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01_雇用管理

変形労働時間制

変形労働時間制

変形労働時間制とは?

法定労働時間を超えて労働者を就業させると、事業主には割増賃金の支払い義務が生じるが、変形労働時間制を導入することで、閑散期の所定内労働時間を短縮する代わりに、繁忙期には割増賃金の支払い義務を負わずに、法定労働時間を超えて労働者を就業させられる。

変形労働時間制には、1年単位、1ヶ月単位、1週間単位の3種類があり、事業主は自社の事業の特性に応じて、これらのいずれかを導入することで弾力的な人員配置が可能となる。なお類似の制度として、始業と終業の時刻を労働者の裁量に委ねるフレックスタイム制がある。

1年単位の変形労働時間制

制度の特徴

1ヶ月超〜1年以内の範囲で、対象期間(変形させる期間)を平均して週の労働時間が40時間以内に収まっているのであれば、特定期間(繁忙期)に法定労働時間を超えて労働者を就業させることができる。主に1年を通じて季節的に繁閑が発生する業種に適している。

導入する際の要件

  • 労使協定を締結して所轄の労働基準監督署に届出する
  • 特定期間中でも労働時間の上限を1日10時間以内、1週間52時間以内とすること
  • 対象期間を3ヶ月以上とする場合には労働日数を年間280日以内とすること
  • 週48時間を超えて就業させる週を連続3回以内とすること
  • 週48時間を超えて就業させる週を3ヶ月間に3回以内とすること

導入時の注意事項

実施にあたっては、対象期間中の労働日と各労働日の労働時間を予め決めておかなければならない。使用者が業務の繁閑を見ながらその時々で労働日と休日を決めるような運用方法は、変形労働時間制として認められない(この場合は通常の割増賃金の支払義務が発生する)。

特例対象事業(従業員10人未満の商業など)が1年単位の変形労働時間制を導入する場合には、労働基準法の法定労働時間の特例(法定労働時間=週44時間)は適用されないため、対象期間を平均して労働時間を週40時間以内に収めなければならない。

1ヶ月単位の変形労働時間制

制度の特徴

1ヶ月以内の期間において、週の平均労働時間が40時間以内に収まっているのであれば、特定の日に8時間を超えて、あるいは特定の週に40時間を超えて労働者を就業させることができる。主に1ヶ月の特定の時期(給料日や月末)に業務の繁閑が生じる業種に適している。

導入する際の要件

労使協定を締結して所轄の労働基準監督署に届け出するか、就業規則に規定することで制度を導入できる。なお就業規則に規定していれば、労使協定の締結および届出は不要である。また1日の労働時間については、1年変形のような上限時間は設けられていない。

導入時の注意事項

変形期間の1ヶ月間の各日および各週の労働時間を予め労使協定または就業規則に明記しておく必要がある。1年単位の変形労働時間制と同じように、その時々で使用者が出勤日や労働時間を決めるような運用方法は、1ヶ月単位の変形労働時間制として認められない。

1週間単位の変形労働時間制

制度の特徴

1週間の労働時間が法定労働時間の40時間以内に収まっているのであれば、週のうち特定の日に10時間まで労働者を就業させることができる。主に週の特定の曜日に業務の繁閑が生じる業種に適した制度である。

導入する際の要件

  • 小売業、旅館業、料理店、飲食店のうち、常時使用する従業員が30人未満の事業者
  • 労使協定を締結して所轄の労働基準監督署に届出すること

導入時の注意事項

突発的な業務の繁閑に対して柔軟な人繰りができない小規模店舗向けの制度だが、特例対象事業の法定労働時間の特例は適用されなくなる。つまり特例対象事業の場合は、法定労働時間の特例(1日10時間✕週40時間)か1週間変形(1日8時間✕週44時間)のいずれかを選択する。

フレックスタイム制

制度の特徴

フレックスタイム制は、1ヶ月を超えて3ヶ月以内の期間において、始業と終業の時刻を労働者の裁量に委ねることとした制度で、就業するかどうかは個々の労動者の任意とするフレキシブルタイムと、必ず就業していなければならないコアタイムで構成されている。

ただしフレキシブルタイムとコアタイムの設定は必須ではなく、出勤から退勤までの時間を丸ごと個々の労働者の裁量に委ねてしまう運用も可能となっており、子育て世代や家族の介護をしなければならない労働者にとっては、非常に働きやすい制度となっている。

導入する際の要件

フレックスタイム制を導入するには、就業規則に制度を定めた上で、実施事業場の労働者の過半数代表者との間で労使協定を締結し、所轄の労働基準監督署に届け出る必要がある。

また清算期間が1ヶ月を超える場合は、週の労働時間は50時間が限度となる(週50時間を超えない範囲で、任意の時間帯で働くことができる)。

導入時の注意事項

始業時刻と終業時刻のいずれか一方のみを労動者の裁量に委ねるようなルールは、フレックスタイム制度としては認められない。

その月の実働時間が所定労働時間に足りなかった場合、不足分を翌月の所定労働時間に加算することは問題ないが、実働時間が所定労働時間を上回った場合に、超過分を翌月の所定労働時間と相殺することは認められない(上回った時間の賃金はその月の給与で支払う)。

実働時間が所定労働時間を上回った場合に、超過した時間を翌月の所定労働時間を相殺することは、労働基準法の賃金全額払いの原則に違反するため、当月の給与において時間外手当として支給することになる。

変形労働時間制を導入する際の注意事項

未成年者は原則として変形労働時間制は禁止

労働基準法では、未成年者を変形労働時間制およびフレックスタイム制で労働させることを禁止している。ただし例外として、1日8時間以内かつ1週48時間以内であれば、1ヶ月単位もしくは1年単位の変形労働時間制で就業させることは可能である。

また週40時間以内の範囲で、なおかつ週のいずれかの労働日の所定労働時間を4時間以内に短縮することで、他の労働日について10時間まで就業させることができる。

妊産婦

妊産婦が請求した場合には、使用者は妊産婦を変形労働時間制で労働させることができない。ただしフレックスタイム制については、妊産婦の就業制限の対象となっていない。

妊産婦については本人からの請求がなければ変形労働時間制で就業させても構わない。またフレックスタイム制が妊産婦の就業制限から除外されているのは、むしろ妊産婦にとって労働時間の融通が効きやすい制度だからである。

変形労働時間制のまとめ

各制度の主な特徴を下表のとおり整理してみた。現実的にはリアル店舗の小売業ではフレックスタイム制の導入はハードルが高いと思われるが、それ以外の変形労働時間制については、自社の業種や業態もしくは事業規模の特性にあわせて、最適な制度を選ぶとよいだろう。

繁閑のピークを見極める方法は、自店の販売データを集計し、季節や1ヶ月の特定の日あるいは曜日ごとに、買上客数と買上点数もしくは客単価の増減をチェックしてなんらかのパターンを見つけ出すことである。

 

  • この記事を書いた人

山口光博

コンビニの店長やスーパーの販売課長を経て、31歳の時に管理畑に転職する。以後、20年以上にわたってあらゆる人事マネジメントの実務に携わる。上場準備企業の人事部長として人事制度改革を担当した後に独立、現在に至る。

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