当サイトはアフィリエイト広告を利用しています。

99_その他雑記

職場の和が会議をダメにする

2024年2月22日

職場の和が会議をダメにするアイキャッチ画像

デンマークではジョブ型雇用で採用されたプロフェッショナル集団が、デンマーク流の人間関係と社会性にもとづき、生産的な会議を行っている。デンマーク流の人間関係とは、互いの時間を尊重してタイパを高め、上司が部下達の発言を活性化するような職場関係を構築することであり、社会性とは、①課題解決のために率直に議論する、②議論と個人を切り離す、③自分に関係の無い論点は妥協する、④傾聴の姿勢を大切にする、の4つの要素をいう。(紹介記事の要旨)

日本人の会議下手はよく知られている。ゴールの見えない長時間のダラダラ会議などその最たるものだが、他にも結論ありきの予定調和、偉い人の独演会、二度と読み返されることのない形骸化した議事録など、ダメ会議の例をあげるときりがない。本来、会議とは、特定の目的をもったメンバーが会して議論し、何らかの意思決定を行って成果物を生み出すものだが、日本の会議の多くは、メンバーが集まること自体が目的と化してしまっているように感じる。

デンマーク式会議法はファシリテーションとよく似ている。日本ファシリテーション協会によると、生産的な会議とは、ファシリテーターが中立的な立場でもって、冒頭で会議の目的とゴールを明らかにした上で、①メンバーが話しやすい場の雰囲気づくり→②意見の発散→③意見の傾聴→④対立の構造化→⑤合意形成のステップで進行し、全てのメンバーが話し合いに参加し、全員が納得するまで話し合った上で、合理的な結論を導き出すものだとしている。

私もこれまでに数え切れないくらいの会議を経験した。私の場合は組織改革や業務プロセス改善のために関係者の意見を集約したり、改善案について承認をもらったり、施策について説明を行ったりというように、目的とゴールが明確な会議がほとんどだった。それでも他の人が主催する会議に招聘された時は「これは何の時間?」などと思ってしまうような場面も多々あった。そこで私なりの生産的な会議を行うためのポイントを列挙しておきたい。

  • 会議の目的と議題を事前に周知する
    メンバーが事前に議論の準備ができるように、遅くとも会議のスケジューリングと同時にアジェンダ(議題)を周知しておく。
  • 適切なメンバーを選定する
    議題ごとに適切な会議メンバーを選ぶ。関係者をメンバーから除外すると実行段階で協力を得られず、逆に関係ない人を加えると議事が混乱する。
  • ファシリテーターを選任する
    中立の立場で、メンバー全員の参加を促し、会議が脱線したり、水掛け論にならないように、会議のプロセスをコントロールする進行役を立てる。
  • ホワイトボードを活用する
    ホワイトボードに議論を可視化しながら進行することで、メンバーを論点に集中させ、議論の脱線や蒸し返し、また会議室の隅で行われがちな局地戦を防ぐことができる。
  • 発言の内容に注目する
    誰が言っているのか?ではなく、何を言っているのか?に注目することで、忖度や無用な感情的対立を回避しつつ、ライトファイト(健全で建設的な議論)をすることができる。
  • 発言録はいらない
    誰が何を言ったのか逐次記録する発言録はいまどきナンセンス。議題と意見と結論を簡潔にまとめた議事録を作成し、会議終了後のアクションを促すようにする。
  • 会議の後のTODOを明確にする
    会議で決まったことを、会議の後に確実に実行できるように、会議の終了前にTODOにして、メンバー全員で共有する。次回の会議の日程と議題もその場で決める。

いまだに鶴の一声で唐突に会議が招集され、偉い人がひらすら喋り、他の参加者はウンウンと頷くだけ、無味乾燥な議事録はキャビネットへ直行…といった前時代的な会議をしている職場は少なくない。権威に弱く、場の雰囲気に流されやすい多くの日本人にとって、会議とは自分がそのコミュニティに所属していることを実感し、確認するための悲哀に満ちた儀式なのかもしれない。ゆえに成果よりも調和を重んじるかったるい会議になってしまうのだろう。

また日本には昔から「寄らば大樹の陰」「長いものには巻かれろ」といったことわざがある。処世の知恵としてはわからなくもないが、そういう態度で会議に臨むのはそろそろ止めた方がいい。これまで日本のサラリーマンにとって美徳とされてきた職場の和、協調性、謙虚さという倫理観は、裏を返せば問題意識と自立性の欠如であり、リスクよりも保身優先の態度である。外資系企業であれば、二度と会議に呼ばれないどころか、リストラされるかもしれない。

昨今は転職や副業の増加によって雇用流動化が進む一方で、事業のライフサイクルが短命化しているので、年功序列を前提とした職場の秩序や人間関係は薄れてゆくだろう。社歴に関係なく、職責を担う能力に応じてポストが再配分される可能性もある。個々のビジネスパースンに対し、短期間で具体的な成果を上げるよう会社からのプレッシャーも強まるかもしれない。しかし我々凡人が過酷なステージを個人プレーでクリアし続けるのは至難の業である。

ゆえに職場のメンバーがそれぞれの特技を持ち寄り、チームで成果をあげてゆくことが不可欠なのだが、これを有効に機能させるには、会議を生産的に運営できるスキルが必須となる。だからといって、デンマーク式の人間関係や社会性を身に着けろと言われても、我々日本人とは気質や文化が違うので一朝一夕でできるはずがない。そこでファシリテーション技術を研鑽しよう。技術マターであれば、トレーニング次第ですぐに活用することができるようになる。

実はさっぽろテレビ塔にはレンタル会議室もある。会議の合間に大通公園を眺めてリフレッシュするもよし。
  • この記事を書いた人

山口光博

コンビニやスーパーの販売職を経て三十路を機に人事業界に転身。20年以上にわたり人事部門で勤務先の人事制度改革に携わった後に起業。社会保険労務士試験合格。日商販売士1級、建設業経理士1級、FP技能士2級など多数取得。

-99_その他雑記