当サイトはアドセンス広告およびアフィリエイト広告を利用しています。

13.人件費コントロール

スーパーマーケットの人件費予算

打ち合わせするスーパーの経営者と女性店長
AI生成画像です

人件費予算の策定方法

流通小売業は労働集約型産業であり、持続的な経営活動のためには、総額人件費のコントロールが不可欠です。一方で、多くの流通小売業者は実店舗での対面販売を行っており、人材の質がサービスの良し悪しに直接影響するため、人材投資という視点も欠かせません。

そこで、事業年度の開始にあたり、人件費を予算化する作業が生じます。人件費予算を策定する目的は、適正な収益率を維持するための総額人件費コントロールと、サービスの質を高めるための人材投資という2つの側面を両立させることです。

人件費予算の策定方法には、事業予算から人件費予算を落とし込む方法と、店舗運営に必要な人件費を積み上げてゆく方法があります。流通小売業では、総額人件費のコントロールと、適切な人材投資を両立させねばならないため、双方のすり合わせが不可欠です。

流通小売業における人件費の現状

小売業の売上高対人件費率は13%で、他業種に比べて特段高いわけではありません。ただし、従業者数は100万人以上で、全産業で最多となっています。人件費率が低い要因は、売上原価が70%以上と高いことが挙げられます。

残り30%に満たない粗利益高から、人件費を含めた販売費や一般管理費を捻出しなければならず、最終利益が赤字になる小売業は少なくありません。スーパーマーケットの人件費率は10.8%ですが、販管費における構成比は43.0%にもなります。

労働分配率は40%以下が優良企業と言われています。スーパーマーケットの平均値は35%~50%で、売上高規模が小さくなるにつれて労働分配率が上がっていく傾向があり、優良企業と呼べるのは年商1000億円以上の大手のみとなっているのが実情です。

トップダウン式の人件費予算策定

事業予算から人件費予算に落とし込む方法には、主に2つの方法があります。

スキャンロンプラン
売上高予算に適切な人件費率を乗じて算出する方法です。スキャンロンプランは売上高をベースとしているため、売上拡大のモチベーションを高められる一方で、コストコントロールの意識が欠如しやすい傾向があります。

ラッカープラン
付加価値額に労働分配率を乗じて人件費予算を算出する方法です。ラッカープランは、流通小売業では粗利益高に基づいて人件費予算を策定するため、コストコントロールの意識が高まりますが、新たな事業機会の創出などに消極的になる可能性があります。

ボトムアップ式の人件費予算策定

ボトムアップ方式では、売り場を運営するために必要な総人時に一人時単価(1時間あたりの平均賃金)を乗じて算出します。

もし各店舗の人材ポートフォリオが標準化されていれば、総人時と一人時単価の標準値をもとに人件費予算を算出できます。一方で店舗ごとの人員配置が大きく異なる場合は、店舗ごとに人件費予算を算出し、全体で積み上げてゆきます。

必要人時の計算にあたっては、総人時を固定人時と変動人時に分けて考えましょう。固定人時とは、店舗を運営するために最低限必要とされる人時のことです。変動人時とは、来店客数や販売点数の多寡によって、必要な投入人時が変動するものを指します。

予算のすり合わせとその他の注意点

トップダウンで算出された人件費予算と、ボトムアップで算出された人件費予算には、当然にずれが生じます。

大抵はトップダウンの予算は厳しく設定され、ボトムアップの予算は膨らみがちですが、経営側では増収増益策による予算枠の拡大、現場側では、多能工化や合理化による予算の削減など、互いの創意工夫によって予算のすり合わせを行わねばなりません。

なお人件費には、給与費以外に、法定福利費や採用コスト、教育研修費、退職金などの費用も含まれますので、人件費予算の策定においては、社会保険料や労働保険料、最低賃金などの改正情報、雇用トレンドといった外部環境の変化にも注意しましょう。


RWC合同会社/社労士事務所のWebサイトをみる

  • この記事を書いた人

山口光博

RWC合同会社/社労士事務所代表。社会保険労務士、日商販売士1級、建設業経理士1級ほか。コンビニ店長やスーパーの販売課長を経て、三十路で人事畑に転身。事業再生法人や上場準備企業で人事制度の再建に携わった後に起業。

-13.人件費コントロール