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ミドルのキャリア「転職すべきでない人」の特徴Q&A(ITmediaビジネスONLINE/2024.02.08)

2024年2月16日

迷ったら転職しない

記事タイトルの「転職しない方がいい人」というのは、転職に向いているか、向いていないかといった意味ではなく、転職するかどうか迷っている人は「まだ転職するタイミングではない人」である、という意味だったようです。

さて、転職の動機は人によって様々ですが、いざ転職すると、職務内容や勤務時間など、採用条件に明示されていること以外にも、転職先の職場慣行に馴染んだり、既存社員達と協力関係を構築したりと、新天地に適応するために結構な労力を費やします。

結果的に予想外に苦戦してしまい、「こんなことだったら転職なんかするんじゃなかった…。」などと後悔するようなケースも少なくありませんので、もし転職を迷うような不安要素がひとつでもあるのなら、いったん立ち止まった方が良いと思います。

誰でも転職に直面する時代になる

ところで高年齢雇用安定法では、定年を60歳以上とすること、さらに定年廃止や雇用継続など、従業員が65歳まで就労できるような措置を講じることを、全ての企業に義務付けており、定年65歳が完全義務化されるのも、そう遠くないことと思われます。

したがって日本のサラリーマンの多くが45~50年近くにわたって働き続けなければならないことになりますが、東京商工リサーチの調査によると、日本の倒産企業の平均寿命は23. 3年となっており、日経ビジネスも以前から企業寿命30年説を唱えています。

私が新卒で就職した頃は、定年を55歳としている企業も少なからず存在しました。もし大卒であれば概ね30年働いてリタイアなので、企業の寿命(旬の時期)が30年でも、なんとか定年までひとつの会社にしがみつくことができましたが、今後は運次第かもしれません。

生活密着型の小売業だって安泰じゃない

生活必需品を扱う小売業界においてさえ、ここ半世紀足らずでトッププレイヤーが目まぐるしく入れ替わっています。例えば昭和後半は百貨店が人気の就職先でした。しかしダイエーやマイカルグループなどの台頭にともなって、百貨店業界は赤字業態に転落してゆきます。

バブル経済の頃には、大手スーパーがプロ野球の球団を買収したり、テーマパークや映画館を併設した巨艦店を開業したりしました。しかし過剰な先行投資と平成不況により、大手スーパーが相次いで倒産し、今や全国区ではイオングループとセブン&アイHDしか残っていません。

そんなセブン&アイHDが経営再建のため、北海道・東北エリアのイトーヨーカドー店舗を全て閉鎖すると発表して話題になっています。これで北海道・東北エリアのGMS業態はイオンの一人勝ちとなりますが、GMSの展望については専門家の間でも意見の分かれるところです。

来るべき大転職時代に備える

総務省統計によると2019年時点の転職者数は351万人となりました。一方で、雇用の流動化と言われつつも、転職者率(就業者数に占める転職者の割合)はわずか6%弱と、日本の人材マーケットにおいて、転職組はまだまだマイノリティな存在といってもよいでしょう。

しかし同年に当時の経団連会長が「終身雇用なんて無理ゲー」と宣言したことで、国が躍起になって定年延長しようと法改正を進めているのとは正反対に、多くの企業は自社の従業員に対して会社に依存しない自立的な人生設計を期待するようになってきています。

これからは「大企業に入れば一生安泰」とか「安定した会社に就職できればいい」などといった幻想は捨てて、いつ何時、自分が転職活動をしなければならなくなるかわからない、という緊張感をもって、日頃から社外で通用するようなスキルを研鑽しておく必要があります。

そこで多くのサラリーマン諸氏には、まずは自称プロでもいいので現在担当している仕事に熟達すること、そしてその仕事を軸として、自分のキャリアをタテに伸ばすのか(スペシャリスト)、それともヨコに拡げるのか(キャリアチェンジ)検討してみることをお勧めします。

  • この記事を書いた人

山口光博

コンビニの店長やスーパーの販売課長を経て、31歳の時に管理畑に転職する。以後、20年以上にわたってあらゆる人事マネジメントの実務に携わる。上場準備企業の人事部長として人事制度改革を担当した後に独立、現在に至る。

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