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01 主な労働関係法令

2023年9月24日

この記事のポイント

労働関係法令は労働者を使用する全ての事業者に適用される法令であり、特に「労働集約型産業」といわれる小売業の経営者や管理職にとって、労働関係法令の最低限の知識を身につけておくことは必須条件となっている。

この記事では小売業の主な労働関係法令にはどのようなものがあるのか?またそれらを知らないと経営上どのようなリスクが生じるのか?について解説してゆきたい。

労働関係法令とはなにか?

労働関係法令は事業者が遵守しなければならない労働者の権利や、事業者に対する禁止事項を定めた法律や省令などをいう。これらの法令の中には違反した事業者に対して厳しい罰則を定めたものもある。

労働関係法令の代表的なものは次のとおり。詳細まで理解していなくても、どのような法律が存在するのか知っているだけで、社内外の専門家に相談しやすくなるだろう。

労働者の就労条件に関する法令

労働時間や休日・休暇もしくは賃金などの労働条件について規定した法令で、労働基準法、労働安全衛生法、労働契約法、最低賃金法、男女雇用機会均等法、育児介護休業法、パートタイム・有期雇用労働法、労働者派遣法などがよく知られている。

労働者の傷病、障害、死亡、老齢に関する法令

労働者の傷病や障害、死亡した時の保障(補償)もしくは老後の年金といった社会保険に関する法令。労働者災害補償保険法、健康保険法、介護保険法、高齢者医療確保法、国民年金法、厚生年金保険法、確定給付企業年金法、確定拠出年金法、中小企業退職金共済法など。

労働者の雇用安定に関する法令

公共職業訓練や失業時の経済的支援、また職業紹介や就労環境の整備について定めた法令。労働施策総合推進法、職業安定法、雇用保険法、女性活躍推進法、次世代育成支援対策推進法、障害者雇用促進法、高年齢雇用安定法、児童手当法など多種多様だ。

その他の労働関係法令

労働組合法、労働関係調整法、個別労働関係紛争解決促進法などの労使間の紛争解決制度に関する法令や、労働保険徴収法のような労災保険と雇用保険の保険料の計算および納付に関する事務手続きを定めた法律などもある。

法令に違反した事業者が負うリスク

事業は永続的に行われるものであり(ゴーイングコンサーン)、事業継続のためにはヒト、モノ、カネ、情報の4つのリソースを適切にマネジメントしなければならない、というのが一般的な経営のセオリーである。

ところが労働関係法令に違反すると、これらの経営リソースの調達や運用に支障をきたしてしまう。

たとえば「販売士ハンドブック(発展編・下巻)」では、ヒトのリスクについて「病気、死亡、退職、人材流出、労災事故、ストレス、勤労意欲の喪失、雇用問題、採用難、不正、横領、着服、背任行為、セクハラなど」と解説しているが、労働法令違反が職場に蔓延することでこれらのリスクが顕在化する。

さらに最近ではコンプライアンスやCSR(企業の社会的責任)、人的資本経営、健康優良法人といったキーワードに代表されるように、人材に対する企業の姿勢が世間から厳しくチェックされるようになってきたので、いったんSNSで「ブラック企業」などとレッテルを貼られて拡散されてしまうと、消費者が離れてしまうかもしれない。

労働関係法令を知っておくメリット

会社組織の中で労働関係法令を管掌しているのは人事部門だが、通常、労働関係のトラブルが発生するのは店舗である。

そして労働関係のトラブルは人権にまつわる内容であることが多いため、対応の遅れやミスによって思わぬ二次災害を引き起こす可能性がある。

したがって店長や売場主任であっても担当部署の労務管理に関わる法令について、要点だけでも知っておくべきだろう。

もし必要最低限の知識があれば、そのトラブルが法令違反によるものなのか、従業員の不満によるものなのか、また現場で対処できるものなのか、人事部門に相談すべきものなのか、迅速かつ的確に判断でき、トラブルを無用に長期化させることもなくなるのだ。

山口
人事部では店長からの問い合わせの内容に応じて、弁護士や社労士、また所轄の官公署に相談したり、対応方針について経営者の承認を得たりする作業が発生しますが、店長にある程度の法令知識があれば、人事部側も事実確認やその後の対応がスムーズです。

<当サイト利用上の注意>
当サイトは主に小売業に従事する職場リーダーのために、店舗運営に必要な人事マネジメントのポイントを平易な文体でできる限りシンプルに解説するものです。よって人事労務の担当者が実務を行う場合には、事例に応じて所轄の労働基準監督署、公共職業安定所、日本年金事務所等に相談されることをお勧めします。

  • この記事を書いた人

山口光博

コンビニの店長やスーパーの販売課長を経て、31歳の時に管理畑に転職する。以後、20年以上にわたってあらゆる人事マネジメントの実務に携わる。上場準備企業の人事部長として人事制度改革を担当した後に独立、現在に至る。

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