過重労働の防止
長時間労働者の医師面接
労働安全衛生法は、過重労働による健康障害防止のため、事業主に対して、労働者の勤務時間が一定ラインを超えた場合に、医師による面接指導を受けさせ、その結果を衛生委員会で報告し、対象労働者の勤務時間の短縮や作業内容の変更などの措置を行うことを義務付けている。
- 一般労働者〜法定時間外+法定休日労働が80時間を超え、疲労蓄積が認められるとき
- 研究開発職〜法定時間外+法定休日労働が100時間を超えたとき
- 高度プロフェッショナル制度〜週40時間超の健康管理時間が月100時間を超えたとき
高度プロフェッショナル制度の適用者には、一切の労働時間管理の対象外となることから、一般労働者の労働時間を健康管理時間という言葉に置き換えている。
深夜労働者の自主的健康診断
労働安全衛生法は、事業主に対して特定業務従事者の健康診断を義務付けているが、同法は、直近6ヶ月間に月平均4回以上の深夜労働を行った者が健康不安を感じた時は、次回の健康診断の前であっても、会社の費用負担で自主的に健康診断を受診できるとしている。
過重労働の労災認定基準
労働者災害補償保険法では、労働者が脳血管疾患、虚血性心疾患、うつ病などの精神疾患を発症した場合に、発症前の労働時間が次の要件に該当した場合は、これらの疾患と過重労働との関連性(労災事故の可能性)が強いとしている。
■脳血管疾患・虚血性心疾患と過重労働の関連性大と判断されるケース
- 発症前1ヶ月間に月100時間超の時間外労働があった
- 発症前6ヶ月間のうち2ヶ月平均で月80時間超の時間外労働があった
■うつ病などの精神疾患と過重労働の関連性大と判断されるケース
- 発症前1ヶ月間に月160時間超の時間外労働があった
- 発症前2ヶ月間に月120時間超の時間外労働があった
- 発症前3ヶ月間に月80時間超の時間外労働があった
安全配慮義務と過重労働
労働契約法では、使用者は労働契約に明記されていなくても、労働者が安全かつ衛生的な環境で就労できるよう当然に安全配慮義務を負うものと規定している。この安全配慮義務は、業務起因の怪我や病気の防止のみならず、過重労働による健康障害も含まれる。
ワークライフバランスの実現
育児・介護中の労働時間制限
育児介護休業法は、使用者に対し、育児中もしくは家族を介護中の労働者から請求があった場合に、次のような就業制限を義務付けている。
- 3歳未満の子を養育する労働者/要介護状態の家族を介護する労働者
→所定外労働時間を超える労働の禁止 - 未就学の児童を養育する労働者/要介護状態の家族を介護する労働者
→月24時間もしくは年150時間を超える時間外労働および深夜労働の禁止 - 上記1.の労働者のうち、育児介護休業を取得していない労働者
→1日6時間以下の短時間勤務制度を導入する義務
はたらきやすい職場環境の整備
労働時間等設定改善法は、労働者のワークライフバランス実現のため、使用者に対し、業務の繁閑に応じた始業時間および終業時間の柔軟な変更、適切な長さの所定労働時間の設定、年次有給休暇を取得しやすい職場環境づくりなどの努力義務を定めている。
勤務間インターバル制度の導入
勤務間インターバル制度とは、コンビニなど夜勤を行う店舗について、深夜労働者の心身の疲労を軽減するため、終業から始業まで11時間以上のインターバルを設けるものである。労働時間等設定改善法は、勤務間インターバル制度の導入についても努力義務を課している。
過重労働による離職者の救済
雇用保険法では、次の要件に該当する労働者が、過重労働を理由に離職した場合は、特定受給資格者(正当な理由のある自己都合退職)とし、失業給付(基本手当等)の給付制限を行わないことになっている。
■離職前の6ヶ月間において法定時間外労働+法定休日労働が次のいずれかに該当する者
- 1ヶ月あたり100時間以上
- 2ヶ月連続して月80時間超
- 3ヶ月連続して月45時間超
長時間労働に関する法令のまとめ
残業=頑張ってるが日本の低生産性の元凶
人口減少が加速し、人件費が高騰している今の日本において、労働時間の多寡ではなく単位時間あたりの成果物の量や質で労働生産性の良し悪しを判断すべき。それには職場で群れたがる旧来の人間関係から脱却し、個人が自立的に生きることを是とする意識改革が不可欠。
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労働基準法では管理職は労働時間管理の対象外だが、過重労働による健康障害防止のために、労働安全衛生法では、管理職も含めて勤怠管理システムによって労働時間を把握し、法定外労働時間が月80時間を超える者について、産業医に報告する義務を定めている。
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