この記事のポイント
変形労働時間制とはどのような制度か?
制度の目的
労働基準法では原則として法定労働時間を超える労働を禁止しているが、変形労働時間制を導入し、閑散日の所定労働時間を短縮することで、1週間の平均労働時間を法定労働時間内に収めるのであれば、繁忙日に法定労働時間を超えて従業員を労働させることができる。
制度の概要
変形労働時間制には、一年単位、一ヶ月単位、一週間単位(業種と事業規模の制限あり)の3種類があり、一年変形は季節によって業務の繁閑が著しい業種、一ヶ月変形は、月の中で月初や月末といった特定の時期に業務の繁閑が集中するような業種に適している。
制度のメリット
変形労働時間制を導入することで、使用者は総額人件費(割増賃金)を抑制しつつ、繁忙期に所定労働時間を増やし、閑散期には減らすことができるため、弾力的に投入人時のコントロールを行うことが可能となり、人時生産性を向上させることができる。
一年単位の変形労働時間制
制度の仕組み
季節によって繁閑の差が著しい業種に適した変形労働時間制であり、1ヶ月超~1年以内の対象期間において、週の平均労働時間が40時間以内に収まっているのであれば、特定期間(繁忙期)中は、法定労働時間を超えて、従業員を労働させることができる。
導入する要件
- 労使協定を締結して所轄の労働基準監督署に届出すること
- 特定期間であっても労働時間の上限を1日10時間以内、1週間52時間以内とすること
- 対象期間を3ヶ月以上とする場合には労働日数を年間280日以内とすること
- 週48時間を超えて就業させる週を連続3回以内とすること
- 週48時間を超えて就業させる週を3ヶ月間に3回以内とすること
導入時の注意
- 対象期間のうち、最初の月の労働日および労働日ごとの労働時間を決定しておくこと
- 2ヶ月目以降の各月における労働日数と1ヶ月の総労働時間を決定しておくこと
- 2ヶ月目以降の各月の労働日および労働日ごとの労働時間を前月初日までに決定すること
一ヶ月単位の変形労働時間制
制度の仕組み
毎月、特定の週や日に繁閑が集中するような業種に適した変形労働時間制であり、1ヶ月以内の変形期間において、週の平均労働時間が40時間以内に収まっているのであれば、特定期間(繁忙期)中は、法定労働時間を超えて、従業員を労働させることができる。
導入する要件
- 労使協定を締結して所轄の労働基準監督署に届出するか、就業規則に規定すること
導入時の注意
- 各日および各週の労働時間を労使協定または就業規則に明記すること
一週間単位の非定型的変形労働時間制
制度の仕組み
小規模な独立系スーパーマーケットやスープカリー専門店など、突発的な繁閑に対して柔軟に人員をやりくりできるような余裕の無い事業者については、週の平均労働時間が40時間以内に収まっているのであれば、特定の日に10時間まで従業員を労働させることができる。
導入する要件
- 小売業、旅館業、料理店、飲食店のうち、常時使用する従業員が30人未満の事業者
- 労使協定を締結して所轄の労働基準監督署に届出すること
導入時の注意
- 週の各日の労働時間を遅くとも前々週の末日までに、従業員に対して書面で通知すること
フレックスタイム制
制度の仕組み
フレックスタイム制とは、日々の始業・終業時刻を従業員の裁量に任せる制度であり、清算期間を1ヶ月以内とした場合は週の平均労働時間が40時間以内、1ヶ月超とした場合は同様に週50時間以内であれば、特定の日に法定労働時間を超えて労働することができる。
導入する要件
- 清算期間が1ヶ月超の場合は労使協定を締結して所轄の労働基準監督署に届出すること
- 清算期間中の総労働時間、標準的な1日の労働時間を労使協定に明記すること
導入時の注意
- 清算期間を1ヶ月超とした場合でも、中途採用者の平均労働時間は週40時間が上限となる
未成年者や妊産婦の扱い
未成年者
学生アルバイトなどの未成年者については、前述の変形労働時間制ごとに定められた労働時間の上限が、次のとおり厳格化されている。
- 一年単位の変形労働時間制~1日8時間、1週48時間を上限とする
- 一ヶ月単位の変形労働時間制~1日8時間、1週48時間を上限とする
- 一週間単位の非定型的変形労働時間制~週の労働日のいずれか1日を4時間以下にすること
妊産婦
妊娠中の女性および産後1年を経過しない女性を妊産婦といい、妊産婦が使用者に請求した場合には、一年単位の変形労働時間制、一ヶ月単位の変形労働時間制、一週間単位の非定型的変形労働時間制のいずれにおいても、法定労働時間を超えて労働させることはできない。
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