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社労士合格を目指す方へ ②本当に社労士の資格が必要なの?

2024年10月29日

社労士合格を目指す方へ

社労士資格をどう活かしてゆくか?

資格取得の目的を明確にしよう

社労士に限らず、難関資格は取得までに費やす時間と労力が大きいため、合格を勝ち取るまで、どうやってモチベーションを維持するのか?ということを考えておかないと、せっかく高価な教材を購入しても、途中で挫折してしまう可能性が高い。

モチベーションを維持できるか否かは、資格取得後のビジョンを、どれだけ具体的にイメージできるかによる。社労士バッジを胸につけ、人事コンサルタントとして忙しく活躍する自分の姿を鮮明に脳裏に想い浮かべることができれば、間違いなく初志貫徹できるはず。

合格後のビジョンが具体的に思い浮かばないという人は、もしかしたら資格のチョイスが間違っているかもしれない。たとえば資格には弁護士や社労士などのホワイトカラー系資格と、医師や美容師などの保健衛生系資格、そして建築士や施工管理技士などの技能系資格がある。

さらに業務独占資格や名称独占資格もあれば、国家資格、公的資格、民間資格など、実施機関による分類もある。こういった視点から、自身のキャリアアップのために、どのような資格が最も有用かつ現実的なのか、よく検討してから、試験勉強に着手した方がよい。

社労士資格をすぐに活用できる職種

社労士は、労働法令および社会保険制度のスペシャリストである。社労士試験の出題科目の大部分が手続法であり、行政手引など細部まで学習する必要があるので、一般企業の労務担当者であれば、受験勉強で習得した知識をそのまま実務に活かすことができる。

経営企画部門において、人事戦略を担当する場合も、社労士資格はとても役に立つ。そもそも人事戦略は、労務コンプライアンスあってのものである。そして人事制度の設計においても、法令や公的制度をベースに、自社独自の仕組みを積み上げてゆくのがセオリーである。

人事コンサルタントを目指す場合は社労士資格はマストである。人事コンサルティング業界は、様々な分野から雑多な人が流入しやすく、コンサルタントの質が玉石混交となりがちである。筆者が人事部にいた時は、法令すら知らない人事コンサルもどきをたくさん見てきた。

隣接士業と迷っている方へ

筆者が販売職から管理畑に転身したのは30歳の時だったが、それから20数年を経て、ようやく社労士試験に挑戦することになった。長いブランクの理由は、経理をやったり、経営陣の手伝いをしたりとフラフラして、いい歳をしながらキャリアの方向性が定まっていなかったから。

人事をコアスキルとしつつ、中小企業診断士を取得して企業参謀として働いてみたい、と考えた時期もあった。中小企業診断士にも人事コンサルを名乗る人がいるし…などと甘い考えだったが、今振り返えると、人事のプロを名乗りたいのであれば、やはり社労士一択に限る。

さて、以後はご参考までに、筆者がキャリアアップを志向する過程で、社労士とどちらを取得しようか迷った資格のうち、合格難易度の近い、税理士、中小企業診断士、行政書士について紹介したい。なお筆者は、中小企業診断士と行政書士の2資格を、実際に受験している。

税理士

税理士は税務と会計のスペシャリストであり、弁護士や社労士などと同様に、業務上の必要に応じて他人の戸籍謄本や住民票を取得する権限をもつ”8士業”のひとつである。税は、国家運営の根幹を成す重要な制度であり、税務はAIに代替されづらい仕事のひとつと言われている。

税理士資格を得るには、税法3科目と会計2科目の計5科目に合格する必要がある。受験資格は不問、永久科目合格制なので、毎年1科目ずつ取得してゆけば、5年で税理士になれる…などといった噂もあるが、実際には各科目の難易度はハンパなく、合格まで10年かける覚悟が必要。

なお筆者は税務分野よりもファイナンスやアカウンティングに興味があったため、結局、税理士試験は受けなかった。むしろ建設業経理士1級とFP技能士2級(中小事業主資産相談業務・個人資産相談業務)を取得した時点で、財務会計分野の知識はこれで充分と判断した。

中小企業診断士

中小企業診断士は、中小企業経営に関する知識を広く学べる資格である。もともとは公的融資の審査において企業診断を行う専門家を養成するための資格で、経営管理に有用な知識が得られるが、特定の専門分野や独占業務を持たないため、開業者が少ない資格としても知られる。

筆者が中小企業診断士から社会保険労務士にスイッチしたのも、開業してから具体的に何を自分のウリにすべきか全くイメージできなかったため。むしろ企業内にいて、各分野の専門家達をまとめるコーディネーターとして、経営者を支えるのがベストな働き方かもしれない。

試験は一次試験の7科目がマークシート方式、二次試験は4科目の論述式、三次試験は口述試験と、非常に長丁場となる。ただし3年限定の科目合格制を採っており、複数年かけてじっくり挑戦できる。ちなみに筆者はノー勉受験で企業経営理論と財務会計の2科目に合格している。

行政書士

行政書士は、行政手続きおよびこれにかかる書類作成の専門家である。弁護士を頂点とする法曹資格3兄弟の末弟であり、弁護士や司法書士の独占業務以外について、業務を行うことができる。民法や会社法、基礎法学などを学べるため、企業の法務部門には最適な資格だと思う。

税理士同様に受験資格は不問。令和5年の合格率は13.9%なので、社労士より取得しやすいが、筆者は一般教養で心が折れてしまった。当時は自分の専門性を高めたいと思っていたため、30歳過ぎて国語・算数・理科・社会など勉強してられるか…といった気持ちになったのだ。

なお、社労士の受験資格には専門学校卒以上の学歴要件があり、これを満たしていない場合(高卒者など)は、行政書士試験に合格することで、社労士の受験資格を得られる。また高卒者であっても行政書士試験に合格すれば、大卒者並の一般教養があることを証明できる。

ダブルライセンスでオンリーワンを目指す

先ほど、人事コンサルにとって社労士資格は必須だと述べたが、社労士=人事コンサルではない。その理由は、社労士は労働法令と社会保険の専門家だが、人事マネジメントはマーケティングや財務なども加味した上で、経営全体の視点から考えるべきものだからだ。

このように、一般企業の労務担当者でない限り、社労士資格のみで実務スキルを深化させたり、拡張させたりすることは難しい。そこで社労士資格を主軸として、相互補完的に活用できそうな資格などを、従来のダブル士業とは違った切り口から、いくつか提案してみたい。

経営系資格

キーワードは労働集約型産業における労働生産性の改善。労働集約型産業の代表的なものは、小売業、医療業、建設業、ホテル業など。そこで、日商販売士、看護管理者、施工管理技士、ホテル経営学修士(MBA)などの有資格者が社労士資格を取得することで、特定の業界に特化した人事のプロフェッショナルとして、局地戦において強烈なプレゼンスを発揮できる。

労働安全系資格

キーワードは労働安全衛生と労災補償。相互補完性のある推奨資格は、安全管理者、衛生管理者、労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタントなど。もし産業医が社労士資格を取得したならば、この分野ではもはや敵なしとなるだろう。労災保険制度は、健康保険法や公的年金各種法令とも密接に連携しているため、社労士受験の知識を満遍なく活用できる。

金融系資格

キーワードは公的年金制度と老後の生活資金の確保。少子高齢化の急速な進行によって、日本の年金財政は年々、逼迫の度合いを増している。年金財政の詳細を知らなくとも、老後の生活が不安だと感じている人は多い。年金分野を苦手とする社労士は少なくないが、最近は、FP技能士や年金アドバイザーを取得し、年金相談に特化した社労士を目指す人が増えている。

IT系資格

キーワードはHRテックの導入支援。就労形態が多様化した今の時代は、勤怠管理システム、タレントマネジメントシステム、人事評価システムなど、HRテックを抜きにして、適切な人事マネジメントを行ってゆくことは難しい。一方でこれらのシステム導入において、労務管理に精通したSEが圧倒的に少ないので、IT系ライセンサーにとって社労士は狙い目かもしれない。

  • この記事を書いた人

山口光博

コンビニやスーパーの販売職を経て三十路を機に人事業界に転身。20年以上にわたり人事部門で勤務先の人事制度改革に携わった後に起業。社会保険労務士試験合格。日商販売士1級、建設業経理士1級、FP技能士2級など多数取得。

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