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01_雇用管理

時間外・休日・深夜労働

2024年9月5日

時間外・休日・深夜労働アイキャッチ

労働時間と休日・深夜時間

法定労働時間と所定労働時間

法定労働時間は、労働基準法に定める労働時間の上限であり、1日8時間、1週40時間をいう。同法は法定労働時間を超えて労働者を働かせることを禁止している。もし使用者が法定労働時間を超えて労働者を労働させるには、労使協定の締結と割増賃金の支払いが必要となる。

所定労働時間とは、企業が独自に定めた労働時間の単位であり、変形労働時間制を採用していない場合は、法定労働時間未満で設定されることが多い。もし所定労働時間を超えて労働者を労働させても、法定労働時間内に収まっていれば、割増賃金の支払は不要である。

法定休日と所定休日

労働基準法は、使用者に対し、1週間に1日以上、4週間を通じて4日以上の休日を労働者に与える義務を定めている。これを法定休日というが、法定休日を何曜日とするかは、事業主の自由である(ただし就業規則に明記した上で、全ての従業員に周知しなければ無効となる)。

所定休日は、事業主が任意で設定する法定休日以外の休日をいう。令和5年就労条件総合調査によると、法定休日と所定休日を合わせた年間休日数は企業平均で110.5日、労働者平均では116.1日となっている(2つの平均の差異は大企業に勤める労働者数が多いためである)。

深夜勤務となる時間帯

労働基準法では、22時から翌朝5時までを深夜時間帯としており、原則として16歳以上の男性を除く未成年者の深夜労働を禁止している。また妊産婦については、本人から請求があった場合に限り、使用者は深夜時間帯の労働を免除しなければならない。

深夜労働に関連して、労働安全衛生法は深夜業務に従事する労働者を対象として、年2回の特定業務従事者の健康診断を実施することを事業主に義務付けている。さらに常時500人以上を使用する事業場で深夜勤務を行う場合には、専属の産業医を1名配置する義務もある。

割増賃金の割増率

割増率の趣旨

労働基準法では、法定時間外労働、法定休日労働、深夜労働を行った労働者に対し、通常の賃金に加えて一定の率の割増賃金を支払うことを事業主に義務付けている。これは金銭的なペナルティを科すことで、過重労働や健康上有害な時間帯の労働を抑制するためである。

法定時間外割増

事業主は、法定労働時間を超えて労働者を働かせた場合は、割増賃金の計算単価の25%以上の割増賃金を支払う義務がある。また月の時間外労働が60時間を超えた場合には、割増賃金の率は50%になる(25%上乗せする代わりに代替休暇を付与する方法も可→後述)。

法定休日割増

事業主は、法定休日に労働者を働かせた場合は、割増賃金の計算単価の35%以上の割増賃金を支払う義務がある。なお法定休日に8時間を超えて労働させても、時間外割増の加算は不要である。なぜなら法定休日には法定労働時間も法定外労働時間も存在しないためである。

法定休日の深夜時間帯に労働させた場合には、事業主は法定休日労働の割増賃金35%に、深夜労働割増の25%を加算しなければならない。これは法定休日だろうと平日だろうと、健康上有害な深夜時間帯に労働させている事実は変わらないからである。

深夜割増

事業主は、深夜時間帯(22時〜翌朝5時)に労働者を働かせた場合は、割増賃金の計算単価の25%以上の割増賃金を支払う義務がある。さらに深夜時間帯が法定外労働や法定休日労働と重複した場合は、それぞれの割増率に深夜割増率を加算した賃金の支払いが必要である。

休日の振替と代休

休日の振替とは、業務の都合などにより、あらかじめ法定休日と労働日を振り替えることをいう。休日を振り替えることによって、法定休日は労働日となり、労働日は法定休日となるため、事業主には法定休日労働にかかる割増賃金の支払い義務がなくなる。

突発的な事情によっていったん労働者を法定休日に労働させ、後日どこかの労働日に取得させた代わりの休暇を代休というが、法定休日に労働させた事実は変わらないため、事業主には法定休日労働にかかる割増賃金の支払い義務が生じる。

代替休暇

代替休暇とは、労働者に月60時間を超える法定時間外労働をさせた場合に、事業主が通常の時間外割増に上乗せして支払う割増賃金に代えて付与することができる(年次有給休暇とは別の)有給休暇のことである。

例えばある労働者に月70時間の法定時間外労働をさせた場合に、事業主は60時間を超過した10時間部分について、50%の割増賃金を支払ってもよいし、10時間✕25%=2時間半の代替休暇を付与してもよい(ただし代替休暇は残業の翌月から2ヶ月以内に取得させる必要がある)。

割増賃金の計算方法

計算単価の算出方法

割増賃金の元となる単価(計算単価)は、時給制の場合はその時給単価、月給制の場合は、その月の支給額を労働時間で除して時給に換算した額だが、家族手当、通勤手当、子女教育手当、住宅手当、臨時の賃金、1ヶ月を超える期間ごとに払われる賃金などは除外する。

なお法定外時間労働、法定休日労働、深夜労働の割増賃金は、労働基準法の賃金支払5原則に従ってその月々で精算する。ただし「月末〆当月25日支払」などの月給制の場合、基本給などの固定給を当月支給、割増賃金などの変動給を翌月に支給することが認められている。

扶養家族の人数に関係なく一律に支給される家族手当や、個々の住宅費用に関係なく一律に支給される住宅手当などは、割増賃金の計算単価から除外することはできない。

割増すべき時間の集計方法

割増賃金を支払わねばならない法定外労働時間は、まず1日ごとに法定労働時間を超過している時間数を集計し、次に1週間の総労働時間から週の法定労働時間(40時間)と1日ごとの法定外労働時間の合計数を控除することで算出することができる。

この表の事例であれば、土日に法定外労働時間がそれぞれ2時間ずつ発生している。また[1週間の総労働時間46時間]ー[週の法定労働時間40時間]ー[土日の法定外労働時間2時間]=2時間となり、この週は合計6時間の法定外労働に対する割増賃金の支払いが必要となる。

割増賃金を計算する時の端数処理は、1ヶ月間の法定外労働、法定休日労働、深夜労働のそれぞれの合計時間について1時間未満の端数を四捨五入し、さらにこれら割増賃金の1ヶ月の総額を円位未満で四捨五入する。

その他特記事項

  • 法定労働時間の特例事業(常時10人未満の労働者を使用する商業、金融業、不動産業、保険業)は、週の所定労働時間が44時間となる。
  • 同一の日に系列店の応援と自分の店舗の業務を行う場合の労働時間は通算され、法定労働時間を超えた側に割増賃金の支払義務が生じる。
  • 副業の場合も労働時間は通算する→所定労働時間は労働契約を締結した時期の順で、法定時間外労働は残業した時刻の順で通算する。
  • 深夜シフトで勤務している最中に暦の日付が変わった時は、始業した日を起点として1日の労働日とみなす。
  • 派遣労働者に時間外勤務を指示するのは派遣先企業だが、36協定の締結および時間外割増賃金の支払い義務は派遣元企業にある。

複数の日に勤務がまたがる場合、労働時間の管理においては上記のとおりだが、標準報酬月額を改定する際の報酬支払基礎日数(17日以上)および基本手当の賃金支払基礎日数(11日以上)の計算においては、暦日でカウントする。

時間外・休日・深夜労働のまとめ

労働時間と割増賃金はボリュームがあり、なおかつ複雑なルールがいくつか存在するため、苦手としている使用者は少なくないが、労働時間管理と賃金支払いは労使関係の根幹を成す重要な部分であり、処理を誤るとコンプライアンス違反に直結するので注意が必要である。

とりあえず1日8時間もしくは週40時間を超えたら割増賃金を支払う義務があること、22時以降の深夜勤務および法定休日勤務にも割増賃金が必要であるということ、そして月60時間を超える過重労働は高くつく、ということだけでもしっかり覚えておきたい。

 

  • この記事を書いた人

山口光博

コンビニやスーパーの販売職を経て三十路を機に人事業界に転身。20年以上にわたり人事部門で勤務先の人事制度改革に携わった後に起業。社会保険労務士試験合格。日商販売士1級、建設業経理士1級、FP技能士2級など多数取得。

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