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002(制度概要)_労働保険

労働保険料の保険料率および保険料の算定方法をやさしく解説する

月々の徴収と納付が必要な社会保険料に比べ、労働保険料の事務はシンプルな印象を持つ方は少なくないと思われます。しかし実務に慣れてくると、意外と労働保険料も複雑であることがわかります。そこで転ばぬ先の杖よろしく本記事では労働保険料の基礎を解説します。

労働保険料の構成

労災保険料の料率

労災保険料は、保険年度(4月〜翌3月)の間に事業主が支払った賃金総額に、業種別の労災保険料率を乗じて算出します。労災保険は、労働基準法上の事業主の災害補償責任を労災保険が代行する制度であるため、保険料は全額を事業主が負担します。

歯科クリニックにおける労災保険料率は、1,000分の2.5(令和6年度時点の「その他の事業」)です。参考として、他業種の労災保険料率は以下の通りですが、労災保険料率については令和6年度から据え置きのままとなっています。

  • 保険料率の高い業種
    • 金属鉱業、非金属鉱業又は石炭鉱業(1,000分の88)
    • 林業(1,000分の52)
    • 船舶所有者の事業(1,000分の42)
  • 保険料率の低い業種
    • 通信業、放送業、銀行・保険業、不動産業、医療業(歯科クリニック)等(いずれも1,000分の2.5)

雇用保険料の料率

雇用保険料も、労災保険料と同じように支払った賃金総額に雇用保険料率を乗じて算出しますが、労災保険に比べて業種区分は「一般の事業」「農林水産・清酒製造の事業」「建設の事業」の3つのみととても大まかな括りとなっています。

歯科クリニックが含まれる「一般の事業」の料率は、令和8年度において1,000分の13.5(令和7年度は1,000分の14.5)です。建設の事業は1,000分の16.5(令和7年度は1,000分の17.5)と高めですが、理由は日雇い労働者や季節労働者が多く、保険事故(失業)も多いためです。

雇用保険料は以下の要素で構成されています。

  1. 失業等給付・育児休業給付の保険料(労使双方で負担)
  2. 雇用保険二事業の保険料(全額事業主負担)
    ※雇用保険二事業=雇用安定事業および能力開発事業(例:雇用関係助成金事業など)。

雇用保険二事業部分を除く「失業等給付」と「育児休業給付」に係る保険料についてのみ、労使で所定の割合(一般の事業の場合は折半)で分担して負担します

労働保険料の改定

労災保険料率の改定

労災保険料率は、将来にわたって財政の均衡を保つことができるよう、過去3年間の業務災害・通勤災害の発生率などを考慮して原則として3年ごとに改定されます。また、一定規模以上の事業所には「メリット制」が適用されます。

メリット制は医療機関(100人以上の労働者を使用する医療機関あるいは20人以上100人未満の労働者を使用する医療機関のうち災害度係数が0.4以上)も対象です。直近3年間の労災件数の多寡に応じ、翌々年の4月から労災保険料率が最大±40%の範囲で調整されます。

雇用保険料率の改定

雇用保険料率は、毎年度の雇用保険事業の財政状況(積立金残高など)に応じ、厚生労働大臣が労働政策審議会の意見を聴いた上で、法で定められた範囲内で引き上げ・引き下げを行う「弾力的変更」が認められています。この改定は毎年4月に行われることが一般的です。

賃金総額の算定方法

賃金総額に含まれるもの

労働保険徴収法(労働保険料の算定や徴収を定めた法令)が規定する「賃金」とは、労働の対償として事業主が労働者に支払う全てのものを指します。

  • 含まれるもの:基本給、残業手当、家族手当、住宅手当、通勤手当、役職手当、年4回以上の賞与、有給休暇日の給与、休業手当など。
  • 含まれないもの:実費弁償・恩恵的なもの、例えば出張旅費、宿泊費、解雇予告手当、労働の対償ではない結婚祝金・見舞金などは賃金総額に含まれません。

間違いやすいケース

  • 賞与など:「3ヵ月を超える期間ごとに受ける賃金」は保険給付(休業補償や失業手当)の算定から除外しますが、労働保険料の算定においては賃金総額に含めます(賞与から徴収した労働保険料は、労災保険の特別支給金の原資となります)。
  • 遡及精算:過去に遡及して昇給が行なわれ、その時期が労働保険年度(4月〜翌3月)をまたぐ場合は、各年度の賃金総額に振り分けて算入します。つまり支給ベースではなく発生ベースでそれぞれの賃金総額に計上するということです。

社会保険料との違い

保険料の徴収対象

  • 労働保険:原則として「労働基準法上の労働者」が対象です。法人の役員(理事・取締役等)は、労働者的性格が極めて強い場合(使用人兼務役員等)を除き、原則として労働保険の対象外(賃金総額から除外)となります。
  • 社会保険:法人の役員(理事等)であっても、法人から労務の対償として報酬を受けていれば被保険者となります。社会保険料の算定ベースを「賃金」と呼ばず「報酬」としているのは、役員も被保険者となるからです。

保険料の算定方法

  • 労働保険:事業所単位で算定します。1年間に全労働者に支払った「賃金総額」に保険料率を乗じて、1年分を一括して納付します。なお一定の要件に該当する事業主は、年3回に分割して納付することができます(「延納」といいます)。
  • 社会保険:被保険者個人単位で算定します。個人の月々の報酬額にもとづく「標準報酬月額」や「標準賞与額」に保険料率を乗じて、毎月納付します。被保険者ごとに保険料を算定しますが、保険料の納付義務を負うのは事業主です。

特別加入者の労災保険料

労災保険には、労働者ではない事業主等も任意に加入できる「特別加入制度」があり、保険料の計算方法が通常の労働者とは異なります。なお、特別加入制度の対象はあくまでも労災保険のみです。事業主や一人親方は雇用保険には加入できませんのでご注意ください。

中小事業者の特別加入(第一種特別加入者)

歯科クリニックの院長などが加入する場合、通常の「業種別労災保険料率(歯科診療=1000分の2.5)」をそのまま適用して算出します。ただし、中小事業主等は二次健康診断等給付の対象外であるため、その分の費用は保険料率から除外されています。

フリーランスの特別加入(第二種特別加入者)

フリーランスの歯科技工士などが加入する場合、作業の内容に応じた「特別加入保険料率」が適用されます。ちなみにフリーランスの歯科技工士の場合、特別加入保険料率は1000分の3です(令和8年6月時点)。

いずれの特別加入者も、あらかじめ届け出た「給付基礎日額」に365日を乗じた「保険料算定基礎額」に対し、前述の保険料率を乗じて保険料を算出します。また給付基礎日額は、3,500円から25,000円までの16段階の区分から、特別加入者が選択します。

本記事では労働保険(労災保険料・雇用保険料)の構成と保険料にまつわる実務的なトピックを中心に解説しました。保険料の控除や納付の具体的な方法については、それぞれ給与計算と労働保険の年度更新の記事で解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。

本記事の内容は投稿時点の法令にもとづき要点のみを平易な表現で執筆しています。実務においては所轄の官公署にご相談のうえ、貴院の実情に応じて適切にご対応願います。なお弊社でもオンライン人事相談を実施中です。詳しくは弊社ホームページよりご確認ください。


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  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/医療労務コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

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