人事相談FAQでは、実際に運営者(RWC合同会社・RWC社労士事務所)が取り扱った人事相談のうち、頻出の事案あるいは重要と思われる事案を厳選し、医療業界に置き換えてご紹介しています。
依頼者からのご相談

外来歯科クリニックの院長です。先日、夏季賞与を当院スタッフに支給したのですが、事務員のミスで夏季賞与から源泉所得税を控除せずに支給していたことが判明しました。すでに賞与は支給してしまっており、事務員から「控除し忘れた源泉所得税を、翌月の給与で徴収してもよいでしょうか?」と聞かれました。このような対応について問題はありますか?
ご相談への回答

月々の給与や賞与から控除している源泉所得税は概算額です。12月に確定した年税額とこれまで控除した概算額を相殺し、差額を清算するのが年末調整ですので、夏季賞与で控除し忘れた源泉所得税を翌月の給与から控除することは法的には問題ありません。ただし実務においてはいくつか注意すべき点があります。
賞与にかかる源泉所得税の納期限
賞与にかかる源泉所得税の納期限は、賞与を支払った月の翌月10日です。したがって翌月の給与から賞与にかかる源泉所得税を控除する場合、納期限に間に合わないため、いったん貴院が当該納税額を立て替え、所轄の税務署に納付する必要があります。
「源泉所得税の納期の特例」を受けている事業者(給与を支払われる者が10人未満)の納期限は、7月10日と翌年1月20日の年2回となります。
給与計算ソフトの控除項目の選択
翌月の給与から賞与にかかる源泉所得税を控除する際は、給与計算ソフトの「その他控除」欄等に控除額を入力して控除漏れの額を回収し、年末調整を行う際に源泉徴収簿の画面から「その他控除」欄で徴収した額を賞与にかかる源泉徴収税額に手動で振り替えます。
スタッフへの謝罪と同意の取得
法的に問題がないからといって、スタッフに何の説明もなく翌月の給与から賞与にかかる源泉所得税を控除すると、貴院に対するスタッフの不信を生み出しかねません。控除ミスについてきちんと謝罪し、翌月の給与で控除することについて同意を得た上で実施すべきです。
本件のポイント

- 月々の給与や賞与から控除している源泉所得税はあくまでも概算額なので、控除漏れがあっても同じ年度内(1月~12月)に控除できれば税務上の問題は生じない。
- ただし賞与にかかる源泉所得税の納期限は、賞与を支払った月の翌月10日迄なので、控除の時期によってはいったん事業主が立て替えて納付する必要がある(「源泉所得税の納期の特例」の適用事業所を除く)。
- 翌月の給与から夏季賞与にかかる源泉所得税を控除する際は、その他控除欄を用い、年末調整時に源泉徴収簿を手動で訂正する。
- 源泉所得税の控除漏れを従業員に真摯に謝罪し、追徴の方法について従業員の同意を得た上で、翌月の給与から控除する必要がある。
本記事の内容は投稿時点の法令にもとづき要点のみを平易な表現で執筆しています。実務においては所轄の官公署にご相談のうえ、貴院の実情に応じて適切にご対応願います。なお弊社でもオンライン人事相談を実施中です。詳しくは弊社ホームページよりご確認ください。


