当サイトはアドセンス広告およびアフィリエイト広告を利用しています。

99_その他雑記

名誉職なんかいらない

2024年2月8日

名誉職なんかいらないアイキャッチ画像

大雑把に要約すると「日本の管理職は社内で小器用に立ち回ることばかり長けていて、管理職というよりお飾り的な名誉職と成り下がっている。管理職とは本来はジョブであるはずだが、名誉として恩賞的に与える企業が多いため、日本の生産性が低いのだ!」といった内容。これには私も激しく同感。「よくぞ言ってくれた。」と、とても痛快な気持ちになった。

それは私が過去に勤めていた職場でも、生え抜きを年功のアガリポストとして、もしくは社外から連れてきた人物をお飾り的に幹部に据える人事がまことしやかに行われていたからである。そしてお飾り的に据えられた管理職の多くはマネジメント能力が高くない。酷い時にはプレゼンスを発揮しようとでも思ったのか、こちらの仕事を引っ掻き回されたこともある。

それにしてもDXの時代になぜこんな茶番が行われているのか?というと、日本の多くの企業では未だにメンバーシップ型雇用と適材適所人事が主流だからだ。メンバーシップ雇用とは能力やスキルよりも人物重視(協調性や謙虚さ=扱いやすい人)の採用を行うこと、そして適材適所人事は最初に人物ありきで、後から職務や役職を割り付けてゆく旧来の人事慣行である。

これらは後述のジョブ型雇用や適所適材人事の対極にあるものだ。オーナー経営者であれば、自分の会社の人事をどうしようが、他人にとやかく言われる筋合いはないと考えるだろう。しかしメンバーシップ型雇用と適材適所人事は経営者の好き嫌いが強く反映されるため、不透明で不公平な人事になりやすく、やがて企業がガバナンスを失ってゆく要因となる。

とはいえ未だに前時代的な雇用慣行や商慣行が色濃く残る日本の職場において、相変わらず年功者への恩賞として、またメインバンクや関係官庁に忖度して、これらのOBOGに管理職のポジションをあてがう企業は多い。当の本人は定年まで大過なく勤め上げれば良いので、アガリのフェーズでわざわざリスクテイクしてまで管理職の役割を果たそうなどとは思わない。

またメンバーシップ型雇用と適材適所人事の職場では、職務分掌と権限が属人化してしまっていることが珍しくない。特にお飾り管理職がいる場合は、ひとつの部署に部長が2人いたり、部門長なのに「俺は知らん」と公然と責任逃れしてもお咎めなし。こういう管理職は組織運営の原理原則すら知らないため、職場に悪しき前例を作り、組織活動の生産性を下げてしまう。

<組織運営の5原則>
①専門化の原則
 自部署の仕事は自部署でやれ。他部署がすべき仕事に手を出すな。
②権限責任一致の原則
 権限を行使する者は責任も取れ。責任を取らない者に権限を与えるな。
③統制範囲の原則
 一人の管理職が適切にマネジメントできる部下の人数には限界がある。
④命令統一性の原則
 指示命令は直属上司から受けよ。他部署のスタッフに指示命令するな。
⑤権限委譲の原則
 管理職はルーチンを部下に任せて、自身はイレギュラー対応に努めよ。

お飾り管理職による弊害を防ぐには、旧来の人事制度をジョブ型雇用と適所適材人事に切り替える必要がある。ジョブ型雇用とはスペシャリスト採用のことで、適所適材人事とは、最初に職務があってそこに職務要件を満たす人材を配置してゆくという欧米企業型の人事である。そしてこのような専門家集団においては、管理職にも高度なマネジメントスキルが要求される。

たとえば日本企業では、ヒラ→係長→課長→部長という職制が一般的だが、係長(トレーナー)は部下に対してルーチンを仕込み、課長(マネジャー)は係長のチームが滞り無くルーチンを遂行できるようにイレギュラーを解消し、部長(リーダー)は課長たちに部のビジョンを示し、動機づけを行うのが主な仕事であり、役職ごとに求められる役割と責任が異なる。

ところでメンバーシップ型雇用と適材適所人事は悪か?というと、決してそうではない。少なくとも課長職までは実務経験の延長線上にあるポストだが、部長職以上は自分の未経験の課も含めて全社的視点で事業を推進してゆかねばならないため、実務スキルよりも経営センスやトップとの相性が重要だからだ(ちなみに有能な人は成功体験を違う部門でも再現できるそう)。

ただし社員数の構成比は課長職以下が大多数を占めるため、人事制度の基本はジョブ型雇用と適所適材人事である。今後はDXによって組織階層のフラット化が進み、事業のライフサイクルが短命化することで人材の流動化も活発になるはず。次席で燻っている人も、ある日突然、道が拓けることもある。今は大変かもしれないが自己研鑽に励み、来たるべき日に備えるのだ。

日本の社会システムは役人天国と議員貴族ありきで、これら特権階級のおこぼれにあずかりたい企業や団体が、天下りや政治献金を提供することで、商売上の便宜を図ってもらう構造になっているという意見は多い。そして少子高齢化の進行は止まらず、どんどん税収が先細り、為政者達の茶番劇の裏側では、国民生活は年々厳しさの度合いを増している。この問題は、決して時が解決してくれるような類のものではないが、さぁあなたならどうする?


  • この記事を書いた人

山口光博

RWC合同会社/社労士事務所代表。社会保険労務士、日商販売士1級、建設業経理士1級ほか。コンビニ店長やスーパーの販売課長を経て、三十路で人事畑に転身。事業再生法人や上場準備企業で人事制度の再建に携わった後に起業。

-99_その他雑記