんぽ支部、または加入する健康保険組合に提出します。
申請書の様式
所定の「健康保険傷病手当金支給申請書」を使用します。
申請書には、医師(病院)による労務不能の証明と、事業主(クリニック)による休業および賃金支払状況の証明を受ける必要があります。
添付書類
- 協会けんぽ
- 原則として添付書類は不要です(過去12か月以内に転職している場合や、申請書にマイナンバーを記入した場合など、一部の例外を除く)。
- 健康保険組合
- 組合によっては、出勤簿や賃金台帳の写しなどの添付が求められることがあります。
健康保険組合では、協会けんぽと申請書の様式や添付書類が異なる場合があります。必ず組合に手続きの詳細を確認してください。
歯科医師国民健康保険組合の手続き
各国保組合のルールによりますが、一般的な手続きの流れは以下の通りです。
提出期限
傷病手当金の支給対象となった日から2年以内に申請します。
提出先
加入する歯科医師国保組合に提出します。
申請書の様式
組合ごとの指定様式を使用します(「傷病手当金支給申請書」や「入院見舞金支給申請書」など)。
レセプトを調査し支給対象となる組合員へ申請書が送られてくる国保組合もあれば、組合員が自ら様式を入手して申請する国保組合もあります。
申請書の入手方法については、各国保組合のホームページなどで確認しましょう。
添付書類
添付書類は不要なケースが多いですが、診断書や入院証明書などの提出を求められることもあります。
詳細は必ず組合へ確認しましょう 。
傷病手当金のよくある質問
申請手続きはクリニックが行うのですか?
傷病手当金は原則、健康保険・国保組合とも被保険者(スタッフ)が申請者となります。
しかし、健康保険の場合は、事業主による勤務や賃金支払状況の証明が必要となるため、手続きにはクリニック側の協力が必須です。
そのため、実務的には事業主側が申請書の提出を代行するケースも見られます。私傷病で休んだ期間に対して給与を支給した場合、傷病手当金は支給されますか?
健康保険:原則、支給されません。ただし、支払われた給与額が傷病手当金の日額より少ない場合は、その差額が支給されます。
国保組合:各国保組合の定めによります(一般的には、給与の支給有無を支給要件の一つとする歯科医師国保組合は稀です)。採用したばかりのスタッフでも支給対象となりますか?
健康保険:採用直後であっても支給要件を満たせば受給可能です。
国保組合:「資格取得から6か月経過後」などの期間要件を設けている国保組合もあるため、確認が必要です。退職後も傷病手当金を受給できますか?
健康保険:「退職日までに被保険者期間が継続して1年以上」かつ「退職日に傷病手当金を受けているか、または受けられる状態(労務不能)」であれば、退職後も継続して傷病手当金を受給できます。
国保組合:健康保険とは異なり、退職とともに受給資格を失う国保組合がほとんどです。詳細は組合へ確認しましょう。
煩雑な手続きは専門家へおまかせ!正確な申請でスタッフも安心
スタッフが長期休業する際は、傷病手当金だけでなく、社会保険料の取扱いや住民税の徴収方法の変更など様々な事務対応が発生します。
中には今回ご紹介した傷病手当金のように、クリニック側の証明が必要な手続きもあります。
院長先生が診療や経営と並行して、これらの慣れない書類作成や制度の確認を行うのは大きな負担ではないでしょうか。
社会保険労務士に依頼すれば、これらの事務手続きを丸ごと任せられ、申請漏れのリスクも防げます。
また、的確かつスムーズに手続きが進むことで、スタッフの安心感にも繋がります。
「事務作業から解放され、安心して診療や経営に集中したい」――そうお考えの院長先生は、ぜひ当事務所へお気軽にご相談ください。
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