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001_労働契約のFAQ

【有休繰越】退職した歯科衛生士をスポット再雇用。退職前に付与された年次有給休暇を繰り越すことはできるのか?

人事相談FAQでは、実際に運営者(RWC合同会社・RWC社労士事務所)が取り扱った人事相談のうち、頻出の事案あるいは重要と思われる事案を厳選し、医療業界に置き換えてご紹介しています。

依頼者からのご相談

疑問な白衣の女性

当院は、歯科医師である私(院長)と歯科衛生士3名、歯科技工士1名、事務員1名が勤務する小規模な歯科クリニックです。

当院では、過去に出産・育児で退職した元スタッフ(歯科衛生士)に対し、子育ての合間に働ける「登録制スポット雇用制度」を設けており、レセプトや学会などスタッフが足りなくなる時期などに事前相談のうえ勤務をお願いしています。

ただし多くの方は長期契約が難しいため、基本的には1ヶ月間での短期雇用契約ですが、スタッフの退職により4月〜10月末までの7ヶ月間、連続して勤務をお願いしたために、10月1日付で10日間の年次有給休暇を付与することになった方がいます。

その後、契約満了に伴い10月末で一旦退職となったのですが、今度は1ヶ月置いた12月から再度1ヶ月のスポット雇用をお願いすることになりました。

この場合、10月1日に付与した年次有給休暇(未消化分)は、12月以降の再雇用時にも引き継がれるのでしょうか? それともいったん退職したことでリセットされてしまうのでしょうか?

ご相談への回答

できるビジネスパースン

結論から申し上げますと、10月末の労働契約終了(退職)に伴い、旧契約中に付与された未消化の年次有給休暇は法的に消滅します。したがって、11月の1ヶ月間に空白期間(ブランク)を挟んで12月に再雇用する場合、過去の有休残日数を引き継がせる法的義務はありません。

ただし、登録制スポット雇用の運用実態によっては「実質的に雇用関係が継続している」とみなされる可能性もあるため、以下の点に注意しておく必要があります。

1ヶ月単位の短期更新でも「6ヶ月継続」で有休は発生する

労働基準法第39条は「6ヶ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤すれば年次有給休暇を付与しなければならない」と定めていますが、6ヶ月間の継続勤務は無期雇用契約であるか、あるいは1ヶ月更新の有期雇用契約であるかを問いません。

したがって4月から10月末まで1ヶ月単位の契約更新を重ねて6ヶ月を超えたため、10月1日付で10日の有休を付与した貴院の対応は、コンプライアンス的に適切です。

「退職」による労働契約終了と有休の失効ルール

一方で年次有給休暇は「労働契約が存続していること」を前提として行使できる権利です。

10月末をもって雇用契約が満了し退職した場合、その時点で未消化の有休は失効します。11月に雇用関係がない期間(ブランク)が生じているため、12月に新たな雇用契約を結んだとしても、法的に旧契約の有休を引き継ぐ義務はありません。

空白期間(1ヶ月)が「実質的な断絶」とみなされないリスク

形式上は退職手続きをとっていても、以下のような実態がある場合は行政解釈(通達)等に基づき、「雇用が途切れず継続している」と判断される場合があります。

  • 常時名簿に登録されており、12月からの再雇用が予定されていた場合
  • 退職後も本人と連絡を取り合い、必要により勤務シフトに入れる状態だった場合
  • 再雇用を想定して、雇用保険や社会保険の資格喪失手続きを行っていなかった場合

実質的に雇用関係が継続しているとみなされた場合、前契約で付与された年次有給休暇は有効であると判定されたり、次回の有休付与時に前契約時の勤続年数が通算されたりする可能性があるため注意が必要です。

なお定年退職後に空白期間を置かず再雇用された場合、定年前に付与された年次有給休暇の権利(残日数および次回更新時の勤続年数)はリセットされず、定年再雇用後にそのまま引き継がれます。

本件のポイント

気づきを得た白衣の女性
  • 無期雇用契約は年次有給休暇の付与要件ではない。1ヶ月間の有期契約でも、更新を重ねて6ヶ月間継続勤務すれば年次有給休暇が付与される。
  • 契約満了(退職)により労働契約が一度終了した場合、未消化の有給休暇は消滅し、再雇用の際に前回付与した年次有給休暇を引き継ぐ法的義務はない。
  • 契約終了後も雇用関係が継続しているとみなされる場合は、年次有給休暇は消滅しないため、所轄の労働基準監督署へ事前確認することが望ましい。
  • 優秀な歯科衛生士を確保するために、スポット雇用制度のルールを整備しつつ、自院独自の「年次有給休暇の繰越制度」等の検討も有効である。
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  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/人事コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

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