みなし労働時間制の概要
労働時間管理の例外制度
みなし労働時間制は、労働基準法に定める労働時間に関するルールの例外であり、正確に労働時間を把握することが難しい職種について、始業と終業の時刻を労働者の判断に委ね、所定労働時間を働いたものとみなしてしまおうという制度である。
事業場外のみなし労働時間制
事業場外のみなし労働時間制は、たとえば取引先と自宅を直行・直帰する外勤職のように、事業場のタイムレコーダーに出退勤の打刻をすることが難しい職種について、就業規則にルールを定めることで、所定労働時間を働いたものとみなす制度である。
なお所定労働時間に法定外労働時間が含まれる場合、使用者は36協定を締結して、所轄の労働基準監督署に届け出る義務が生じる。なおスマホアプリで勤怠を記録できる場合は、この制度を導入できない。すなわちICTの進化によってやがて消滅するであろう制度である。
専門業務型裁量労働制
専門業務型裁量労働制は、使用者が、仕事の進め方や労働時間の配分について、労働者に具体的に指示することが難しい専門職について、始業と終業の時刻を労働者の判断に委ね、一日何時間就業しようが、所定労働時間を働いたものとする制度である。
専門業務型裁量労働制の対象となる職種は、弁護士や公認会計士、建築士、研究開発者などの法定20職種に限定されている。制度の実施には、対象となる労働者の同意が必要であり、さらに事業場の労働者の過半数代表者と労使協定を締結しなければならない。
企画業務型裁量労働制
企画業務型裁量労働制は、概ね前述の専門業務型裁量労働制と同じ趣旨の制度である。大きく異なる点は、対象とする職種が企画や調査、分析に携わるホワイトカラーを想定しているのみで、法令によって具体的な職種が明示されているわけではない。
具体的な職種が明記されていないので、使用者が制度を拡大解釈して悪用する恐れがあることから、企画業務型裁量労働制の実施にあたっては、労使委員会を設置し、議事録を労働基準監督署へ届け出るなど、専門業務型裁量労働制より厳格な要件が設けられている。
みなし労働時間制と類似した制度
高度プロフェッショナル制度
高度プロフェッショナル制度とは、労働時間と仕事の成果との間に直接的な関連の無い高度専門職について、始業と終業の時刻のみならず、休憩時間や休日、深夜労働についても、労働者の判断に任せてしまう制度である。
労働基準法に定める労働時間の縛りが無くなることから、「定額はたらかせホーダイ」などと揶揄されているが、制度の対象となるのは年収1,075万円以上のハイクラスであり、月の健康管理時間(≒労働時間)や年間休日数、深夜勤務の回数などに細かな制限がある。
みなし労働時間制vs高プロ制度
みなし労働時間制と高度プロフェッショナル制度の大きな違いは、前者が所定労働時間を働いたものとみなす制度であるのに対し、後者は最初から労働時間の管理を行わない点である。管理職も労働時間管理の対象外であるが、これらの相違を比較すると下表のとおりとなる。
みなし労働時間制のまとめ
リアル店舗の労働者には関係のない制度
これまでの解説でお気づきかと思うが、みなし労働時間制も高度プロフェッショナル制度も、実店舗において販売活動や管理・運営に携わるスタッフにはほとんど縁の無い制度である。本記事では参考までに、制度の特徴などをザックリと紹介してみた。
おすすめの製品
店舗勤務は勤務時間を明確に把握できるがゆえに、客観的な勤怠記録の収集と適正な労働時間管理が必須である。残業時間の記録モレによる残業代未払い、過重労働による労災事故など、杜撰な勤怠管理が大きなリスクを招くので、老舗のアマノ製品で事前に対策しておきたい。
[PR]当社は人事業界の家庭医です。調子が悪いな…と感じたらお気軽にご相談ください。