一般健康診断とは?
公的健康診断の種類
公的健康診断には、労働安全衛生法によって事業主に実施が義務付けられているものと、事業主に実施義務はないが、労働者や被保険者の健康増進のために、公的保険制度から費用を助成するものがある。本記事では、前者のうち小売業に関係の深いものを解説する。
小売業における健康診断
労働安全衛生法により、事業主に実施が義務付けられている健康診断は、一般健康診断、特殊健康診断、歯科医師による健康診断だが、主に食料品や日用品を扱う小売業において、特殊健康診断や歯科医師による健康診断を実施しなければならないケースは稀である。
一般健康診断の概要
一般健康診断の検査項目
一般健康診断の検査は、次の11項目となっており、通称「法定11項目」と呼ばれている。一般健康診断は、実施目的やタイミングによって、後述の5つに分かれるが、いくつかの健康診断は、法定11項目をベースに、一部を省略したり、別の検査が追加されたりする。
- 既往歴及び業務歴の調査
- 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
- 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
- 胸部エックス線検査及び喀痰検査
- 血圧の測定
- 貧血検査
- 肝機能検査
- 血中脂質検査
- 血糖検査
- 尿検査
- 心電図検査
一般健康診断の対象者
一般健康診断の対象者は、原則として1年以上継続雇用される見込みがあり、週の所定労働時間が正規雇用者の3/4以上の労働者とされている。ただし厚生労働省のガイドラインでは、週の所定労働時間が正規雇用者の1/2以上あれば、受診が望ましいとしている。
一般健康診断の実施時期
■雇入時の健康診断
事業主は、労働者を雇入れした時は、遅滞なく健康診断を実施しなければならない。新たに雇い入れた労働者が、採用日の直近3ヶ月以内に受診した健康診断結果表を提出する場合は本検査を省略できる。なお本検査を、採用選考として行うことは認められない。
■定期健康診断
事業主は、1年に1回以上の頻度で、健康診断を実施しなければならない。なお労働安全衛生法が事業主に義務付けているのは、法定11項目のみで、協会けんぽが費用の一部を助成する生活習慣病予防健診の併用は、あくまでも事業主の任意となっている。
■特定業務従事者の健康診断
特定業務とは、健康上有害とされる業務で、小売業の場合は、深夜業務と重量物取り扱い業務が該当する事業者が多いと思われる。特定業務従事者の健康診断は、定期健康診断と同じだが、こちらは6ヶ月ごとに1回以上実施しなければならない。
深夜業務とは、労働基準法に定める22時〜翌朝5時までの業務をいう。なお6ヶ月を平均して月4回以上の深夜業務を行っている労働者が体調不安を感じた時は、次回の健康診断実施前であっても、(事業主の費用負担で)自主的に健康診断を受診することができる。
何キロから重量物取扱い業務に該当するのか?ということについて、労働安全衛生法令には明確に規定されていない。受診の要否は、労働基準局長通達、年少者労働基準規則、助成労働基準規則で判断すれば問題ないと思われる。
■海外派遣労働者の健康診断
バイヤー職など、労働者を海外に6ヶ月以上にわたって駐在させる場合、事業主は労働者の派遣前と帰国後に、一般健康診断の11項目にそれぞれ次の4項目を加えた健康診断を実施しなければならない。
■給食業務従事者の健康診断
食中毒の多くが細菌性であり、食材を直接殺菌したり滅菌したりできないため、食中毒菌の保菌者が、食材に触れることによって感染拡大するリスクが高い。そこで労働安全衛生法では、給食業務従事者に対して、雇入れ時と配置した時の検便検査を義務付けている。
ただし給食業務とは、健康増進法の学校や病院などの給食施設における調理をいい、スーパーの生鮮部門や惣菜部門の商品化作業は該当しない。なおこれらの作業スタッフについては、食品衛生法にもとづき、食中毒予防のための自主的な健康診断の実施が望ましい。
一般健康診断のまとめ
健康診断実施後の措置
事業主は、健康診断結果票のうち、1通をすみやかに労働者に渡し、もう1通を5年間保存しなければならない。また従業員50人以上の事業場は、定期健康診断および特定業務従事者の健康診断の実施報告書を、所轄の労働基準監督署に提出する義務もある。
おすすめの書籍
事業主や使用者は、健康診断によって異常所見者を発見した場合は、すみやかに産業医の意見を聴き、衛生委員会に報告した上で、異常所見者の時短勤務や配置転換などの措置を講じる義務がある。そこで健康診断と検査に対する予備知識を本書で予習しておきたい。
[PR]当社は人事業界の家庭医です。調子が悪いな…と感じたらお気軽にご相談ください。