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005_労働安全のFAQ

【個人情報】従業員から自身の復職判断にかかる産業医意見書の開示請求があった場合の対応

人事相談FAQでは、実際に運営者(RWC合同会社・RWC社労士事務所)が取り扱った人事相談のうち、頻出の事案あるいは重要と思われる事案を厳選し、医療業界に置き換えてご紹介しています。

依頼者からのご相談

首をかしげる医師

当院(職員数50人以上の歯科・歯科口腔外科病院)に勤務する歯科衛生士が、メンタルヘルスの不調により長期にわたり休職しており、このたび職場復帰の可否を判定するため、当院の選任した産業医による復職面談を実施いたしました。

産業医面談後、当該スタッフから「心療内科の主治医から、今後の治療方針や就労可否の判断材料として産業医の意見書を確認したいと言われたため、意見書の写しを開示・共有してほしい」との申し出がありました。

当院としては、産業医の意見書にはスタッフのプライバシーに関する機微な情報や医学的判断が記載されていることもあり、どのように対応すべきか苦慮しております。ついては次の2点についてご教示いただけますと幸いです。

  1. 当院は当該スタッフに対して当院の産業医の意見書を開示し、共有する法的な義務があるでしょうか?
  2. 当該スタッフではなく、当該スタッフの主治医を経由して、当院の産業医に意見書の共有を依頼することは可能でしょうか。

ご相談への回答

できるビジネスパースン

本人に対する産業医意見書の開示義務

労働者本人から開示請求があった場合、事業者は原則として産業医の意見書を含む健康情報を開示する義務を負っています。労働安全衛生法および厚生労働省の「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」に基づき作成された面接指導結果の記録や、医師の就業判定・意見を含む健康情報は、個人情報保護法における「保有個人データ」に該当します。したがって、本人からの開示請求に対しては、原則として書面交付等の適切な方法により遅滞なく開示する義務があります。

ただし、個人情報保護法第33条第2項に定められているとおり「本人または第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合」(例:病状や評価をありのまま開示することで本人の精神状態が著しく悪化し、自傷他害の恐れが生じるなど)や、医院の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼす恐れがある例外的なケースに該当する場合は、その全部または一部を開示しない判断を行うことが可能です。なお、不開示とする場合であっても、遅滞なくその旨および理由を本人へ通知・説明するよう努めなければなりません。

主治医と産業医の医療連携の可否

職員本人の同意があれば、主治医と産業医が診療情報提供書等を通じて情報共有を行うことは法的に何ら問題なく、むしろ職場復帰支援の現場においては積極的に推奨されます。厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」や各種両立支援指針においても、円滑な職場復帰や就業継続を支援する観点から、主治医と産業医が本人の同意の下で緊密に情報交換を行うよう努めるべきとされています。

行政の実務においても、産業医から主治医へ勤務実態や就業上の配慮事項を提供するための様式や、主治医から就業可能性に関する意見を聴取するための情報提供依頼書などの標準様式が公表されています。主治医と産業医の間で意見書を共有したり、相互に見解を求めることもこれら正規の医療連携プロセスの一環であり、本人の同意書を取得した上で適切に実施することが望まれます。

本件のポイント

気づきを得た白衣の男性
  • 産業医面談の結果記録や就業上の意見書は「保有個人データ」に該当するため、職員本人から開示請求があった場合は原則として開示義務を負う。
  • 本人や第三者の生命・心身の健康等を著しく害する恐れがあるなど、個人情報保護法上の正当な除外要件に該当する場合に限り、例外的に開示を拒否・制限できる。
  • 職員本人の同意があることを前提に、主治医と産業医が診療情報提供書等を用いて情報共有を行うことは可能であり、適正な復職支援として推奨される。
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  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/人事コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

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